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無能な僕と嫌われ者の少女 (仮)  作者: 小雪
第1章.転入編
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2話.僕の能力

 人生とは平凡で落胆することが日常茶飯事にちじょうさはんじである。

 実際さっきも反抗してきて決闘沙汰けっとうざたになることを心のどこかで願っていた気がする。

 めんどくさいけど、少し氷の力を行使したいなぁ……って思っていた自分がいる。

 授業は常に暇。

 工業高校はなんか面白い奴とかが沢山いて授業中でも飽きはしなかった。

 けど関東魔導士学校には面白いやつとかふざける奴がいない。

 真面目まじめくんばっかりって感じかな。

 一応、魔導士の免許証を貰うためには人柄や態度が成績に大きく影響するらしい。

 僕の人柄と態度はクラスで一番最悪だろう。

 だがしかし、僕はさっき夢操作(ドリームコントロール)を目の当たりにしてしまった。

 だからいくら超自由人の僕でも警戒しなければならないと思った。

 だって夢を操られる上に他人に見せられるとか恐怖過ぎるんだけど……

 そうして過ごした二時間目から四時間目の授業が終わるまでの時間はまるで三年の歳月の流れをただ呆然と体験しているようだった。

 ことわざで表すのなら石の上に三年だな。

「やっとおわった〜」

 僕の昼食は喜菜香きなこお手製クルクルロール。

 食パンの耳を取った耳なしパンにジャムを塗ってくるくる巻いたパンである。

 調理方法はとても簡単で食べるのも簡単。

 しかし味は格別である。

 単純なジャムの味だがそれがまだ美味しい。

 これで喜菜香きなこの料理は夏休みまでお預けか……

 喜菜香きなこの方は一人暮らし大丈夫かな?

 そこが今、一番心配な点だ。

 妹を一人暮らしさせることになるとは全く考えてなかったから大丈夫かな?

 とりあえず今日の夜、喜菜香きなこに電話しようかな。

 僕はパンを食べながらふと考える。

坂本さかもとくん、君が食べているそのパンは何?」

 気づくと僕の席に寄りかかる女子生徒がいた。

 いつからそこにいたんだ!っと僕はどこからか現れた女子生徒の声に一瞬、恐怖と困惑を覚えたと同時に安心を覚えた。

 いや、僕は女性恐怖症だけど妹の喜菜香きなこと同じ感じの幼い女子 (幼女体型の人)の場合は謎の安心感がある。

 決してこの一文からロリコンとかシスコンとか変質者という発想に至るのはやめて頂きたい。

「何って妹のお手製弁当だけど……それがどうかした?」

「いや、美味しそうだなぁ……って思っただけだよ」

「そうですか……それで僕に何か用ですか?」

「いや、特に用事があるわけじゃないんだけど一緒にお弁当食べませんか?」

 別に断る理由も無いから良いか……

 あ、けど女子って集団になるから辞めといた方が良いか。

「あ、悪いけどこれから僕は図書室に行く予定があるから……そのすみません」

「そうなんですか?実は私も図書室に借りていた本を返しに行くんです。一緒に行っても良いですか?」

 なんて事だ。

 なんで行く予定があるんだよ!

「えっと……僕はそのアレだから」

「アレってなんですか?」

「アレなんだよアレ……そう人見知りだから僕」

「そうなんですか?じゃあ二人で行きましょう!」

 なんでや!

 何でそうなった?どうしてそうなった?

