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異世界TAXI  作者: temri
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第6話 ベルムという男

話は、ベルムが吹っ飛ばされる少し前に戻る。

ここは火竜領のジュラの大森林。


「馬鹿野郎!何のためにドラゴンの力や魔法が使えない地球で依頼したと思ってる!ふざけるな!」

見た目20代後半、やせ形で銀髪の男は、電話の相手に怒鳴り声をあげていた。

その瞳は、怒りで真っ赤に燃えている。

「お前ら、後で八つ裂きにしてやるからな!」

そう言うと男は電話を切った。

そう、この男はベルム。

地球からの暗殺失敗の連絡を受け、誰もいない森の中で怒鳴り声をあげていた。

「畜生!クソ親父め!」


ベルム・ジーク・リンドヴルム。

ドラゴニア王国4大貴族の1つであるリンドヴルム公爵家に長男として生まれる。

幼少期は、品行方正で誰からも慕われ、時期当主として周囲からも期待されていた。

しかし次男のフィリップが生まれるとその評価は一変する。

全ての面において、フィリップが優れており、周囲の期待がフィリップに集まり始めると次第に、ベルムの性格は歪んでいった。

そんな中、青年となったベルムに事件が起きた。

マルクスとメイドの間にできた腹違いの弟ユリウスを手にかけたとして、勘当されてしまう。

しかしそれは誤解であった。

その日、リンドヴルム城ではマルクスが率いる貴族派や国王派の重臣が招かれ、パーティーが開かれていた。

優秀と噂されるフィリップに出席者の注目が集まる中、面白くないベルムはパーティーを抜けようと吹き抜けの2階の通路を歩いていた。

すると1階に続く階段の前で遊んでいたユリウスが、次の瞬間バランスを崩し階段から落ちそうになっていた。

ベルムは、とっさに駆け寄りユリウスの腕をつかもうとするが間に合わず、ユリウスは階段から転げ落ち、ピクリとも動かない。

そして誰かがあげた悲鳴が会場に響くと、出席者の視線が階段の下に倒れ込むユリウスと、階段の上からそれを見ていたベルムに注がれる。

パーティー会場が騒然とする中、国王派の1人が声を上げる。

「私は見たぞ!ベルム殿がユリウス殿を階段から突き落としたんだ!」

根も葉もない、そんな言葉を皮切りにそれに便乗するように次から次へと声が上がった。

ベルムはユリウスが足を滑らせて落ちたと主張するが、普段から粗暴な態度で知られるベルムをかばう者はおらず、弟を手打ちにしたという無実の罪を着せられるのであった…。

その後、事件はマルクスの領地で起きた事と言うこともあり、処分はマルクスに一任され、万が一のために家の継承権は残しつつも、家を追い出されるのであった。

家を追い出されたベルムはわずかな資金を元手に洋菓子店を開業し、竜舌蘭を使ったドラゴン焼きという商品がヒットしドラゴニア王国を代表する洋菓子メーカーとなるのだが、自分を見捨てたマルクスへの憎しみは消える事はなかった。

そして、マルクスが後継者にフィリップを指名したと知り、さらにマルクスへの憎しみが膨れ上がった結果、マルクスの暗殺を企むようになるのであった。


しばらくすると携帯電話が鳴り、偵察班からマルクスがドラゴニア王国に入ったという報告がされる。

ベルムは、何かを決心したようにつぶやく。

「こうなったら、今度こそ俺の手であの世に送ってやる。」

そう言うとベルムの身体は光輝き始め、ドラゴンの姿に変身した。

変身が終わり、すぐ横の道路を覗き込むと数百メートル先に1台のタクシーが見えた。

「あれか。」

マルクスが乗ったタクシーを確認すると道路に飛び出し、タクシーめがけて口の中から巨大な火の玉を吐き出した。

一直線に火の玉はタクシーに向かい命中し爆発音が鳴り響く。

が、次の瞬間爆炎の中からタクシーが飛び出してきた。

全くの無傷で、スピードを上げこちらに向かってくる。

さらには後部座席のドアから身を乗り出すマルクスの姿があった。

「くそがぁぁぁぁっ!」

ベルムは、自分の左下をすり抜けようとするタクシーから身を乗り出すマルクスに向かい、巨大な拳を振り下ろした。

と、その瞬間、マルクスの左拳が真っ黒に燃え上がり、ベルムの巨大な拳を殴り返した。


しかし、あれだけの巨体を殴りつけたのにもかかわらず衝撃は一切なく、まるで何もないところを殴るかのごとくマルクスは拳を振り抜いていた。

一瞬にしてベルムの巨体は走行するタクシーの遥か前方に吹っ飛んでいき道路上に落下するのであった。



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