第21話
「瑠璃。私は、瑠璃のこと大好きだよ」
「え?」
瑠璃は大きく目を開く。
「私は世界で一番、瑠璃ことが好きだよ。愛しているよ。だから、瑠璃は間違っている。だって、私が瑠璃のことを愛しているんだから」
「俺も愛してる!」
翡翠が叫ぶ。
「瑠璃は一人なんかじゃない。瑠璃を愛している人が誰もいないなんてことは、絶対にない!」
「私もだよ。瑠璃」
先生が言う。
「私は瑠璃のことを我が子のように、愛している。もちろん、翡翠のことも、琥珀のことも、それから、宝石の国で暮らしているほかの子供たちのこともね」そう言って先生は優しい顔でにっこりと笑う。
瑠璃はそんなみんなの顔をきょとんとした顔で見ている。
「だからいいんだよ」
琥珀は言う。
「いいって、なにが?」瑠璃は言う。
「瑠璃は、生きていてもいいんだよ」
にっこりと笑って琥珀が言う。
「……私は、この世界の中に生きていていいの?」
「うん。いいに決まってるじゃん!」
泣きながら、にっこりと笑って琥珀は言う。
その言葉を聞いて、瑠璃のずっと無表情だった、その顔が、崩れて、瑠璃は、大地の上に両手をついて、その場で声を出して、泣き出した。
ぽろぽろと透明な瑠璃の涙が、青色の大地の上に落ちて消えていく。
琥珀はそんな光景を見て、綺麗だな、と場違いなことを少しだけ思ってしまった。
「琥珀ぅ」瑠璃が言う。
瑠璃は琥珀の小柄な体に力なく抱きついてくる。
「瑠璃」
琥珀は言う。
いつもは琥珀が妹で瑠璃がお姉さんみたいなのに、その日は、いつもとは逆だった。「よしよし」そう言って琥珀は震える瑠璃の背中を撫でる。
翡翠と先生が二人の元にゆっくりとした足取りでやってくる。
みんなはいなくなった瑠璃を『ちゃんと見つけて』、みんなは瑠璃と合流して、天国行きの列車に乗ろうとしていた瑠璃を引き止めることに成功した。
……そして、美しい星々が夜空に輝く、冬の宝石の夜は、終わった。