これで、おしまい?
とりあえず、私はサカモトが気付くことを想定して、独り言を言った、
「ところで、あのドラゴンの、私をトーキョーへと飛ばしたあの能力は、どうにかできないのかね?」
案の定、サカモトは私の口を借りて返事をしてきた。
「装置との接続が切れているので、気にしなくても発動させられないはずですよ」
「なるほど。ところで、毎回思うのだが、私の口を借りる以外の方法で話すことはできないのか?スズキさんのように」
「スズキさんに頼めば、できなくはないと思いますが、このぐらいは別にいいじゃないですか。他のどの勇者様も耐えていることですし」
「はっきり言うと、気味が悪いのだ」
「それでも、正直結構面白いんですよね。こうして画面を見て、一人二役やっている勇者様を見るのって」
私は、サカモトにその気がないことを理解して、諦めた。
ともかく、あの技さえ使えないのであれば、何とかなるだろう。
そう思って、私は、森林地帯を進み、ハマナカの元へと向かった。
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通信は、いつまで待っても回復しない。
ハマナカは、焦り始めていた。
ハッキングされたのだと、嫌でも認めざるを得なくなったからだ。
ハマナカ自身が世界の外にいれば、カウンターハックを仕掛けることもできただろう。
だが、ブランクープ世界の中にいるハマナカにとっては、ハッキングされてしまったとなると、対抗手段がないのであった。
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鋼鉄のドラゴンの中にいるハマナカは焦っているようだった。私は、彼を驚かせるため、聖剣を用いて、背後から威嚇攻撃を放った。
「やあ。今度は私がお前を見つけたようだな、ハマナカ」
ドラゴンがゆっくりと首を向け、ハマナカの動揺した声が響いた。
「そんな、馬鹿な、お前は死んだはずだぞ?」
「残念ながら、死神には大量の怪物を貢いでしまっていてね。どうやらまだまだ空きがないらしいとのことだったよ」
「あり得ない、お前を再び地獄に戻してやる!」
ドラゴンの口が開いた。そして、ハマナカではない、ぎこちない音声が響いた。
「エラーです。接続が切れているようです」
「何!あり得ないあり得ないあり得ない、この世界は誰かにハッキングされたんだぞ!接続はあるはずなんだ!」
「残念。ハッカーとの接続はあっても、変換装置との接続は切れているんだってさ」
ハマナカの錯乱した声が響いた。
「あり得ないあり得ないあり得ない、火炎放射、こうなれば、ヤケだ!」
突如、ドラゴンの口から炎が吐き出された。
その炎は、あらゆるドラゴンよりも強力ではあった。だが、私は魔術を以てそれを防いだ。
「魔法!?馬鹿な、私の力は…ヒャヒャヒャ……残っているはずなのに!」
私は、錯乱しているハマナカを無視し、聖剣によって、ドラゴンの首を斬り落とした。だが、ドラゴンは倒れなかった。
「ヒャヒャヒャ、バーカ、首なんか切ってもそこには重要な配線は何一つないんだよ、機銃掃射だ!」
ドドド。
しかし、弾は勢いよくドラゴンの眼前に穴を開けただけだった。
「ヒャヒャヒャヒャ、何でだよ、おかしいだろ、ヒャヒャヒャ…うぅ…アヒャヒャヒャ!!!」
ハマナカが泣いているのか笑っているのか分からない声を上げているのを無視し、私はドラゴンに更なる斬撃を重ねた。
翼、四肢、そして、胴体。
胴体が両断されると、中には、しゃがみこんで頭を掻きむしっているハマナカがいた。
「ウヒャヒャヒャ、お前、ウヒャヒャヒャ、こんなはずじゃ、ウヒャウヒャウヒャ、ないのに、ウウヒャヒャヒャ!僕は、エリートなのに、次の国王になるはずなのに、うう……ヒャヒャヒャ、ウヒャウヒャ!!」
ハマナカは、涙で顔を濡らしながら、虚ろに笑っていた。
これでは救いようがないと判断した私は、ハマナカにトドメを刺そうと思った。だが。
ボカーン。
その前に、残っていた胴体は、ハマナカごと爆散してしまった。
最後に爆散してまで私を攻撃しようとするとは、ああ見えても、油断のできない奴だと思った。
きっと、本当は正気なのに狂気を装っていたのだろう。
素早く魔術で防御したから何ともなかったが、油断していたら、飛んできた破片が当たって、死んでもおかしくないものだった。
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西の果て。
二代目勇者は、怒りに身を任せて、怪物集団を叩き斬っていた。
神将となった勇者の前に、成す術もなく怪物集団は倒され、壊滅していった。
二代目勇者の目には、うっすらと涙が光っていた。
そして、二代目勇者は、更に西へと進んでいった。
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ハマナカを倒してしまった私は、王都へと戻った。
王都では、どうやら、ミネルヴァが全てを片付けてしまったらしく、残っている怪物はおらず、ミネルヴァ自身もいなくなっていた。
代わりに、歴代勇者たちの何人かが、自分たちの向かった先での怪物たちを駆逐したのか、戻ってきていた。
いよいよこれで終わりか、と私は思った。
だが、今後は、焼け野原からの復興を考えねばならない。
姫亡きブランクープ。その再建の課題は、私をやや憂鬱な気分にした。
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十三代目勇者は、ハマナカが倒されたことを察知し、王都に戻ろうと考えた。
だが、何もないはずの東から、東の国に迫る強大な殺気を感じたので、今しばらくとどまることとした。
色々あって、まだ終わらないかもしれません。