 僕の理解できる範疇を超えた反応をこの女子生徒はしてくる。

 というか僕はこの女子生徒の名前や性格もろもろ知らないんだけど……

「あの……君の名前は?」

「わたし?私は星野美香ほしのみかよろしくね、坂本さかもとくん」

「よろしくお願いします……星野ほしのさん」

「それじゃあ椅子持ってくるね」

 そう言って彼女は僕の席にお弁当を置いて周りの生徒に椅子を借りて良いか聞いていた。

 とりあえず今の会話で僕が理解できたことは彼女の名前と相当な物好きって事かな。

 だってこのクラスの男子生徒ほぼ全員に喧嘩を売った僕に対して「一緒に図書室に行こう!」って声かける人なんて物好きでしかない。

 いや、別に僕は特別かっこいいとか言うわけでもないよ。

 ほんと良くもなく悪くもない平均レベルだからそういう好意でって事はあまりないと思う。

 そんなラブコメじゃあるまいし、何か過去の出来事によって因果的な繋がりがあった!!的な展開は僕の日常に存在はしない。

 だって僕、コミ症だもん。

「椅子持って来たよ〜」

 星野ほしのさんは僕の隣に座るとお弁当箱の蓋をゆっくり開けて食べ始めた。

 お弁当はしっかりバランスの取れたから揚げ弁当だった。

 僕はふと何か未知なる物を感じて周りを見渡してみる。

 これが殺気というものなのか?

 周囲の男子生徒の視線はとても鋭かった。

 まるで男子生徒全員に拳銃を向けられているかのような緊張感を感じる。

 なに、星野ほしのさんってクラスのアイドル的な存在なのかな?

 それがクラスの男子全員を侮辱したやつと二人っきりで弁当食べやがって!とか思われてるのかな。

 僕としては女性恐怖症だから一緒にいたいとはあまり考えてないんだけどなぁ……

坂本さかもとくんって前まで工業高校だったんだよね」

「はい」

「工業高校って化学科とか機械科とかあるけど何かだったの?」

「情報科です」

「情報科?情報科って何をする科なの?」

「情報科は主に情報の整理やプログラミングとかです」

 確か僕の能力が覚醒しないで工業高校に在籍していれば今頃、対話ロボットを作っていたのかな。

「プログラミング出来るの!」

「いえ、プログラミングは出来ません。プログラミングの授業に入る前に編入という形で学校を去ってしまったのであまりわかりません」

「そうなんだ……じゃあパソコンとか機械とかには一応強いの?」

「一応、それなりには……」

「良いなぁ〜私、最近スマホ買ったんだけどね、操作がいまいち分からなくて困ってるんだ。今度、教えて!」

「べ、別に構いませんよ」

「やった!」

 …………………………う〜ん…

 僕には星野ほしのさんが一体何を考えて僕と昼食を取っているのか、僕には理解ができなかった。

「けど坂本さかもとくんって凄いよね」

「何がですか?」

「え、坂本くんの固有技能ユニークスキル。だってあの固有技能ユニークスキル神々の運命(ラグナロク)でしょ」

 なんで僕の固有技能ユニークスキル神々の運命(ラグナロク)って知ってるんだろう。

 そういえば一時間目の授業。

 僕の夢が黒板に映写されてたんだっけ?

 それじゃあ僕の能力とか性格とか大体理解されてしまっているのか……厄介だな。

 クラスメイトと戦闘になった場合、こいつがどんな人物でどんな戦法を使ってくるかバレちゃったんじゃない。

 そういう点も考えると夢操作(ドリームコントロール)って悪趣味な能力だこと……

「うん」

「良いなぁ……固有技能ユニークスキルをもう使えて……」

星野ほしのさんは使えないんですか?」

「うん、私はまだ固有技能ユニークスキルの域にまでまだ届いてないみたい」

 なんか悪いこと聞いた気がする。

 やはり魔導士に必要なある程度の一般常識を早く理解せねば……

「なんかすみません。僕は最近、能力に目覚めたのであまり深く能力について知識がないんですが、固有技能ユニークスキルって一人ひとつあるものじゃないんですか?」

「うん、一人にひとつ自分にしか使えない技能スキルそれが固有技能ユニークスキルだよ。それを取得するために自信の技能スキルを最大限に引き出せるようにならないと使えないんだよ。けど能力が目覚めてすぐに固有技能ユニークスキルが使えるなんて凄いね」

 星野ほしのさんは前屈みになりながら言う。

 なんか星野ほしのさんすごい興奮してるけどそんなに凄いのか、僕。

「そんなに凄いんですか?」

「うん、大体能力に目覚めた時はその能力の使い方で悩む人が沢山いるんだよ。私も最初すごい悩んだんだよ!」

星野ほしのさんの能力って何ですか?」

「私?私は星使いだよ」

「星使い?」

「そう、星使い。星使いは星を操って相手を攻撃したりするんだよ」

 星を操って攻撃する?

