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異世界TAXI  作者: temri
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第20話 後の祭り

その後、品評会の余興として行われたリンドヴルム爆破犯人探しゲームは、参加者全員が正解し幕を閉じていた。

結局、品評会に出品されるお宝はデビヤバ商会のものを除き、全てリンドヴルムが買い取り正解者にプレゼントするらしいが、リンドヴルムの財力を持ってすれば容易い事だった。

また、ライオネルの話によると、リンドヴルムはかねてからデビヤバ商会の悪行について、様々な方面から相談を受けていた為、密かに内偵を行なっていたらしく、ハンツからのダンジョン協会の誘いを受けたのもその一貫だったらしい。

だがなかなかハンツの関わりを示す直接的な証拠が見つからず、リンドヴルムとしても行き詰まっていた中、ちょうどこの爆破テロが発生し利用したとの事だった。

そして、リンドヴルムの思惑通りナメローやレッサの証言に加えゾックが持っていたボイスレコーダーという、ハンツが悪事に関与していた決定的な証拠が上がった事でリンドヴルムは大満足だったらしい。

また、ライオネルやズーシオンにとっても、異世界警察機構とダンジョン省内の膿を出せたのはたなぼただったらしく、またリンドヴルムに借りが出来たと、悔しがっていた。

ちなみに、まさかそこに純とベルムが関わっていたとはリンドヴルムも想像出来なかったらしく、面を食らっていたが余興が始まってからはそれも含めて一番楽しんでいたようだった。

そんな話を余興と品評会の間の小休憩に、純達はライオネル、丸太、ボトムと話していた。

「それにしても会場に着いたら、いきなり丸太さんが現れて協力してくれですもん。あの時はびっくりしましたよ。」

「あの時は時間が無かったのできちんと説明出来ず申し訳あーりませんでした。

でも、純さん達が協力してくれて本当に良かったでーす。」

丸太はお辞儀をすると、純に手を差し出した。

「いえ。事前に会社に許可を取られては断る訳にもいきませんし、何より犯人逮捕に繋がって良かったです。」

「そう言ってくれるならこちらとしても良かったでーす。」

純は丸太と握手をしているとふと頭の中に疑問が浮かんだ。

「でも、何で私たちがあおり運転されていたのを知っていたんですか?」

「ああ、それはな。俺様とリンドヴルムの旦那も第121異世界から地球タクシーでこっちに来たんだ。

そんでたまたま嬢ちゃん達のタクシーがあおられているのを遠くから目撃してたって訳だ。

リンドヴルムの旦那も運転手も嬢ちゃん達を知ってたしな。

その後はリンドヴルムの旦那が裏技使って、嬢ちゃん達のタクシーの行き先を調べたり、関連機関に根回ししたりしながら余興の準備をしてたって感じだな。

まぁリンドヴルムの旦那はただ単に嬢ちゃんとベルム坊に会いたかっただけかもしれねぇがな。」

ライオネルはチラッと丸太を見た。

それには気付かず純は、裏技とはどんなものかと一瞬考えるがすぐにリンドヴルムの事だから何でもありなのだろうという結論に至る。

「なるほど、そうだったんですね。

ちなみにデビヤバ商会の方々や白タイツ男はどうなるんですか?」

純にとってはデビヤバ商会など、どうでも良かったがあおり運転や白タク行為はとても許せるものではなかった。

ライオネルはそんな純の思いを感じたのか、今までのおちゃらけた表情からまじめな表情になる。

「ああ、あいつらは俺様が責任を持って捜査して犯した罪を償わせるから、嬢ちゃんは安心してくれ。」

「わかりました。それじゃあ、そろそろ私たちは失礼しますね。

あっ!マルクスさんにも宜しくお伝え下さい。」

純のその言葉にベルム、ライオネル、ボトムは顔を見合わせ大笑いし、その横では丸太が何故かドヤ顔をしながらちょび髭を整えていた。

「え?な、なんで皆さん笑ってるんですか?私、変な事言いました?」

戸惑う純を見て、ライオネルは、必死に笑いをこらえると純の頭を肉球のついた手のひらでポンポンとする。

「い、いや、すまん、すまん。何でもないから気にするな。

リンドヴルムの旦那には必ず伝えておくよ。なぁ丸太?」

丸太はにこりと笑い、純を見てうなずいた。純が何故笑いが起きたのかわからず戸惑っていると、純の側にボトムが近づいてきた。

「純さん、ベルムさん、今日は本当にありがとうどす!また、そちらの世界に行く事があったら宜しく頼むどす!」

純とボトムが握手をすると、ベルムも手を差し出した。

「はい。またのご乗車お待ちしております!」

ベルムはそう言うとボトムと固い握手を交わした。

そして、そんなベルムを見ていたライオネルは、ベルムの肩に腕を回し小さな声で囁いた。

「そういや、リンドヴルムの旦那がベルム坊のタクシーに乗りたがってたぜ!

今度、のせてやんな!」

ライオネルのその言葉にベルムは照れ臭そうにうなずくと二人も固い握手を交わすのであった。


その後、純達のタクシーはドデカツカ商会を後にして、第121異世界に帰るべく光速道路を走っていた。

「そういえば、結局マルクスさんには会えませんでしたね。一言ご挨拶したかったです。」

純が少し残念そうにしていると、そんな純を見てベルムが笑い出した。

純はベルムが何で笑っているのかわからず、怪訝な顔でベルムを見た。

「ベルムさん、何で笑っているんですか?」

「あはははっ!す、すみません。まさか気付いてなかったなんて思いませんでした。

先輩、親父と何度も話してましたよ。

丸太が親父ですよ。」

「えーっ!?そうだったんですか!?全然気付かなかったです!知ってたなら教えてくださいよー!」

「あはははっ!」

こうして、ベルムの同乗研修から始まった一連の騒動は幕を閉じるのであった。

ちなみに今回のお宝品評会が、実はエッチな本の品評会であった事を純は後日知り、本気で異世界の行く末を心配するのであった。


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