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テレビ

サカモトはしばらくラップトップに向き合って何か打ち込んでいたが、私は暇になったので、

夜に出ることとなるテレビとやらを見せてもらうこととした。


テレビでは、画面上に表示されたたった数十字の文字を読み上げるために30分もの時間を使っていた。


大体、10文字読むごとに物知り顔の「専門家」がチンプンカンプンな解説を5分も続けていたからだ。


こんな退屈な思いをさせられるのかと失望したので、サカモトに尋ねた。


「テレビに流れる画面は一種類しかないのか?」

「いえ、数字を押せばいろいろ見られますよ」


それならば、と1から順に数字を押して行ってみた。


あるチャンネルでは、料理の仕方が流れていた。

「3分クッキング」などと称しながら、実際には3分では料理できない代物が作られていた。

これならせめて、「3分に縮約された調理法案内」とでもするべきではなかろうか。題名詐欺である。


別のチャンネルでは、何故かニホン語でも東の国の言葉でもない、聞き慣れぬ言語を話す女性が泣いていた。


画面の下の方に文字が書かれており、


「愛する君よ、どうして私を捨ててしまうの?」


つまり、これは何らかの劇らしい。女性が男性に捨てられる、ありがちな失恋物語だろうか。

ブランクープの悲劇作家もそうだが、よくもまあ、同じモチーフで何回も何回も作品を作り直せるものだ。

ある意味素晴らしい才能だが、私に言わせれば、陳腐なものだった。


また別のチャンネルでは、意味不明な数字が流れていた。TOPIX?

これを眺めて飽きない、数字マニアが多数いるということだろうか。


更に変えると、ブランクープ語の簡単な教育講座をやっているチャンネルや、得体のしれない「製品」を宣伝しているチャンネルなどにもであったが、

やはり最も多かったのは、数十字を30分かけて読み上げる類の途方もなく内容が薄い画面だった。


どうせなら、一文字だけ表示してそれを無視して一日中雑談でもしていればいいのに、どうも中途半端である。

あれは人々を眠らせたいのか、初等教育番組だったのか、それとも、流せる画面がなくなるのを避けるための引き延ばし戦術だったのか。


いずれにせよ、テレビに実際に出たら、きっとろくな目に遭わないだろう。

あの薄っぺらで退屈な話を延々と聞かされるに違いない。


そう思うと、私は夕方の件を辞退したくなった。

が、そこは勇者。そこに何があろうと、対処しなければなるまい、と腹をくくることにした。


サカモトがテレビに気付いたようで、話しかけてきた。


「そうそう、今夜出るのは、ロッポンギのテレビ局です。出演が終わったとは、少々思うところがあるので、金貨は可能な限り換金しておいていいですか?」

「何に使うのかね?」

「それは後でのお楽しみです。ただ、政府関係者にもつながる筋を知っているので、何かつかめるかもしれませんよ?」

「情報屋の類か?」

「酒場…に近いですかね。似て非なるものですが」

「なるほど」


私の知る限りでは、サカモトの話に当てはまるのは高級娼婦ぐらいだ。

東の国と同じだとすれば、シノビは全体的に禁欲的なはずだが、ミヤコともなるとさすがに処理できない分も出てきたのだろう。


自然ななり行きだが、少々後ろ暗い世界である分、科学で何とかされていないのは奇妙であった。


と、サカモトがラップトップを閉じて伸びをした。


「さて、私は今日の分を書きましたし、シナガワのSANYに向かいますか」

娼婦という語は出てきましたが、全ストーリーを通じて下ネタ描写は含む予定はありません。念のため。

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