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勇者様、リアル世界に降臨したってさ  作者: 如空
ブランクープにて
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ミネルヴァ召喚

勇者は奇策に出ます。

「前言を撤回して逃げるとは、勇者も情けないものだな」


そんなハマナカの声が聞こえるのを知りながら、私は無視して走った。


怪物たちが追ってくるのは感じられた。しかし、私には策がある。


ハマナカはせいぜい裏技の一つや二つしか知らない。見たところ、王都はほぼ焼け野原になっていたが、王都の地下までその狼藉が届いているようには見えなかった。


だから、私は走った。あるダンジョンを目指して…。


「君が前言を撤回するのなら、私も前言を撤回しよう。まだ五分経っていないが、銃を使わせてもらうぞ」


マーキュリーの羽靴の助けを借りたおかげで、やや怪物の気配が遠のき始めたとき、そんなハマナカの声が聞こえてきた。


銃を使われては厳しい。王都の地上には、隠れられる場所は殆ど残っていなかったからだ。


しかし、ハマナカは所詮弟に勝てない素人。銃撃を試みたところで、最初の5秒間は角度調整に追われ、当たりはしないだろう。


ここまでくれば、間に合う。止まってはいけない。


そう判断した私は、一層加速して、あそこへ向かった。


タタタ、タタタ、タタタ。


銃声が鳴り始めた。着弾地点は、案の定、私よりもかなり後方だと思われた。


私は気にせず、駆け続けた。


タタタ、タタタ、タタタ。


銃弾の着弾地点が、少しずつだが、確実に私に迫ってくるのが感じられた。


タタタ、タタタ、タタタ。


しかし、私は間に合った。あそこにたどり着いたのだ。


タタタ、タタタ、タタタ。


銃弾が私をかすめるのが感じられたが、時既に遅し。

私は素早く隠し扉を開け、地下に入り、扉を閉じた。


ダダダ、ダダダ、ダダダ。


銃弾が鈍く扉に叩きつける音が響いたが、この分なら、しばらくは銃弾は届かないだろう。


ここは、2000年以上前に、初代勇者が、いくつかのアイテムを隠した伝説のダンジョン。

前に既に見つけていたが、使う機会がなかったので、今まで放置していたものだ。


地下に降りると、ダンジョンの道は、すぐに曲がる。

人一人がやっと通れる道がしばらく続くので、犬のような形とはいえ、私の倍ぐらいの体調はある、あの怪物どもは入ることができないはずだ。


「地下に逃げるとは考えたな。だが、籠城してもジリ貧なのは、わかってるだろ?

早いところ諦めて出てきなよ。すぐ楽にしてあげるからさ」


反響によって幾重かに重なって響いてくるハマナカの声を無視して、私は先に進んだ。


最深部の扉の前には、初代勇者の亡霊が立っていた。


しかし、私はこの亡霊なら問題ないと判断した。


亡霊は、神域に住んでいる過去の勇者たちが分身として送り込み、ダンジョンを守らせるための存在である。

しかし、うまいもので、後代の正真正銘の勇者が訪れたときには、必ず倒されるようにできている。


それは、あのゴールデン・アップルのあったダンジョンにしても、しかりであった。


亡霊は言う。


「ここから先へは行かせぬ」


私は、聖剣シュヴァルツフントを亡霊に向けてかざした。


「どうかな?聖術・亡霊退散!」


ここでは、対怪物の場合とは異なり、予想通り魔術が使えた。


聖剣から放たれた魔術は、亡霊を直撃し、光となって亡霊を包み、光は、亡霊ごと消えた。


私は、扉を開け、目的のアイテム群を手に入れた。


その一つは、「ミネルヴァ召喚器」。


ミネルヴァの加護を受けた初代勇者が、いざというときのためにとミネルヴァその人から渡された、一回限り女神ミネルヴァを召喚できる、古代のアイテムである。


初代勇者はとうとうそれに頼らずに初代魔王を倒してしまったため、こうして2000年以上の長きに渡って、誰も手にすることなくダンジョンに眠る品の一つとなった。


私は、女神、ことに創造神と雷神ジュピターに次ぐ戦力を誇るミネルヴァであれば、たとえ「鋼鉄の怪物」が相手でも勝てると踏んではいた。


だが、それ以上に、ミネルヴァを選んで召喚したのには、理由があった。


召喚したミネルヴァに対して、私は言った。


「偉大なる女神ミネルヴァよ、あなたの戦の女神としての戦力と知の女神としての知性により、我が敵ハマナカの能力を教えてくれたまえ」


狂乱したダーク・ミネルヴァとは異なり、ミネルヴァは、知性と威厳を含んだ声で、私に語り掛けた。


「おお、汝勇者よ。


汝は恐るべき敵を抱えたものだ。


ハマナカの能力の一つ目は、『レーダー』。ブランクープ全域における敵をリアルタイムで検知できる能力である。


二つ目は、『魔術場抹消』。通常の魔術無効化と異なり、自身及び自身の操作している怪物と、その武器の周囲において、魔術が働く場自体を消し去り、世界の法則を書き換えてしまう、神に迫る能力である。


三つ目は、『遠隔操作』。配下の怪物を、自身の居場所によらずどんな土地に置いても巧みに操作してのける能力である。


そして、四つ目は、『敵性付与』。勇者以外の全ての生きとし生けるものを、勇者の敵として戦わせることのできる能力である。


尤も、女神の私にはいずれの能力も効かぬ。女神は生命を超越しているからな。


生きたければ、汝勇者よ、私について来い。神に迫る邪神のごとき能力を持つハマナカは、この私にしか倒せぬ。


汝一人では、あるいは歴代の勇者全員が束になってかかっても、彼を倒すことは無理であるぞ」


言いながら、女神は高速でダンジョンの出口に向かって飛び始めた。

マーキュリーの羽靴がなかったら、私は取り残されていたであろう。だが、私は何とかついていき、ダンジョンの出口へとたどり着いた。


ダダダ、ダダダ、ダダダ。


出口では、未だに扉を攻撃する銃声が響いていた。

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