第22話 君におめでとうの花束を贈るよ。
君におめでとうの花束を贈るよ。
……十五年後。
「あれ?」
真っ暗な部屋の中で、琥珀は目を覚ました。
時刻は夜中の二時。
窓の外は東京では本当に珍しくとても美しい星々がよく見える奇跡の夜だった。そんな夜の星を眺めながら、子供のころに暮らしていた宝石の国での出来事を思い出していたから、……こんな懐かしい夢を琥珀は見たのかもしれない。
「うーん」
琥珀は背伸びをして、それから大きな窓際のところにあるソファーの上からキッチンに移動して、そこで一杯の水を飲んだ。
それから琥珀は部屋を移動して、自分のアトリエに向かった。
琥珀のアトリエは琥珀の住んでいるマンションの部屋の一室にあった。
大人になった琥珀は自分の夢を叶えて画家となり、北の大地にある宝石の国を出て、東京でプロとして生きていくことになったのだ。
それは琥珀が二十歳のときの出来事で、琥珀は今、三十歳なので、今年で東京に来て十年の月日が流れたことになる。
琥珀が画家になることができたきっかけは、瑠璃の人物画を描いたことだった。その絵が展覧会ですごく評判になり(もともと宝石の国では子供たちの芸術活動を先生が率先して、外部に向けて発表してくれていた)、琥珀はプロの画家になることができたのだった。
そのとき描いた瑠璃の絵は、今も琥珀の代表作として展示される、琥珀の描いた絵の中で一番有名な絵画だった。(題名は、そのまま『瑠璃の絵』と言った)