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研究所と研究者

勇者たちは、オクタマの研究所に入ります。

そこで彼らは、何を見聞きするのでしょう?


お楽しみください :)

研究所の入り口には、カイサツを大きくしたような、ゲートと呼ばれる怪物が立ちふさがっていた。


ゲートの片側には、人が入っている箱があり、中に入っている人が問いかけてきた。


「失礼ですが、本日はどのようなご用件でこちらに?」

「見学です」

「えっと、予約は…」

「ハマナカ主任研究員から直々に許可を得ています。こちらをご確認いただければ」


サカモトがそう言って、スマホを見せると、ゲートの中の人は、


「確認を取りますので、少々お待ちください」


と言って、ゲートに、らせん状のコードでつながっているバーベルのようなものを取り上げ、何やらボタンを押して、


「もしもし、ハマナカ主任研究員は、今、そちらにいらっしゃいますでしょうか?…ええ、…はい、…なるほど、承知いたしました。どうもありがとうございました」


と恰も誰かと話しているかのように、バーベルに向かって独り言ちた。

そして、サカモトに対し、


「確認が取れました。どうぞ」


と言って、ゲートを開けた。


私達がゲートを通ると、中の人が、


「しかし、本来研究員は、日曜日には、誰もいないはずなんだけどな…。

どうして、ハマナカさんはここに来ているのだろう?」


とボソボソ独り言ちているのが、耳に入った。


標識の案内に従って車を進め、来客用の駐車場に止めると、私は、殺気に近い鋭い気配を感じた。


振り向くと、そこにはハマナカがいた。


「ようこそ、我が研究所へ。大体のお話は既に伺っております。

今日は、我々が誇る、最新鋭のデータ・リアル変換装置の実験機などをご覧いただくとしましょう。


本来なら、今日は研究所は停止していて、明日以降にしてもらうのが筋というものなのですが、

事情が事情なので無理を通して、私自身がこうして駆けつけて案内することとしました。

明日はきっと、所長から始末書を書かされる羽目になるでしょうが…」


そう言って、ハマナカは、サカモトに似た曖昧な笑みを浮かべたが、その眼光は鋭く、何かを探っているかのようであった。


私とサカモトは、ハマナカの案内によって、データとリアルの変換についての歴史や、種々の怪しげな怪物の展示を見せられた。


「現実世界をデータとして取り込むことで、我々は、人類の長年の夢である不老不死の実現に近づくことができると考え、15年前から地道に研究を重ねてきました。

現実世界の情報をある程度までデータ化することはそれほど難しいことではありませんでしたが、

そのデータを復元した時のリアリティが不足しており、十分な精度・情報量を収集することは困難だと思われました。


しかし、最新鋭の機械学習の方法を用い、被験者と複数回接触することで、十分なリアリティのあるデータを生み出すことに成功しました。

それ自体、大きな進歩でした。しかし、私自身は、更に一歩踏み出したいと思いました。


ゲームやアニメのキャラクター、つまり、架空の存在を、リアリティあるデータとして再現することです。


ニホンでは、ただでさえ少子高齢化が進んでおります。


男性はセクハラだのストーカーだのと批判されることを恐れるあまり、女性へ殆どアプローチしづらい状況に追いやられていますし、

女性は女性で、もっと働いていたいということを理由に、育児を避ける傾向が拡大しております。

育児休暇こそありますが、技術は二、三年もブランクがあれば、一気に風化してしまうのが現代ですから、

建前上昇進に影響しないということになっていても、彼女たちは休むことはできないのです。


そんな中で、私が注目したのが、所謂二次元です。

男性・女性問わず、中には二次元の世界に逃げ込む人々がいます。

アニメやゲームのキャラクターであれば、ある程度までは好き放題妄想して、理想の異性に仕立て上げることも容易だからです。


彼らは、言ってしまえばオタクにとって都合のいい異性なのです。

そして彼らにとっては、なまじ現実に生きていて思い通りにはならない異性よりも、はるかに魅力的です。人によっては、画面にキスしたりも平気ですると言います。


そこで、私は考えました。

これら二次元のキャラクターを現実化すれば、オタク達が現実化した二次元の異性と交わり、少子高齢化への一定の解決策が得られるのではないか、と。


関門は二つありました。


一つ目は、人格のオーダーメイド。

妄想の余地があるということは、換言すれば知られている人格が不完全だということを意味します。

それを、オタクの妄想に沿って補う、つまり人工の人格としてデータ化し、それを現実化するというプロセスは、そんなに容易なことではありませんでした。

ただ、機械学習を用い、特定の人格ごとの行動パターンを学習させ、シミュレートすることで、人格を行動のデータセットに置換したところ、何とかうまく行くようになりました。


二つ目は、生身の人間の合成。

本社ではいまだに開発途上ということになっておりますが、私としては、こちらにもこだわりがありました。

オタクと二次元キャラが現実で邂逅しても、一方が人工的な組成であれば、うまく子供は作れないでしょう。

生み出されるのは、生身の人間でなければならなかったのです。


そして、私達は、万能細胞を使い、既に解読されているヒトゲノムを参考に、遺伝子改造による徹底的な没個性化を行い、

遂には、男女を生み出すことに成功しました。私達は彼らを、アダムとイブと名付けました」


歩きながら話していた彼は、やがて立ち止まった。


ハマナカの背後には、SANYで見たラップトップの上位互換種にそっくりだが、ガラスの円筒と黒い箱がそれぞれより巨大化した、文字通りの怪物が鎮座していた。

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