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異世界TAXI  作者: temri
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第18話 ドライブレコーダー

ゾックが光速道路でボトムを爆破した事を知ったハンツ達の頭に嫌な予感がよぎる。

しばらくの沈黙が流れ、ハンツが恐る恐るゾックに尋ねた。

「ゾック、お前が爆破したのは…間違いなくボトムだったんだぎゃ?」

「た、たぶん…。」

ゾックのはっきりしない返答に、思わずナメローが声を上げた。

「たぶんって、てめぇちゃんとボトムを確認してから爆破したんだよな!?」

「確認したというか…第121異世界から光速道路に入る前にボトムが乗ってた地球タクシーと同じ車が、待ち伏せしてた出口から出てきたのが見えたんで、ポチっと…。」

ボトムはその時の事を思い出しながら、リモコンの起爆ボタンを押すようなジェスチャーをしている。

「地球タクシーって、お前。タクシー業界最大手だぎゃ!同じタクシーが何万台も走ってるだぎゃ!」

ハンツの言う通り、地球タクシー株式会社は売り上げ、車両台数ともにタクシー業界No. 1で異世界を股にかけ成長し続ける業界最大手のタクシー会社であり、

車両台数はグループ傘下も含め10万台を誇っていた。

また、純やベルムが運転しているアスタクという車種は現在地球タクシーの主力車種となっており、その車両台数は7万台を超えていた。

「でも、俺達の直後にボトムの乗った地球タクシーも光速道路に入ったはずだす。だから、出口から俺達の次に出てくるのもボトムの乗る地球タクシーしかないはずだす。」

光速道路は同じ入り口から入った車を、進入した時と同じ順番で出口から排出する仕組みになっていた。

「それにボトムの姿が見えねぇだす。

って事はボトムは爆破で死んだって事だすよ!

それで、たまたま、リンドヴルム様も爆破テロにあっただけだすよ。

きっと…。」

ハンツとナメローは会場を見渡してボトムがいない事を確認する。

「確かにボトムは見当たらないだぎゃ。奴はドデカツカ商会の責任者だぎゃ。顔を出さないはずがないだぎゃ。」

「そうですね。そういや、ダンジョン捜査一課の後輩も、先月第121異世界で、表沙汰にできない爆破テロがあったとか言ってたし、ライオネル様やリンドヴルム様クラスなら裏業界から狙われることもあるだろうしな。」

「そうだすよ。どっかのバカがやったに違いないだす。ははは。」

ゾック達は何とか自分達はリンドヴルム達の爆破には関係ないと、心を落ち着けるのであった。

ちなみに、ダンジョン捜査一課の後輩がナメローに話したのはベルムが起こした湾岸線崩落事件の事であり、それをもみ消したのはリンドヴルムであったが、それをゾック達が知る由もなかった。


「それでは、これで最初のシンキングタイムは終了となりまーす!皆さま、犯人の目星はついたでしょうか?

それでは次のヒントに行きたいと思いまーす!

次のヒントとなる特別ゲストの方々、ご入場くださーい!」

再びステージ中央の扉に会場の注目が集まり、スモークの中からボトム、ベルム、純の3人が入って来た。

それと同時にゾック達のテーブルから驚きの声が上がり、会場の視線がゾック達に集まる。

「なっ!?」

ゾック、ハンツ、ナメローは驚きの声をハモらせ思わずその場に立ち上がると、あんぐりと口を開いたまま茫然としていたが、会場内からの視線に気付くと気まずそうに着席した。

そんなゾック達の反応を無視するかのように丸太は純達の紹介を進める。

「まず、こちらは地球タクシー株式会社夢の島営業所所属の一ノ瀬 純様と後輩のベルム・ジーク・リンドヴルム様でーす!」

ベルムの名前に会場がざわめく。

「そして、この方はダンジョン業界の革命児ことドデカツカ商会ダンジョンサービス部 部長のゾック様でーす!

