1話.僕が工業高校から関東魔導士学校に編入することになったわけ
『魔導士』。
自身の魂の本質を武装として顕現させ、魔力を用いて異能の力を操る千人に一人の特殊な存在。
古い時代から魔導士は『魔法使い』や『異能者』と呼ばれ、人々を魔物から守っていた。
彼らの力は現代科学では測りきれない力を持っており、最高クラスなら星一つを塵も残さず消し去り、最低クラスでも身体能力を常人の2倍以上にまで底上げできた。
未だに隠された力があるのかもしれないと国際魔導士連合が日々研究をしていると聞いたことがある。
人の力でありながら、人の身に余る力。
武道や化学兵器などでも対抗することができない超強力な力。
今では警察も軍隊もー戦争ですら、魔導士の力なくては成り立たない。
だが、大きな力を使用するにはそれ相応の責任が生じる。それが『一般魔導士法』である。
一般魔導士法とは、魔導士の力の行使に制限をかけるための法律。魔導士が力を行使するためには、国際機関の認可を受けた魔導士の専門学校を卒業した者にのみに『免許証』が与えられ、能力の使用を認めるいうものだ。
今日から通い始める『関東魔導士高等学校』もその免許証を取得するための、日本に八校ある『魔導士学校』の一つである。
『魔導師学校』では、魔導士たちが『学生魔導士』として『普通高校の勉強』+『魔導士としての力』の向上のために日々、切磋琢磨している。
「今日からみんなのクラスメイトになる編入生の坂本広輝くんです。坂本くん、自己紹介をお願いします」
担任の佐々木先生が笑顔で、僕に自己紹介を求める。
「はい……」
僕は自分の席から立ち上がり教卓に向かう。
クラスメイト全員の視線が僕に向く。
緊張と不安でとてつもなく胃が痛い。
特にこのクラス全体の静けさといい雰囲気といい居心地が悪い。
「工業高校から編入してきた坂本広輝です。一年間よろしくお願いします」
僕は笑顔で自己紹介をした。
やっと自己紹介が終わった……僕は解放された。
僕は教卓から自分の席に戻る。
これで後は今日の授業を適当に聞き流して、寮に戻って荷物を整理してお昼寝タイム!というとてもとても大事な予定が詰まっているのだ。
「坂本くん、自己紹介は?」
「はい、自己紹介ですか?今のが自己紹介です」
だって僕、紹介する要素がない。
クラスメイトは前後で小声で話しているところを見る限り困惑しているように見え
る。
「え、そうなの?けどもうちょっと紹介するところあるんじゃない?」
「ないです」
「いやあるよ。例えば、好きな動物とか好きな俳優さんとか」
20代前半の女性教師だからなのだろうか?
僕になぜ好きな動物や俳優さんを聞いてくる。
「好きな動物は猫です。そして俳優は興味がありません。これで良いですか?」
「ダメ!他にも自己紹介できるところあるでしょ。好きな女性のタイプとか」
自己紹介で好きな女性のタイプを聞いてくる先生なんてこの世でこの佐々木先生だけだろう。
「好きな女性のタイプですか?正直、三次元である時点で興味ないです」
「さ、三次元?」
「これで良いですか?」
「え……じゃあ自己紹介終了……これから英語の授業を始めます。じゃあ教科書の11ページ開いてください。この前はみんなで動名詞をやりましたね……って石井くん、寝ちゃダメ!みんな、昨日までゴールデンウィークの延長でダラダラしてたらダメですよ!」
僕は自分の机に着くと、とりあえず教科書を立てて伏せ寝の体勢に入る。
まぁ、誰もが先生の話を片耳にこの謎の転校生が作り出した状況に顔を合わせていた。
だって別に僕はこの学校に編入したくてしたわけじゃないし……
というのにも訳がある。
魔導士の才能があるからと言って、魔導士学校に強制入学ということはない。
しかし国から魔導士学校に入学や編入を要請……いや、強制されることがある。
魔道士能力規定法……それが僕をこの学校に強制編入させた法である。
魔道士能力規定法とは、魔導士の能力使用の規定や能力の評価基準などを記した法律。
その中にはこんな一文があるらしい。
『魔導士能力規定法の基準において、ランクA以上の能力者と判定を受けてから一週間以内に滞在している地方の魔導士学校に入学申請及び編入申請を行わなければならない』
魔導士の能力にはそれぞれランクがある。
上からS,A,B,C,D,E,Fって感じで……
僕の能力は単なる氷を操る能力。
大抵の人の能力ランクはCとかDランク、運が良ければBランクぐらいらしい……
魔導士の能力のランクによる格付けは魔導士の能力によって出来る『固有技能』が高く評価される。
固有技能とは、その本人にしか使えない技能とされているらしい……というのも先日起きた魔獣災害で覚醒した僕の魔導士としての固有技能がSランク魔導士の人と同じだったらしい。
『神々の運命』
それが僕の固有技能……氷を操る魔導士の中で最強とまで謳われている能力。
自身を中心に周囲を氷の世界へと変貌させる。そして徐々に周囲を氷の世界へと侵食していく。
その氷の強度はダイヤよりも硬く、熱ではほぼ溶けない。
これまで同じ固有技能を使用できる人は先祖代々の継承だったり双子だったりしたらしいが、何の接点もない僕とその人の固有技能が同一なのはありえないらしい。
今、魔導省が能力研究機関と協力してその原因を突き詰めようとしているらしい。
正直、なんでこんな事になってしまったのか?僕にもわからない。
まず言わせて頂こう。
僕は大のコミ症だ。
付け加えると、僕は妹の喜菜香以外の三次元の女性は恐怖の対象。
女性恐怖症ってやつ?