「具体的には隕石落としたり」

「い、隕石!」

「うん、隕石」

 僕よりも隕石そっちの方がヤバいんじゃないの……

「ほ、星野ほしのさん、隕石なんて落としたら地球がボコボコになっちゃいますよ」

「そんな大きなのじゃないよ。直径1メートルぐらいの岩だよ」

 十分でかい気がする……

「ちなみに坂本さかもとくんの能力は?」

 ヤバイ、言いたくない。

 けど能力を聞かれれば答えて、答え返されれば答えるのが当たり前であろう。

「言わなきゃダメですか?」

「え、言いたくないの?」

「ええ、まぁ……見た目と相反する能力名なので」

「見た目と相反する能力?そうヒント出されるとますます気になるよ。別に私は笑ったりしないから安心して」

「本当ですか?」

「本当!」

 星野ほしのさんはお箸を一度置く。

「本当の本当ですか?」

「本当の本当だよ!」

 星野ほしのさんはどうしてこんなに積極的なのだろうか?

 そこに僕は疑問を感じる。

「僕の能力は……」

「君の能力は……

「僕の能力は氷王ひょうおう王子プリンスです……」

氷王ひょうおう王子プリンス‼︎」

 星野ほしのさんがとても驚いた顔をしていた。

「どうかしたんですか?」

「それって氷の能力の中ですごく強い能力じゃん」

「は、はぁ……」

「属性系の能力には〇〇の王子プリンスっていう能力があって、その属性内ではすごい上位に位置するんだよ!」

 彼女の驚きから察するに僕の能力はどうやらかなり高位の能力らしい。

坂本さかもとくん何者?」

「何者って言われても最近まで一般人だった人」

 彼女によると〇〇の王子プリンスは属性能力の進化系的なものらしい。

 なんでも能力を相当熟練しないと進化しないとか……

 というか僕はここで初めて知った事なんだけど、能力は使用者の戦闘センスや個性で大きく変化するらしい。

 だからか?

 僕の能力測定検査をした白衣の人が驚いていたのは進化系の能力を既に会得していたからか?

 まぁ、強い能力であればどうでも良い。

 僕が願ったのは人を救うだけの力だ。

 それだけの力があれば僕は何も望まないつもり……

「さ、坂本さかもとくん!」

 星野ほしのさんが僕の肩をガッシリ掴む。

 僕の背中に悪寒が走る。

「何ですか?」

「どんな修行をしたの?」

「特に何も……ゴールデンウィークにそう判定されたので……」

「修行なしでその領域……坂本さかもとくんって何者?」

「普通の男子高校生です。とりあえず図書室行きませんか?まだ場所をあまり理解できていないので案内して頂けるとありがたいです」

「え、あ、うん。私に任せてください!」

 星野ほしのさんはお弁当箱を手提げにしまう。

 そして……

「それじゃあ早速行きましょう!」

 星野ほしのさんの性格はすごい明るい系の人なのかな。

 ゾワ……僕は全身に鳥肌が立つ感覚を覚えた。

 それと同時に僕の右手に柔らかくて温かいなにかに握られるような感覚を覚えた。

 僕は咄嗟に自分の右手を見る。

 白くて柔らかい手……これは星野ほしのさんの手?

 喜菜香きなこの手の感触となんら変わらない柔らかくて温かい手。

「まずは教室から出ます」

 星野ほしのさんは僕を思いっきり引っ張って僕を立たせる。

 そして僕は星野ほしのさんに手を握られ引っ張られる形で教室から出ることになった。

 ちょっと待て、これってよくあるラノベの主人公が周囲の男子からすごい恨まれるやつじゃない?

 これだから女子は嫌だ。

 けどどこか嬉しいと感じる自分がいた……

坂本さかもとくん、道をしっかり覚えてくださいね。教室出た廊下を右に行くとトイレがありますよ。その隣の階段を上がって右に曲がると図書室ですよ」

 なんかこうやって女子に案内されるのもあまり悪くない。

 あとは周りの鋭い視線さえなければ……

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