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無能な僕と嫌われ者の少女 (仮)  作者: 小雪
第1章.転入編
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3話.図書室にて

 僕はどうやら図書室という存在を見誤っていたようだ。

 工業高校では、工業系の本。

 製図やプログラミング、加工技術などの基礎が記された図書が本棚に所狭しと並んでいるのを覚えているが、本棚が宙に浮いているのは今まで二次元でしか見たことがない。

 魔法が出てくるアニメだと、本が宙を飛んでいるのは偶に見る。

 けど本棚が空中移動させる技術があるとは元工業高校生の僕は知らなかった。

 というかこの図書室はどれくらいの広さなんだ?

 大まかだけど高さもかなりあるから体育館並みの広さか……

 体育館並みの図書室ってもうそれ図書館だと思う。

星野ほしのさん……ここが図書室?」

「はい、ここが図書室です。ここには今は約二十万冊の本があるんですよ」

 二十万冊ってどんだけあるんだよ。

「それで坂本さかもとくんはどんな本を探しに来たんですか?」

「魔導士の一般常識を知ろうと思って来たんだけど……」

「それだったら魔導士基礎知識まどうしきそちしきのあたりに置いてありますよ」

 それよりも……

「本棚って普通浮いてましたっけ?」

「いえ、普段は浮いてませんよ。今はゴールデンウィーク中に終わらなかった本の整理をしているんだと思う」

 本の整理するときって本棚浮くんだ……

「そういえば星野ほしのさんは本を返しに来たんでしたっけ?何を借りたんですか?」

「星の王子様を借りたんだ」

「星の王子様?」

「うん、星の王子様。題名から星についてまとめてあると思って借りたんだけど内容がかなり違った」

「どんな内容何ですか?」

「えっと……作者が星の王子様に出会うおはなし」

「そうなんですか……」

 どんな内容なんだ?

 ザックリし過ぎてわからない。

坂本さかもとくん、とりあえずこの本を返してから魔導士基礎知識まどうしきそちしきの本棚に行っても良いですか?」

「はい」

「じゃあそこで待っててくださいね」

 この図書室の原理と本棚の位置が理解していない今、一人でウロウロするのは危ないだろう。

 というかこの図書室ってどうやって本を探すんだろう。

 空中に浮いてるから取り出せない本もあるだろう。

 もしかしてみんな空を飛べちゃったりする?

 いや、それはないはず……

 じゃあどうやって取るんだろう。

 もしかしてこの関東魔導士学校について調べた時に出てきた筋トレと関係しているのか?

 この学校は大体の人が日々筋トレとかをしているらしい。

 あ……まさか、いやありえない。

 だがワンチャンある!

 僕の考えはこうだ。

 学校の大体の人が筋トレをしている理由、それは図書室で本棚が宙に浮いている時に地震の脚力を利用して本を取るための行動だったのか!

坂本さかもとくん、本を返して来ましたよ」

星野ほしのさんって脚力どれくらいですか?」

「わたし?私はこれくらい」

 星野ほしのさんはその場で飛んで見せる。

 推定30センチ……

 あれ、30センチだと空中に浮いている本棚に届かない。

 じゃあ本の整理期間はどうやって本を取ってるんだ。

坂本さかもとくんは何を考えているの?もしかして私のスカートが宙に浮いている間に私のパンツを見ようとか考えてるの?」

「いえ、星野ほしのさんのパンツにはまったく興味はございません。安心してください」

「なんかそれはそれでガッカリなんだけど……私魅力ないのかなぁ……」

星野ほしのさんはスカートを触りながら言う。

人間性は他者からに見たら魅力的だと思うが……

「じゃあ何を考えてたの?」

「あの空中に浮いている本棚の本をどうやって取っているのかを考えていました」

「今の期間は普通にハシゴをかけて取るんだよ。ほら、あそこに貸し出し用のハシゴがおいてあるよ」

 そう言って彼女は指を指す。

 あ、ホントだ。

 ハシゴ使うのか……超脚力で華麗に取る想像をしていたから期待外れだ。

「とりあえず図書室の司書さんに魔導士基礎知識まどうしきそちしきを入口のそばに下ろしてもらえるように頼んでおいたから、多分そろそろ落ちてくる」

「落ちてくる?」

 僕が疑問に思っていると、上からドーン……僕たちの前に大きな本棚が重々しい音を立てて落ちて来た。

 ホントに……落ちて来た。

 というか上からドーンなんて落としたら真下にもし人が歩いて来たら人間がアルミ缶みたいにペシャンコになっちゃうんじゃないのこれ?

 大丈夫なの?

 安全性という観点に関してまったく安全だと思えないんだけど……

 それに普通に降って来た本棚に手を伸ばして本を取り出している星野ほしのさんもおかしいとは思わないの?

坂本さかもとくん。魔導士の一般知識は基本的にコレを読めば問題ないよ」

 そう言いながら星野ほしのさんは辞典のような厚みをした黒い一冊の本を取り出す。

『魔導士基礎知識 (上)』と書かれた本を僕に渡す。

 それにしても厚みエグいなぁ……

 さらに重いなぁ……

 というか魔導士基礎知識 (上)ってことは(下)もあるんじゃないの?

