表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/44

第18話

 琥珀は前に進んだ。

「琥珀」先生が言う。

 でも、琥珀は足を止めない。

「瑠璃ぃ」

 琥珀は言う。

 瑠璃はなにも言わない。

 そして、瑠璃はまた一歩後ろに下がった。

 ……もう、瑠璃の背後に、もう一歩の余裕はない。

 強い風が、真っ暗な谷の底から吹き上がる。

 この風に乗って、空を飛ぼう、と瑠璃は思う。


 ずっと、このときを待っていた。

 この瞬間は、瑠璃の人生にとって、もっとも輝かしい一瞬になるはずの時間だった。

 でも……。

「……琥珀」

 瑠璃は言う。

 足が動かない。

 どうしてだろう?

 なぜだか理由はわからない。

 でも、足を動かすことができない。

 ……自分に向かって、ゆっくりと近づいてくる、琥珀の顔から、目をそらすことが、……できない。

 琥珀は泣いていた。

 ずっと、ずっと泣いていた。

 その琥珀の泣き顔を見て、……泣かないで、琥珀。と瑠璃は思った。


「瑠璃」

 琥珀は言う。

 翡翠も、先生も、じっと琥珀のことを見つめている。

 琥珀はどんどん瑠璃に近づいていく。

 でも、瑠璃はもう、一歩も後ろに下がらない。

 瑠璃は琥珀をじっと見ている。

 ただ、泣いている、自分の幼馴染の少女である、琥珀だけを見つめている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