第71話
駅の外側から、ホームが見える最寄駅。(そこに林檎がいてくれますようにって、奇跡を願って輪廻は駅まで走ってきた)
そこに輪廻が到着すると、……すると、そこには『林檎』がいた。
赤色をした上下とも同じ色のジャージを着た、髪の毛をいつものツインテールにしている二木林檎が、学校に通うために電車を利用するいろんな学校の制服姿の学生たちの中に混ざって、そこに一人でぽつんと立っていた。(そんな場違いの場所に迷い込んでしまったような林檎は、どこかひどく悲しそうな、不安そうな顔をしていた)
「林檎っ!!!」
道路際から、輪廻は『悲鳴にも似たような、そんな自分に出せる全力の大声でそう林檎の名前を呼んだ』。
すると、ざわざわとした制服をきた生徒たちに混ざって、林檎が、はっと顔をあげて、輪廻のことを、ちゃんと見つけてくれた。
輪廻? どうして?
そう口を動かして驚いた顔をした林檎が言ったような気がした。
「林檎!! 待ってて!! 今、すぐそっちに行くから!!! 絶対にそこで待ってて!!」
輪廻は叫ぶと、それから駅の入り口のところまで急いで移動をした。
そのとき、向かいの線路から、電車がやってくるのが見えた。
その電車を見て、輪廻の心臓はどきどきした。
……お願い。
間に合って。
林檎。
はやまった真似はしないで。
あるいは、『私のただの勘違い』で、いて。
林檎。
お願い。
お願いだから、もう私を『ひとりぼっちに』させないで。
がたんごとん、と言う音を立てて、電車が線路の上を通過した。それから、キーという音がして、電車がホームに停車をした。
その間、輪廻は定期を使って改札をくぐり、階段を上がって、ホームに移動している最中だった。
騒ぎはなにも起こっていない。
電車には制服を着た生徒たちが、学校に行くために大勢乗り込んでいった。
そして、輪廻が人がいなくなったホームにやってくると、それと同時に、大勢の生徒を乗せた電車が、ホームの上から発車した。
輪廻はホームの上にたった。
すると、そこには一人、ぽつんとなにかに取り残されたように、(売れ残ってしまった林檎みたいに)ぼんやりとした表情をした、二木林檎が立っていた。
「おっす」
林檎は輪廻の顔を見ると、にっこりと笑顔で笑ってそう言った。
輪廻はつかつかと無言のまま、林檎の前まで歩いていくと、そのまま、思いっきり、林檎の左ほほを、自分の右の手のひらで、……ひっぱたいた。
ぱん!
と言うとても乾いた音がした。(もちろん、林檎の白い頬は赤くなった)
それから、林檎がなにも反応する前に、輪廻は林檎の体にしっかりと、ぎゅっと抱きついた。
そして輪廻は「どうして勝手にいなくなっちゃうのよ!! ……私たち、……『もう友達』でしょ!?」と泣きながら、とても大きな声で林檎に言った。
「……ごめんなさい。ありがとう」
同じように泣きながら、林檎は震える声で輪廻に言った。
木から落っこちたりんごは誰が受け止める? 私? それとも……、あなた?
りんごは木から落ちる。 終わり