「それで全部ですか?」

「うん、全部。魔導士基礎知識を取得するにはコレだけじゃ全く足りないよ」

「そうなんですか?」

「うん、これは魔導士基礎知識の上巻だから下巻も必要だよ」

 全部じゃないじゃん。

 図書室って大体貸し出しは一週間だけど読み終われる自信がないんだけど。

「どっちの方が大切?」

「どっちも大切」

 そうですか……

「それにこれは一般知識だけど、法令とかは一部しか含まれてないからこの他にもう何冊か借りないと……」

 そう言って彼女は本棚からからさらに数冊の本を取り出す。

 どれもこれも厚みが辞典のようだ……

「それって全部一般常識ですか?」

「うん、魔導士を志す者は知っていて当然の内容ですよ。授業では今、主に法令をやっていますよ」

「そ、そうですか……」

 魔導士学校の授業は、工業高校の工業レポートよりもハードかもしれない。

 一回しかレポートは出したことないけど、すごい大変だった。

 情報の授業の担当の先生の考えで、C言語とswift言語を同時に教えてそれぞれの言語の利点を理解する……とかいう方針。

 Swift言語は他言語よりも理解しやすいらしく、それでプログラミングというものを理解してからC言語を使う予定らしい。

 それをすることによってC言語の理解力増加と言語ごとの利点を生かして今後活動できるとか?

 そしてその授業の終了時に……

「C言語とswift言語の利点をまとめたレポートを書いて来い」

 とか言って来やがった。

 超だるい。

 レポートに重要なことはそのレポートとしてまとめる題材に必要な情報を集めて自分なりにまとめ、考察を書くことだ。

 だからそれぞれの利点をまとめて考察を書こうとした。

 しかしそこには五十メートル級の壁がそびえ立っていた。

 考察というのは実験を自分なりに考えるのだが、自分の考えがありません。

 自分の考えもクソもないじゃん。

 Swift言語は二十世紀に入ってからできたものだけど、C言語なんて1970からあったんだから自分の考えなんて誰かと絶対に被るじゃん。

 そんな訳で自分なりに書いてみたが、結局再提出という結果を迎えた。

「ちなみに今回の魔導士基礎まどうしきその中間テストは法令の能力の使用に関してですよ」

 そういやちゃんと授業もあってテストもあるだっけ?この学校。

「そうなんだ……」

「他人事のように言ってるけど、坂本さかもとくん。この魔導士基礎で赤点を取り続けると単位が認められないんだよ」

「それ当たり前じゃないですか?」

「当たり前だけど、ここの学校厳しいから授業態度の悪い坂本くんは特に評価が悪くなっちゃうよ」

 僕そんなに態度悪かったかな……

 授業中に昼寝をすることの何が悪い。

 これは人間の生命維持活動において重要な行いだぞ。

「それで坂本さかもとくん」

「何ですか?」

「もし良かったら私がその…魔導士基礎を教えましょうか?」

星野ほしのさんがですか?」

「うん、その嫌だったら嫌って言ってもらって一向に構わないんだけど……」

 僕としても誘われて少し嬉しいけど問題は女子が来るか、否かだ。

「誰か誘うんですか?」

「誰も誘わないよ。坂本さかもとくんは人見知りなんでしょ?」

「はい……」

「だから私の部屋でワンツーマンで教えてあげるよ」

「ちょっと待て」

 それは出来ないだろ……

 関東魔導士学校は全寮制の学校だ。

 だからみんな寮生活をしているが、男子寮と女子寮は少し離れている。

 基本、男子が女子寮への侵入及び女子が男子寮への侵入は原則禁止されている。

 それを破ったら生徒指導室に連れてかれる。

「どうかしたの?」

「僕、男子なので女子寮には入れないのですが……」

「あ……忘れてた」

 星野ほしのさんは天然なのだろうか?

 真面目だが所々抜けている気がする。

「それに今日は僕、放課後部屋で荷物を整理しようと考えているのですが……」

「そ、そうだよね……今日、転校して来たから忙しいよね。ゴメンね、忙しいのに誘って……」

 星野ほしのさんはすごく申し訳なさそうに言う。

 なんかしょんぼりしているところが少し妹に似てる。

「けど誘ってもらえたのは嬉しいです。今度、時間があったら教えてもらえませんか?」

「うん、任せて!」

 星野ほしのさんは笑顔で返事をする。

 そういえば次の授業は魔導士実技まどうしじつぎだったはずだ。

 授業名から察するにおそらく能力を実際に使うのだろう。

星野ほしのさん、次の授業の魔導士実技は何をする授業なんですか?」

「魔導士実技は魔導士の能力を実際に発動して実践のために鍛えるんですよ」

 なるほど……じゃあ僕の能力が少し試せるのか。

 いや、自慢したいわけじゃないんだけどなんかこう…本当にこの力で人を救えるのか?って思うんだ。

 僕に本当に新宿全域を凍らせるほどの力があるのか?

 気になるんだよね。

 魔道士能力規定法によってAランク以上の能力は政府から指定された敷地以外での使用は禁じられている。

 だから試そうにも試せなかった。

「あ!」

 星野ほしのさんが急に大きな声を出す。

「ど、どうかしたんですか?」

「次、魔導士実技だから着替えないと!」

 確かに能力を行使するのに制服のまんまっていうのも少し危ない気がする。

 炎熱系能力者だったら制服が丸焦げだ。

「着替えるって体操服にですか?」

「いえ、体操服じゃなくてジャージです。体操服じゃ怪我しちゃいますよ」

 あ、もっと悪化してるや。

「魔導士実技ではジャージに着替えてグラウンドに移動ですよ」

「わかりました。色々ありがとうございました」

「はい、けど坂本さかもとくん更衣室の場所わかるんですか?」

「わかりません」

「じゃあ案内するので教室にジャージを取りに行きましょう」

「はい」

 僕は小さく返事をして魔導士基礎知識を本棚に戻すと星野ほしのさんと図書室を去ったのであった。

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