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第62話

 それから輪廻は簡単な朝食の準備をした。

 トーストと焼いたベーコンと目玉焼きとサラダとコーヒーの朝食だった。それらをキッチンで白いエプロンをつけた輪廻が作っている間、林檎は料理ができないのか、あるいは、なにかを遠慮しているのかわからなかったけど、きょろきょろと輪廻のキッチンを見て「ひろーい。それにすっごく綺麗」と言ったり、輪廻の料理の様子を背中越しに覗き込んだりしていたのだけど、やがて林檎はキッチンを出て、リビングのある部屋に一人で戻っていった。

 輪廻が出来上がった朝食を部屋に持っていくと、林檎は嬉しそうな顔で、ベットで眠ったことでできた制服のしわを綺麗に伸ばしながら、その自分の憧れていた高等学校の制服姿をきらきらとした笑顔で(まるでファッションショーのように)くるくると回ったりしながら、大きな鏡の中で、飽きることなく見つめていた。

「林檎。ご飯食べよう」

 輪廻がそう言うと「うん。食べよう」と元気な声で林檎は言った。

 朝食を食べている間、輪廻は林檎に蜜柑と檸檬の林檎の双子の男の子の弟である兄弟の話をねだった。すると林檎はその話を輪廻にしてくれた。

 蜜柑は陸の動物が好きで、いつも誕生日に両親から買ってもらった動物図鑑を読んでいる。檸檬は海の動物が好きで、よく海に行って、海の生き物を観察したりしている。

 そんな話を林檎は本当に幸せそうな顔で輪廻に話した。

 その話を聞いて、輪廻は林檎が羨ましいと思った。


「さてと」

 朝食を食べ終わって、食器の後片付けをし終わると、(後片付けは林檎が率先してやってくれた)「ありがとうございました。すっごくお世話になりました」そう言って林檎は深々と輪廻に向かって頭を下げた。

 それは林檎から輪廻に向けた、さよなら、の合図だった。

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