第16話
「そんなことはやめなさい」と先生は言った。
「でも、もう決めていたことなんです」
瑠璃は一歩、後ろに下がった。
「瑠璃!」
翡翠はそう叫んで瑠璃のところに駆け寄っていこうとした。
「こないで!!!」
瑠璃は言った。
それは今までに聞いたことがないくらい大きな、瑠璃の叫び声だった。翡翠はその瑠璃の声を聞いて、その場に立ち止まった。
「……本当に、こないで」
今度はとても小さな声で瑠璃は言った。
「瑠璃。悩みがないのなら、なにか嫌なことがあったのかい?」先生が言った。
「ありません」瑠璃は言った。
「なら、どうして天国に行こうなんて思ったりしたんだい?」と優しい声で先生が言った。
「この世界に、私の居場所がないからです」と瑠璃は言った。
「居場所ならある。宝石の国が瑠璃の居場所だ!」
翡翠が言った。
翡翠はじっと瑠璃を見ていた。
瑠璃もじっと翡翠を見ていた。
「瑠璃」
泣きながら、琥珀が言った。
「琥珀」
瑠璃が翡翠から視線を移動させて、琥珀にその目を向けた。
「……瑠璃ぃ」
琥珀はよろよろと歩いて、翡翠のいるところまで前進した。
そこで琥珀は両膝をついて、地面の上に力なく座り込んでしまった。




