勇者、死す
十三代目勇者の顔が、苦痛で歪んだ。
二代目勇者の刃が、浅いとはいえ脇腹に入ったからだ。
二代目勇者は、一気に畳みかけようとする。
十三代目勇者は、まだ何とか戦えたが、防戦一方に追いやられていった。
キーン。キーン。
このままでは、いつまで守れるか分からない、と十三代目勇者は思ったが、それでも力を振り絞って、二代目勇者と刃を交わす。
キーン。キーン。
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砂漠を越えて、初代勇者は、東の国がようやく見えるところまでたどり着いた。
東の国そのものは何ともなさそうだった。
だが、その高い上空で、二人の勇者が戦っているのが目に入った。
一方が激しく攻め、他方は押され気味。
急がねば、と思い、初代勇者は勇者たちの戦うところへと向かった。
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焼け野原の王都。
突如として、大きな城が出現し、居残っていた歴代勇者たちは驚いた。
それは、ある勇者にとっては時を経てより立派になったもの、別の勇者にとっては、時間の流れによって重厚な雰囲気をまとい、古城になったものとして現れたが、間違いなく王宮であった。
「これが、ハッカーの力…」
誰ともなく、そんな驚嘆のつぶやきが漏れる。
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私は、東の砂漠に差し掛かった。
「レーダー」は確かに、二代目勇者が歴代勇者たちの敵となったこと、そして、東の国で戦っていることを示していた。
彼に、伝えなければならない。
そう思って、私は、先を急いだ。
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「私は、死んだのかしら?」
姫は、ゆっくりと目を開けた。
王都の外壁まで出て、怪物どもを相手取り、必死に戦い、そして、私はあの鉛玉に胸を貫かれて倒れたはず…。
なのに、眼前にあったのは、懐かしの王宮、思い入れのある自室であった。
「あれが、全て夢だったということなの?」
姫は、カーテンを開けた。
すると、焼けている王都から、次々と建物が、まるで雨後のタケノコのように勢いよく「生えてくる」のが目に入ってきた。
「焼けた王都、元に戻っていく王都。神の加護かしら?」
そして、自身が訳もなく、泣いていることに気付き、ベッドに倒れ込み、枕に頭をうずめた。
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十三代目勇者は、既にボロボロになっていた。後一太刀でも受けたら、もうだめかもしれない。
そんな思いが頭をよぎり、二代目勇者の刃が迫った時。
カーン。
別の刃が、それを止めていた。
「…間に合ったようだな。大丈夫か?」
初代勇者は、そう言った。
十三代目勇者は、返事もできず、気を失ってしまった。
それを見て、初代勇者は言う。
「やれやれだぜ。どうしてまたこんなになるまで戦っている?」
二代目勇者の返事は、向けられた刃だった。
その目は虚ろで、赤黒くなっていた。まるで、涙も枯れてしまったかのように…。
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私は、初代勇者が二代目勇者と戦っているのを目にした。十三代目勇者は、既に気を失っているようであった。
ひとまず、私は十三代目勇者に、回復魔法をかけた。
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十三代目勇者は、意識を取り戻した。
「初代勇者殿…」
眼前に入ってきたのは、初代勇者が軽く二代目勇者の刃を払っている様だった。攻めはしないが、やらせもしない。
初代の力は、圧倒的であった。
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初代勇者は、二代目勇者に語り掛ける。
「目を覚ますんだ。君は昔から心の脆い子だった。
でも、たとえポンゴンがなくなったって、また建て直せばいいだけじゃないか。
どうして東の国を攻撃する?復讐ですらない八つ当たりをして、何になるというのだ?」
「許せない。何で東の国は無傷なんだよ?奴らがシノビの術を駆使して、ポンゴンを丸焼きにしたんだろ?
黒幕だから、無傷なんだろ?おかしいだろ、無傷なんて。だから、これは復讐なんだ。丸焼きにしてやる。
邪魔するなら、たとえあなたでも、殺す」
二代目勇者の口調は、どこか虚ろだった。
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私は、二代目勇者に語り掛けた。
「こんなこと、やめてくれよ!ポンゴンだって元に戻る。私は、あなたを尊敬している。
そんなあなたに復讐なんて、してほしくない。あなたの復讐する理由は、元に戻れば全てなくなるんだから!」
初代と二代目の二人の勇者は、一斉に私の方へ振り向いた。
「元に戻る、だと?」
「お前、来るなと言ったろうに」
「でも、伝えるしかなかったんだ!ハッカーが、全てを元に戻してくれるということを。そうしなければ、彼は止まらないから」
二代目勇者は、少し落ち着きを取り戻したようだった。
「元に戻る?それなら、見せてくれよ。本当かどうか」
これを待っていたかのように、空に映像が浮かび、天からスズキの声が響いてきた。
「勇者様。これがポンゴンですよ。まだ再建途上ですが、間もなく全て、元通りになります」
映像を見ると、ポンゴンに開いた巨大な穴はふさがり、建物などが、半分ほどだろうか、復元されていた。
初代勇者がつぶやく。
「これは…神?」
「いえ、ただのハッカーですよ。でも時には神を超えることができたりするんです」
二代目勇者は、画面に見入っていた。
だが、やがて不気味に笑いだして、言った。
「クックック…嘘だ!こんな幻術を使って私を惑わそうとするなんて小癪なマネ、1000年早いわ!」
そして、初代勇者に刃を向けた。初代勇者は、無防備だった。
あれでは、間に合わない!
咄嗟に判断した私は、二人の間に入り、胸を刺し貫かれた。
「え、嘘…」
「こうでもしなければ、あなたは正気に戻らない…と思ったんで。ゴホ、……目を覚ましてくれ、あれは、本物のポンゴンなんだから………」
「馬鹿が。お前は残れと、だから言ったのに…。あれぐらい、私なら間に合ったのに…」
私は、二代目勇者が正気の戻るのを見て、初代勇者の嘆きを微かに聞き取りつつ、意識を失った。
これでも、私は何とかなるはずだと思っていた。
そうだよね、スズキさん。
脇役がやりそうなことを、主役がやっちゃうんですもん。困っちゃいますねえ…。
これが、作者の手を離れて動き出した登場人物ってやつですかね。
完結は近いです。が、本編完結後もちょっと思うところがあるので、連載は今しばらく続けようと思っています。





