しくじりとは、しくじりしている時は気づかないものだ。
まどろみの真実が途絶えて、三年の月日がたった、とある日。
未熟な女性の脂肪の少ない股ぐらに挟まれている。一見すれば、世の男達が歓喜を上げるような状態だろうが、そうではない。
蒸した太ももの汗がベタ付いて、息を止められてるくらいに酸素が薄く感じられた。彼女は落ちないために強く首を締め上げてきて、より一層苦しくなった。
何故そんな状態になっているのか。
始まりは、昨日に遡る。仲間の一人ミーヤがいつも依頼書を取ってくるのだが、三回に一回、なんやかんやで達成は出来るものの、高難易度の依頼を持ってきてしまうから、注意をしたところ。
「じゃあ。どんな依頼が良いか、シュー太郎が選べばいいじゃないですか」と言われたので、彼女と一緒に依頼書を取りに行く事になった。
そして現在、今日の仕事を求めて依頼受付ロビーで、依頼の取り合い戦争という名の、拷問を受けている。
「ねえ。シュー太郎メイド長誘拐の依頼が面白そうだからあれ取ってきても良い」
陽気で平然と喋りかけてきたが、こすりつけひき肉にされうような、人込みの熱気に揉まれて、精神が摩耗して千鳥足になっている、私に取って尊敬の念と苦しさ、『早くここから出たい』気持ちが入り乱れ、内容の意味を理解せずに、許可を与えてしまった。
「それで良い!取ってこい!」
その声を聞いて、ミーヤは小さく歯を見せて青い翡翠の瞳を細めた。それはまるで、100メートル先の獲物を狙う猛禽類の目つきさながらで、狂気さえも感じられた。
「はい、わかりました。今からとってきますので、シュー太郎は・・」
前方の人間の肩を両手で掴み、ショートパンツの生地で暖められていた、首元が冷えてきた瞬間、『あーこれ前方の人と私を踏み台にして飛ぶわ』と悟とって運命を彼女に預け、私は無心になった。
「この人混みから出っていってください」
私の頭から抜けて立ち上がり、重力で倒れた身体を跳び箱でも飛ぶ感覚で踏み台にされて突き飛ばされた。
私は彼女の声のおかげであろうか。人の隙間をうまい具合に通り抜け、後転しながらもクッション性の椅子に腰をぶつけて、逆さにもたれかかる。みっともない姿ではあったが、地獄からの脱却を果たせた。
「痛い~あ」
疲弊と乾き切った、心身に新鮮な空気が入り込んでいき、血管を潤すように酸素が供給されていく、爽快感にぶつけた痛覚が混ざって快楽を覚えた。
だが、それもつかの間。
私の右側前方で、ミーヤと同じ瞳と暗い緑色の短髪の幼さが残る青年が、頬を引きつらせ呆れつつ、冷ややかな目線を送ってきた。
そんな、もの言いたそうな顔を見て、言葉を返した。
「わざわざここに来て何をしている。カルマ」
一秒ほどの間では、あっただろうが非常に長く感じられた。
単純に考えて、一人の女性を人混みの中で肩車をしていたのだから、なにか言われるのが当然だ。ましては、この青年カルマの双子のお姉さんとなれば、なおさらだ必然的である。
「シューのアニキ・・もう何言われるかわかってますね・・」
極寒の氷柱でも仕込んだ、視線と頬の筋が切れそうなくらい引きつらせて、不気味に微笑えんできた。
じっとりする汗が垂れたが、こちらにも立派な言い分があったから、それほど怖くはなかった。
だから、悪気がない口調で釈明した。
「仕方ないだろ。あんたのお姉さんが、『肩車しないとミンチにするぞ』って言われたら、正気の沙汰じゃないことであっても、やるしかないでしょ」
一部納得したのであろう、表情が気持ち少し和らいだ。しかし、また別の問題が提示された。
「仮にそうだとしても・・22の男が14歳の女の子に引きずられるって、どうゆうこと何ですか」
この問題に対して、めんどくささ混じりの真顔で応えた。
「あ~そう言えばお前、現場にいなかったな。ミーヤが三回に一回、高難易度の依頼持ってくるから、監視員として一緒に付いていく、話になっていたんだよ」
