アメリカ、イギリスとニューク
今回は一人で調査に入るので、会話はありません。
完全な独白ですのでご了承ください。
朝早く、ブランクープでそうしていたように、部屋に指す日差しで自然に目を覚ました私は、
サカモトから借りているラップトップを起動し、気になっていたことをいくつか調べることとした。
まず、アメリカ。
ブランクープと同じ母語を話すという国。
調べたところ、この世界で最大・最強の国で、今は、顔をオレンジに染めたドンキー…ではなく、道化が君主になっているらしい。
ニホンの同盟国で、かつてニホンを負かしたということだ。
強大なるニホンのシノビどもを打ち負かしたというのだから、きっとアメリカのことを知れば、「鋼鉄の怪物集団」を倒す糸口もつかめるかもしれない。
しかし、道化を君主に選んだという国は、どうも私には胡散臭く思われた。
国民が進んで道化を君主に戴くことなどあるだろうか?
賢君に疲れて、道化を君主にせざるを得なくなったのか、最強国家故の余興か。
いずれにせよ、胡散臭すぎるので、アメリカは頼りにはできなそうだと判断した。
調べていく中で、ニホンでは英語と呼ばれているブランクープ語の文献も見つかったが、確かにアメリカはブランクープ語を使っているらしい。
ただ、微妙に異なる点もあった。
例えばブランクープでは「色」はcolour、「劇場」はtheatreと表記するのだが、アメリカではそれぞれcolor、theaterと表記していた。
更に深く調べたところ、どうやらこれらの表記は、アメリカを昔支配していた国、イギリスには残っているようであったので、
どうも表記面ではイギリスのブランクープ語の方が私の知っているものに近いようであった。
一方で、そのイギリスのブランクープ語は、映像を見つけたので聞いてみたところ、
ひどく癖のある訛りで、様々な田舎訛りを知っている私でも到底耐えられるものではなかった。
特に、北方訛りはひどかった。あれは最早、ブランクープ語に含めていいかすら、怪しいレベルだった。
この世界では、奇妙なことに派生したブランクープ語の方が、口語では我々に近いのであった。
しかも、いずれのブランクープ語においても、もう一つ奇妙な点があった。
我々は自らの言語をBran Koopishと呼ぶのに、彼らは何故か私達の言語を、Englishと呼んでいるのだ。
ブランクープ語に相当する言葉が存在しないのである。
「神託」もそれには答えを出してくれなかった。
私は、違和感を覚えた。
この世界には、ブランクープは存在しないのか?
しかし、そうだとすれば、サカモトが金貨を円に換金できたということは合点が…。
いや、まさか。
ブランクープ金貨は、ブランクープの通貨としてではなく、金として交換されたということか?
私には、結局のところこの世界が地獄なのかは、まだ分かってはいない。
しかし、この世界は、確実にブランクープとは別世界であることはどうにか確信した。
ニホンが私達が知らない国にすぎない可能性を、まだ少しだけ疑っていたのだが、
そんなブランクープの常識の範囲内での思考は、全く通用しなかったようだ。
そしてまた、「鋼鉄の怪物集団」も、別世界から私たちの世界を侵略しに来たのだ。
これで一つ謎が解けた。
しかし、どうやって世界を移動するのか?
いくらシノビでも、それは簡単ではないはずだ。
解けた謎は、別の謎を生んだのであった。
しかし、謎は考えすぎても始まらない。賢者や魔法使いの頭脳がない私は、引き続き調べたいことを調べた。
カク兵器。ブランクープ語ではnuke、ニュークと呼ばれているとのことだ。
これは、やはりポンゴンを襲った兵器と同じく、町を一瞬で壊滅させる力があるらしい。
アメリカが開発し、ニホンのヒロシマ・ナガサキで実験したというが、どうやら科学の力で作られたものらしい。
少なくとも魔術には無理な芸当である。
そしてまた、既にニホンで魔術にはできない芸当をいくつも見せられてきた私だが、ニホンの科学とも質が違うことに気付いた。
それは、ニホンで目の当たりにした科学よりも、更に圧倒的であった。
アメリカがニホンを打ち負かしたのも無理はない。
しかし、ニュークはニホンは持っていない。
それなら、何故この世界ではニホンしか襲うことができないブランクープの世界に、「鋼鉄の怪物集団」はニュークを持ち込めたのだろうか?
ここにもまた謎が生まれた。
他にもいろいろと気になることをいくつか調べ続けたが、調べても多くの謎が出てくる。
「神託」も、万能ではなく、別世界のこととなると沈黙してしまうのだ。
結局、最後には自分で解決策を探るしかなさそうだった。
「神託」は所詮は人工の模造の神であり、「鋼鉄の怪物集団」は、「神託」の情報収集にかからない何らかの形で動いている。
今はこのネガティブな形で浮かび上がった情報を、一応一つの収穫としておくか。
…そう考えていると、サカモトが起きてきた。





