ジンモン
捕虜となった私は、制服組が集まった建物に連行され、2人の制服組がいる部屋で、問いただされた。
まずは若い方から尋ねられた。
「自称勇者殿、住所と名前を言いなさい」
「汝ら、まろの勇者なるを知りて為したるか?」
「その口調、どうにかしてくれんか?俺は学生時代古文はいつも赤点スレスレで大嫌いだったんだ」
私の言葉は、ニホンでは昔の言葉だという。東の国では私の言葉の方が正確なはずだが、
ニホンと東の国はどうやら違う国らしいから、きっと崩れた言葉がニホンでは正しいのだろう。
個々の庶民の文章の砕け方は、あらかた掴んだからそれを模してやることとした。
「住所はブランクープの王都トッカネッロ、名前は、『フンドシイッチョ』だ」
若い方は、ガツンと机をたたいて怒鳴った。
「冗談もいい加減にしろ!…まあいい。その剣はどこで手に入れた」
「聖剣シュヴァルツフントは、西の国のドラゴン・アルテイラを倒して手に入れた」
「心神喪失を装うつもりか?最初は、みんなそれをやるんだよなあ~」
若い方は、私に顔を近づけて、不気味な笑みを浮かべた。そして真顔に戻って、言った。
「ケーサツ舐めてんのか?」
「ケーサツとは、ニホンのシノビギルドのことか?私はあらゆるギルドを尊重している」
「…ケーサツは、ギルドというよりは東の国の検非違使、と言えば分かるか?」
ここにきて、年老いた方が初めて言った言葉がそれだった。
検非違使と言われて合点が行った。どうやら私は、ニホンの法律に触れたということになっているらしい。
「なるほど。で、何故この私、勇者フンドシイッチョを捕まえたのだ?」
「あんなでかい刀を振り回したら、どんな人でも逮捕するさ。それが国民を守る我々の仕事だからね」
「それがジュートーホー違反か?」
「そういうことだな」
話によると、剣と、銃と呼ばれる、鋼鉄の怪物集団が使っているような鉛の豆玉を飛ばす兵器の所持は、ニホンでは認められていないそうだ。
ケーサツは普通に身に着けているようだが、それは例外ということか。
「…この国の法に触れたのなら、済まなかった。ブランクープへ送り返すなり処刑するなり、好きにしてくれ」
「こちらもそうしたいところだが、残念ながら、今回は厳重注意だけで釈放だ。
被害者のサカモトさんが自ら身元引受人としてお前を預かると言っているのだから」
はあ?
よりによって何故、私の前で悲鳴を上げたあの偽グンドリル、サカモトが…?
「サカモトさんは、あのゲームの大ファンだからな。
ここまで徹底してコスプレしている人は初めてだっていうんで、君を尊敬しているようだ。
だからか知らんが、とにかく、お前を預かってくれるとのことだ」
相変わらずこの国のシノビ扱いされているようで、どうも奇妙な気分になったが、機は活かした方がいいだろう。
私は、それに乗っかることとした。