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2話『行き倒れ異世界人と強引少女』

歩き続けて役3日。

だいぶ疲労が溜まって来た頃にそれは現れた。


「・・・でっけぇ」


思わず声が出るほど高い壁。そしてその真ん中にある、これまた高い門。

そして門の前には二人の門番と思われる人物。

やっとついたのだ。人間が住む場所に。

ここまでくる間一人の人間共すれ違わなかったので内心不安だらけだったが、どうやら間違ってなかったようだ。

俺は門番に声をかける。


「なぁちょっと・・・」


そして言ってから気づく。


「(異世界って日本語通じるのか・・・?)」


しかし俺の声に振り向いた男たちは言う。


「見慣れない服装だな。旅人か?」


俺は思わず言葉を失った。

日本語が通じたからではない。


どう聞いても日本語には聞こえない言葉の意味を理解できたからだ。


初めて聞いた言葉をまるで頭の中で翻訳したかのようにはっきりと意味を理解できたのだ。


言葉を失って立ち尽くす俺に門番は怪しむような目を向ける。

俺は慌てて返事をした。


「あ、ああいや、まぁ似たようなモンだけど・・・」

「ほう、どこから来たんだ?」

「日本って言う国なんだけど・・・」


いや待て。まだ何かおかしい。


なんで俺は日本語なのに会話が成立するんだ・・・?


門番が放つ言葉はどう聞いても日本語の発音のそれではない。

しかし俺は今日本語を話した。

なのに会話が成立している・・・。


「ニホン・・・?そんな国聞いたことねぇな・・・お前は?」

「いや、俺もねぇ」


日本を知らない。しかし相手は日本語を理解している・・・

どう言うことだ?

まぁ、今考えても仕方がない。あとで飯食いながら考えよう。

そう思って門番に開けてくれと声をかけようとした時だった。


「何事だ?」

「あっ隊長!」


立派な鎧を身につけた背の高い女性が俺らの前に現れた。

見た感じ俺と同じくらいの年齢だろうか。


「この男がニホンって国から来たって言うんですけど・・・」

「ニホン・・・?聞いたことがない・・・」


隊長と呼ばれた女は俺をキッと睨みつける。


「貴様、名は?」

「千石颯馬だけど・・・」

「ソーマ・・・珍しい名だな・・・まぁいい。入れてやれ」

「!?いいんですか!?」

「あぁ。武器も身につけてない上にそもそも魔力が感じられない。一般人だ」

「わ、わかりました・・・」


なんかよくわからんけど入れてもらえることになった。


***


門を超えた先は大きな城下町だった。

どこか中世のヨーロッパを彷彿とさせるような街並みはまさに・・・


「異世界のテンプレだな」


管理者が言ってた通りだった。異世界といえばこれ!感が溢れてる。


「さて・・・まずは金と飯と寝床をなんとかしねーと・・・」


もちろん基本的に平和な日本で割と普通に育ってきた俺に、こういう時どうすれば良いかなんて知識は無い。

まぁ、言葉も通じるしなんとかなるだろう。

そう思った俺はとにかく町をぶらついてみることにした。


***

「・・・これ詰んでね?」


町に入ってからおよそ5時間。

様々な人に声をかけてみたが、全く相手にしてもらえない。

見たことの無い服をきてるからなのか、それとも他人に構う余裕が無いのか。


「見た感じ普通に賑わってると思うんだが・・・」


少なくとも『魔物の襲撃に怯える』だの『世界の破滅が近い』だのといった雰囲気は無い。

この世界も基本的には平和なようだ。この町だけなのかもしれないが。

太陽は完全に沈んでいる。

外を歩く人の数も昼間よりはだいぶ減った。

これから町を歩いても大した成果は得られないだろう。

俺は路地裏に入り、空腹を誤魔化すように眠りについた。


***

どれほど眠っただろう。そんなに眠ってはいないと思うんだが。


「んぁ!?」


俺は誰かに肩をゆすられて眠りから覚めた。


「大丈夫ですか?」


頭の上から声がする。

そこには俺とそう歳が変わらないであろう少女が立っていた。

茶色の髪の美少女。胸は無いが、日本なら間違いなくトップレベルの容姿をしている。


「なんか具合悪そうですけど・・・」

「・・・あー、まぁ、3日くらい飯食ってないし、寝てもいなかったからなぁ・・・」

「3日もですか!?」

「まぁね。宿に泊まろうにも金も無いし、ここで一休みしたら金稼ぐ手段でも探そうかなって思ってたところ」


この世界に『ギルド』みたいなものがあればいいなと思ってたんだが、今日町を見て回った感じここには無さそうだった。ここに無ければ他の町でも期待はできないだろう。

少女は何かに悩むように腕を組み、


「もしよろしければ、うちに来ますか?」


と言った。


「・・・・・・」


絶句する俺。


「ここにはちょっと用事があったから来ただけで、私が住んでる家はこの町から少し離れてるんですけどね」

「いやいやいや!!ダメだろ!!」

「?なんでですか?」

「なんでって、見ず知らずの男家にあげるとか、問題しか無いだろ!!」

「???」


本気でわからないって顔をする少女。マジでか。

この世界に貞操観念という言葉は無いのだろうか。それともこの子が特別アホの子なのか・・・?


「パパもママもきっといいって言いますよ!」

「いや言わねぇと思うぞ・・・」


多分後者だなこれ。


そんなこんなで俺は少女に連れられ(半ば強引に)少女の住む家に行くのだった。

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