表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/23

第三話

「家はどこ?」

「……ない」



そんな感じのやりとりをして、わかったのは未耶という名前だけだ。



「何処に送ればいい?」

「……」

そう聞けば俯いて黙ってしまう。


棗は髪を解いた頭をガシガシかいた。

「んー、行く場所ないなら家くるか?」

「……」

またも、無言。

だが、今回は違う反応を見せ、こちらを『いいの?』と言うような目でこちらを見つめていた。


返事の代わりに濡れている髪を撫でてやる。

「足、怪我してんだろ?おぶってやるから、背中のりな。あっ傘はさしてくれ」


そう言って背中を向ければ、おずおずと背中をよじ登ってくる。

しっかり乗ったのを確認して、立ち上がり家に向かって歩きだした。


「……ごめんなさい」

そう小さく言った声は、雨音で消えてしまいそうだったけど、確かに聞こえて。

「こういうときは、ありがとうの方が嬉しいな」

そう言ってやれば、

「……ありがと」

と、今度はさっきよりもはっきり聞こえる声で言ってくれた。










「ということなんです」

「あらあら。今、着替えとお風呂用意するから少し待っててね」


そういって、小走りでいなくなったのは、美里姉さんだ。諏訪家の家主で、お母さん的な存在。

ちなみに諏訪家は退魔士の集まりで、美里姉さんが諏訪家の頭である。

間違いなく世界でもトップレベルの実力者だけど、普段はあんな感じにおっとりしてる。


と、そんなことを考えていたら、美里姉さんがひょっこり顔を出した。


「お風呂の準備できましたよ。入ってきなさい」

「ほら、未耶行ってきな」

「……」


ぎゅっとコートを掴んで離さない。

とはいっても、俺が入れてやるわけにもいかない訳で、目線をあわせて説得を開始する。


「一人になるの怖いのか?」

ゆっくりと頷かれた。

「大丈夫。なんかあったら絶対助けてやるし、突然消えたりもしないからな」

しばらくこちらをじっと見た後、先導する美里姉さんの後についていった。




「絶対助けてやるかぁ。かっこいいなぁ。私も言われたいなぁ」

そういいながらニヤニヤしてる人影。

「春日か。やめてくれ、恥ずかしい」

妹の春日だった。

短い髪が活発なイメージを与える。端整な顔立ちだがニヤニヤ顔が見事にそれを壊している。

「やだなぁ。そうだからこそいってるんじゃん」

「相変わらずいい性格してんな」

「さすが兄さん。私の性格よくわかってる」

なおもニヤニヤしながら返してくる。

皮肉は通じなかったらしい。なので、少し復讐しておく。


「春日のことだからな」

「ッ!!」

こんな程度で真っ赤になってしまう。

人のことはこういうこと大好きなのに、自分に対しては全く耐性がない。かわいいやつだと思う。




そんなふうに夜は更けていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