第14話 異世界光速道路地図 最新版
「なるほど、それならショッキング団とも繋がっていてもおかしくなさそうですね。警察などには相談したのでしょうか?」
「もちろんどす。だけどデビヤバサービスは警察や関係省庁の天下り先にもなっていて、いつももみ消してしまうどす。それに今のダンジョン協会の会長もデビヤバサービスの社長なもんで、八方塞がりなんどす。」
どこの世界でも同じような事が起きてるもんなのかと純は切なくなるが、ふとボトムがタクシーに乗って、電話していた事を思い出す。
「お客様、失礼ですが先ほど電話で奴らも手に入れたか?とか仰ってましたが、今回の嫌がらせと関係があったりしませんか?」
「実はとあるダンジョンオーナーのお得意様から、ダンジョンクリア報酬についてかなり難しい注文があったのどすが、今回はクオリティを追求したいという事もあって、ウチ以外の同業者さんにも協力してもらって、それぞれの会社から自慢の一品を持ち寄ってお得意様に選んでもらう事になったんどす。
それでおいどんもなんとか品物を手に入れて、品評会場のある我が社に向かってたどすが、運悪くゾックとかち合ってしまったどす。」
純は、クリア報酬って伝説の武器とかでイケメン勇者が手に入れたりするのだろうか?そうしたら私って間接的にどこかの世界救ってない?とか、妄想が爆発しそうになるがこらえて話を進める。
「なるほど、競争相手がいなくなれば、自分が有利になるから襲ってきた訳ですね。」
「そうどす。ゾックの常套手段どす。間違いなく、この後の光速道路の出口で待ち伏せしてるどす。」
ボトムは頭を抱える。
「ゾックとかいう男はクズですね。」
ベルムはボトムを見てゾックに怒りを向けるが、そんなベルムを見て純は、ついこの間私を待ち伏せして殺そうとした奴のセリフかとツッコミを入れそうになるが、お客さんの手前グッと堪える。
そうして純は思いつく。
「お客様、品評会は何時からでしょうか?」
「17時からどす。」
純は車内の時計をチラッと見るとニヤリと笑う。
「まだお時間ありますよね。それなら待ち伏せを回避出来ますよ。」
「先輩、どういう事ですか?」
「第15光速道路には、最近開通した第130異世界光速道路入口があるんですよ。
だから、第15出口では降りずに第130に入って、第130異世界からさらに第4異世界を経由して第15異世界に入れば、白タクが向かった出口とは違うので、待ち伏せされることもないんですよ。まぁ1時間くらいは余分にかかっちゃいますけど。
17時には間に合いますよ。」
「本当どすか?それならお願いしたいどす!」
「さすが先輩!勉強になります!」
実は、純はベルムに待ち伏せされて殺されそうになってから、あんな思いはしたくないと異世界光速道路地図 最新版という、とてつもなく分厚く人を殴りでもしたら間違いなく殺せるであろう地図を購入し勉強していた。
その結果、ナビの最新地図データをも上回る光速道路知識を手に入れていた。
タクシー乗務員はお客さんに育ててもらうものと言うが、ある意味、純はベルムに勉強させてもらっていた。
「あっ、でも料金がかなりかかっちゃいますけど。本当に大丈夫ですか?」
遠回りはクレームの原因にもなる為、純は念入りに確認し了解を得る。
「全然構わないどす!よろしく頼むどす。」
ボトムは力強くうなづいた。
「かしこまりました。ベルムさん、そろそろ第15出口ありますけど、そこは降りないであと20分位したら第130入口あるので、そっちに行ってください。」
「はい。承知しました。」
こうして純たちはゾックの悪巧みを察知し、改めて目的地を目指すのであった。
ちなみに、第130異世界はドワーフ族から派生した小人族の治める世界であり、第4異世界はエルフ族が治める世界である。