「そう・・なんですか・・」
完全に腑に落ちたことで、さっき怒っていたことが恥ずかしいと思ったのであろう。声から殺気が消えてゆき、口をつぐむみ頬を赤らめた。
だけど、まだ何か言いたそうな顔をしていた。
多分、誤解するのが仕方ないと釈明したかったのだろう。その閉ざした口の代わりに、釈明兼説教した。
「若者よ。これは、仕方のないことだ。しくじりはしくじりしている時はわからないものだ。誰でもあんな状況を見たら、誤解はしてしまう。だから気にするな」
「いや・・そうじゃなくて・・そのえっと・・」
「うん?」
まだ何かを言いたいカルマは、目線を反らして呆れて喉の震えた、重い口をひらいた。
「アニキ・・いつまで、そこで伸びてるつもりですか」
「・・・」
その言葉で、私は顔から火が出そうな思いになった。
「シュー太郎、カルマそこで何しているの」
ミーヤが人の茂にから出ていて、平然とした姿で依頼書を胸に抱いて、目をパチクリさせていた。
逆さで伸びている22歳の男。頬を赤らめた弟がいる中で、この反応。一瞬カルマと目が合って、互いにこの状態は駄目だと悟たと同時に、即答した。
「なんでもない」「なんでもねー」
「そうな何だね」
「・・・」「・・・」「・・・・」
「・・ところで、依頼どうだった良いのあった」
少し無言が続いたが、カルマが話を振ってくれたことで、状況を水に流せた。その流れに乗る感じに、体制を整え立ち上がって依頼書の内容を催促をした。
「そうそう・・・で、依頼どんなものなんだ」
「ああ・・はい。コホン、依頼の内容は、『セトバのメイド長誘拐』です。依頼者は、御門レイアフリーエネルギー会社のお偉いさんですね。ターゲットは、宿毛 四季。一部では、バトルエンジェルと言われていると書かれていますね」
多少、戸惑いは見せたが、すぐに切り替え、淡々と依頼のあらすじを読んでくれた。
「バトルエンジェル・・過去にそんな映画あったような」
カルマは、拳の関節に顎を乗せ眉間を寄せていたが、どうでも良かったから、更に催促してみた。
「もうちょっと詳しく・・」
なせか、依頼書を押し付けられた。
「あとは、シュー太郎が読んでおいてください。」
「いやなんで。いつもなら全部読んでくれるだろ」
いつも、ちょっかいを出しても事細かく知らせてくれる、ミーヤの対応じゃ なかったことに、文句を出した。ミーヤは察しが良いから、文句を疑問と捉え、応えた。
「なぜかわかりませんが、うちの部署の特定確依頼だったみたいですので、現在暫定トップに渡すのが、筋だと思ったことと、どうせ、シュー太郎は準備もしないことは、おみとおしなので暇つぶしにでも、読んでいてください」
「簡単に言えば、暇つぶししておけと」
「そうゆうことよ」
次やることが、決まったから依頼ロビーの角にある自動販売機でゆっくり読もうと考えていた時。カルマがミーヤに素朴な疑問を投げかけた。
「ねえさん、いつもこのくらい混んでるんですか」
「いや、そうじゃないんだけど、今日は特に。」
疑問感につられて、私も問うた。
「そうだな。依頼を取りに来たのは久しぶりだが。以前はこれほどじゃなかったはずだが」
「確しか最近、機械獣や生物兵器の被害大量に出てるから、それに比例して依頼が大量にきていると言ってましたが、今のうちたちの問題じゃないです」
「それもそうだな」
少し生物兵器っていう単語に引っかかたが、疲れが上がってきて早く、自動販売機でゆっくりしたい、感情が上回りここで話を切り上げることにした。
「とりあえず、依頼書をゆっくり読んでくるから、あとは頼んだよ。ミーヤ、カルマ」
「わかりました」
「資料読み終わった頃に迎えに来ますので、また」
カルマは軽く手を上げ了解の動きをし、ミーヤ会話の最後を愛嬌あるウインクをして、話を閉じたのであった