第20話
「……どうして、死んじゃおうなんて思ったの?」
涙声で琥珀が聞く。
「私はこの世界に生きていてはいけない人間だから」
瑠璃は言う。
瑠璃はとても真剣な表情をしている。
「どうしてそんなこと言うの?」
琥珀は言う。
「それは、本当のことだから」
瑠璃は言う。
「そんなわけないじゃん」
琥珀は言う。
「そんなわけ、……あるわけないじゃん」
琥珀は泣きながら言う。
「琥珀」
瑠璃は言う。
「……私は、今まで誰にも愛されず、誰も愛することもなく、なにもせずに、じっと静かに、動かずに、なにも産まずに、ただ、そこにあるだけのために生きていた、……本当に役立たずの命なの。だから私はこの世界にいてはいけない人間なの。私は人間失格なの」
瑠璃は言う。
「そんなことない!」
少し離れたところから翡翠が叫ぶ。
翡翠は先生と一緒に、瑠璃の説得を琥珀に任せるつもりでいたのだけど、思わず声が出てしまった。
「そうだよ、瑠璃。翡翠の言う通りだよ。そんなこと全然ないよ」琥珀は言う。
「ありがとう、琥珀」
瑠璃は言う。
「でも、これは事実なの」瑠璃は宝石の夜を見上げる。
「だって私のことは、私自身が世界で一番、よく理解しているから」
それから瑠璃は琥珀を見て、にっこりととても嬉しそうに笑った。
その瑠璃の目から、自然と、なんの前触れもなく一筋の涙が溢れた。