前回放送のプルフェッショナル見ましたよー!」

今度は会場からゾックに歓声が上がった。

「それで、この方々がリンドヴルム様の爆破テロとどんな関係があーるのかと言いますと…。」

丸太がちらっとボトムを見ると、ボトムが一歩前に出た。

「それはおいどんが説明するどす。

実は、おいどんは純さん達のタクシーでこの品評会に向かってたんどすが、途中であおり運転をしてきた白タクがいたんどす。

それがどうも、リンドヴルム様を爆破した犯人と同一犯である可能性が高いという事が、リンドヴルム様と話をする中でわかってきたどす。」

「なるほど、ゾックさん達はその犯人を見たと?」

「それについては、純さん説明をお願いするどす。」

純は一歩前に出て親指と人差し指でつまんだ小さな何かを会場の観客に見えるようにかざした。

「これは私たちのタクシーのドライブレコーダーに装着されていたSDカードです。

この中に私達にあおり運転をしてきた車が写っていますので、特別に会社の許可を得て皆様にお見せ致します。」

タクシーのドライブレコーダーのデータは乗客のプライバシーに配慮し乗務員が勝手に再生する事は禁止されている為、リンドブルムが地球タクシー側と交渉して特別に許可を得ていた。

丸太は純からSDカードを受け取るとステージ横にあったノートPCにセットした。

会場の照明が暗くなる。

「それでは再生しまーす!」


丸太がノートPCを操作するとステージ上のスクリーンに、純達のタクシーから見た映像が映し出された。

『いえ、気にしないで下さい。』

ベルムの声が聞こえると同時に追い越し車線から一台の白いタクシーが純達のタクシーの前に割り込んで来た。

『危ない!』

純達のタクシーと割り込んできたタクシーが衝突しそうになる。

『キキキイイィィィッッ!!!』

純達のタクシーが急ブレーキを踏み何とか衝突を回避するが車体の挙動が一瞬乱れる。

『おっとどす!』

『きゃあ!』

車体の挙動が安定し、前方の割り込みタクシーとの車間が開く。

『申し訳ありません!お客様、お怪我は無いでしょうか!?

あ、ああ。大丈夫どす。何事どすか?』

『失礼しました。突然、前のタクシーがウィンカーも出さずに割り込んできたので急ブレーキをかけました。

申し訳ございません。』

前方のタクシーの後部座席から緑色の三角帽子を被った太った男が純達の方を見ている。

と、そこで丸太が映像を一時停止させた。

「おおっと!?この緑色の三角帽子は、ドワーフ族でしょうかね。

ただ、画像が荒くて顔はわかりませーんね。」

丸太がそういうと会場から残念そうな声が漏れる。

丸太が再び映像を再生すると、前方のタクシーは蛇行運転を繰り返し、今度は急ブレーキをかけてきた。

『キキキィィィッッ!』

『うわっどす!?』

前方のタクシーとの車間が一気に縮まり、純達のタクシーが再度衝突しそうになる。

『ベルムさん!後続車来てないからもっと車間取って!』

『はい!わかりました!』

そうこうしているうちに第15異世界光速道路入口の標識が見えると、前方のタクシーはスピードを上げて光速道路に消えて行き、純達のタクシーもその後を追うように光速道路に入っていく所で丸太は映像を停止した。


「残念ですが顔は映ってなかったでーすね。」

「そうなんです。私達も後部座席の人の顔を何とか見ようとしたんですが、あおり運転の対応に手一杯で見る事が出来なかったんです。ねっ?ベルムさん?」

「はい。なんとなく太った男がニヤニヤしていたような気もするんですが、はっきりと顔までは見えなかったですね。」

純もベルムも実際はゾックの顔をはっきりと見ていたがシラを切り、悔しげな表情を浮かべている。

「なーるほど、あんなあおり運転をされていた状況では仕方のないことでーすよ!

それより、ご無事で本当に何よりでーす!

皆様、あおり運転に屈しなかった純様とベルム様に盛大な拍手を!」

会場から盛大な拍手が巻き起こり純とベルムが恥ずかしそうにしていると、

丸太が話を進める。

「それでは、今回のヒントをまとめますと、まず犯人はリンドヴルム様達を爆破する前にボトム様達のタクシーにあおり運転をしていた。

そして、犯人は緑色の三角帽子を被ったふとったドワーフ族の男である。

ということになりまーす!

それでは、再びシンキングタイムになりまーす!」

会場の照明が明るくなり各テーブルで話し合いが始まる中、

ゾック達のテーブルは誰も声を出さず静まり返っていた。



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