第十話
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学校組が行った後の諏訪家―
「それにしてもすずちゃん来るの早かったわね」
「あのっそれは早く棗に会いたくて全力で飛ばして来たとかそういう訳ではなくてですねっなんというかあの……」
「あらあら、若いのねぇ」
わたわたと慌てる鈴を見て、美里はゆったりと喋ってる。
鈴はふぅ、と息を吐き長い金色の髪を前に垂らしながら俯いた。
「でも、棗は強くなってました。一対一じゃもう絶対勝てる確信は持てません」
「あら?なっちゃんと秋ちゃんの二人で迎え撃ったって話を聞いたけど?」
「はい。でも、棗単独に狐火が相殺されました。村雨も本物と同じだけの幻想を持っていましたし、前回会ったときよりまた強くなってました」
美里はまあ!といいながら胸の前で手を合わせた。
「なっちゃんも九尾のすずちゃんに強くなったって言われたら嬉しいでしょうね」
「いえいえ、あたしはまだ九尾に成りたてで、九尾の中では最下位ですし、それに棗はあたしにそんなこと言われても嬉しくないですよ」
最後の方は少し独白めいていた。
棗の成長を語るときには輝いていた目がまた光を失って自分の臍をじっと見ている。
「こっちに来たら棗と仲良くしようと思ってたのにいきなり突っ掛かっちゃうし、ちょっとなんか言われたら反発しちゃうし、失敗したのはあたしなのに棗にあたっちゃったし。たぶん嫌われたと思います」
そんな鈴の様子に美里はただ事実だけを伝えるように言った。
「なっちゃん朝は口ではあんなこと言ってたけど、すずちゃんに会えて嬉しそうだったわよ?いつもは朝はもう少し静かだもの。そんな簡単に嫌いになるようななら口をきかない、そういう子でしょなっちゃんは」
「そう……ですかね……?」
「そうよ。だから大丈夫」
「そうですよね!」
鈴の目に光が戻っていた。
気がゆるんだ拍子だろうか変化で隠していた尻尾がぴょんと、飛び出した。
「ふあっ! あぁもう」
突然のことで驚いたためか、元々鈴は変化が苦手であるためか、なかなか思うようにしまえず更に焦るという悪循環になってしまった。
「いいわよ。家の中なら外からは見えないし、実際は出したままでもちゃんと説明すれば問題ないんだから」
「すいません……」
しゅんとしてしまった鈴のために別の話題をふることにした。
「そういえばすずちゃんそんなになっちゃんのこと好きなのに、なんで式神になるの断ってるのかしら?」
「なっなっ棗が好き!? いっいえ棗はそういうんじゃなくて、えとー、そう!弟というか……」
必死にじたばたと腕を振り誤魔化そうとした鈴だったが、美里の『あらあら、そんな必死に誤魔化しちゃって、見てれば丸分かりなのにかわいーわぁ』という視線を見て観念したようだ。
その時綺麗な長い髪の小さな影は鈴の後ろでじっと金色の尻尾を見つめていた。
「ふぅ。あのそれはですね、あたしの五十分の一も生きてないのにこんな在り方ができるんだとかなってあげても良いかなぁ? とか思うんですが……その……棗とは式神としてじゃなくて……共にあるものとしてと言うか……つっつっ……ひゃっ!」
話を遮ったのは未耶だった。
我慢できなかったのだろうか、突然尻尾の中にも飛び込んだのだ。
「……もふもふ」
……鈴の尻尾はもっふもふだったらしい。
『あっそこはダメ!』など叫んでいる鈴などお構いなしだ。
全身で尻尾に包まり実に幸せそうな顔をしている。
「こ〜ら。すずちゃん悶えちゃってるからやめてあげましょう?」
と、美里が脇を掴んでやんわりと持ち上げる。
未耶は自分を持ち上げた美里の顔をじっと見上げて、そのあと他の方を見た。
その視線の先には、顔を紅潮させ、若干息が荒い鈴がいる。
未耶には、僅かながら頬が緩んでしまってるようにも見えた。
美里がぽんと床に降ろしてやると、さっと走りだし再び鈴にダイビングした。
だが
「再びくらうあたしではないわ!」
と言って一歩横にずれる。
当然空中にいた未耶は方向修正などきくはずもなく、放物線よろしく、地面と熱いキスをするのをかわす術は存在しなかった。
「……」
そのまましばらく動きを止めた。
鈴が『避けたのはまずかったかなぁ』と思い始めた頃、未耶はバッと立ち上がり再び鈴の後ろにまわりダイビングするタイミングを窺うのだった。
「ずいぶんとみっちゃんに好かれたのね。それもとそんなにすずちゃんの尻尾が琴線に触れたのかしら?」
「さぁ? どうしたんですかねっ!」
と、そういっている間にも未耶はダイビングし、床とキスをするのだった。