普通の小学生は一応大丈夫なんだけど中学生以上になると性格がキツくなったりするし……
同学年の可愛い女子に話しかけられただけで周りの男子から変な因縁つけられたりとか面倒くさいし……
そして何よりあの制服のワイシャツをピチピチにするまで膨れ上がっている胸……僕にとってはそれもすごい恐怖である。
何処かのラノベ主人公とかは抱きつかれたりすると胸が当たって喜んでたり「ご褒美!」と言わんばかりにテンション上がってたりするけど、僕にとってはそのデカイ胸が触れただけで鳥肌モノの恐怖に感じる。
なんか文句とか言ったら胸で思いっきり突き飛ばされたり、口と鼻を塞がれてそのまま窒息死でそのまま臨終だろう。
想像しただけで恐怖だ……
それもこれもトラウマとして残してくれちゃったのは親戚のアイツの仕業なんだが……やめよう。
今という一瞬の間に僕のトラウマゲートが半開きになった気がする。
いや、僕は全国の男子高校生に自信を持って告げてやろう。
貴様ら男子高校生が羨ましがっている女子の胸を触ったり揉んだりという行為が出来てもどうということはない!
所詮はただの肉塊に過ぎない。
つまりただの食べ過ぎによって大きくなってしまったようなものである。
そんなものに欲情する貴様らは人間ではない!
ただのカエルとほぼ同じ脳の構造をしている生き物だ。
じゃあ僕は欲情しないか?
当たり前だろ、恐怖症なんだから。
触ってみたいか?
ー否だ。そんなもの触れてしまった事を想像したくもなければ思い出したくもない。
ここだけの話だが、僕の場合は相手から迫られる!
だがな、貴様らは本当の女子の本性というものを知らないから羨ましいと思えるんだ。
こいつ何を贅沢なこと言ってるんだよ!とか思うなら勝手にしてくれ。
僕がアイツの大きな胸のせいで過去にいくつのトラウマが出来たと思ってるんだ。
まぁ、そんなこんなで女性……というか女子に関わられるとロクなことがない。
なぜ、工業高校の情報科に進学したって?情報系の会社に就職してゲーム製作するために決まってるだろ……っていう立派な理由もあるけど、大部分は女子と接したくないだけだけさ……
実際のところ工業高校には女子が一学年十五人ぐらい、クラスには三人ぐらいしかいない。
男子からしたらガッカリだろうけど、僕としてはそんなことどうでも良いことである。
むしろ好都合であった。
しかし今はどうだろう?顔を上げれば視界に必ず女子が映る。
僕にとってこれほど不愉快なことはない。
ユサユサ……僕の身体が横から温かい手に触れられて左右に揺さぶられ始めた。
誰だ!僕の眠りを邪魔する生命体は……
「坂本くん!起きてますか?起きてないなら起きてください!」
あ……この声は!あの若い担任の先生か?
推定年齢二十五歳ぐらいだから怒ってもあまり怖くなさそうだ。
スルーだな……
「あれ……もしかして本当に寝てたの?冗談で絡みに来たのに……坂本くん!『Don’t sleeping!』です。早く起きてください!」
……とりあえず寝たフリ。
中学生の時は大概の先生が無視してればそのうち授業を再開し始める。
それと同じできっとしばらくしたら去るだろう。
「編入初日のしかも一時間目の担任の先生の授業から寝るなんてありえない!」
佐々木先生がさらに揺さぶりを強くする。
しかしその程度のことされたところで僕は起きるつもりはサラサラない。
「坂本くん起きてください!起きてくれないと命の保証はできませんよ」
それは脅しか?
僕に脅しが通用するとでも思ったか!
「……………」
うん、スルーに限る。
佐々木先生が揺らすのをやめた。
よし、きっと諦めたな。
「では仕方がありませんね。私、しっかり忠告しましたからね」
佐々木先生が僕の頭に手をついたのだろうか?僕の頭に佐々木先生の手の温もりを感じる。
佐々木先生の手は僕の頭を優しく撫でていた。
まるで小さな子供の頭を撫でるかのように……
アッ………今、佐々木先生の手が一瞬すごい熱く感じた。
なんか上手く表現できないけど、神経細胞が高熱で一瞬だけ溶かされそうになったような感じがした。
何を今されたんだろう……
「坂本くん、早く起きないと永眠することになるので気をつけてくださいね」
佐々木先生がそういうと再び英語の授業が始まった。
僕は今、佐々木先生に何をされたんだろう……
しばらくそのまま伏せてると自然と睡魔がやって来る。
まぁ、特にさっきの佐々木先生の謎の忠告はなんでもなかった。
そういう結論に至ると僕の目蓋は自然と下に降りて行った。
「お…き……おき……おきて……起きて……」
僕は身体を揺さぶられて深き眠りから覚めた。
視界には僕に馬乗りになる妹、喜菜香の姿があった。
ここは……僕の部屋か?
あれ、僕は学校の英語の授業中眠たくなったから寝ていたはず……
そうか!僕はきっと疲れ果てて家に帰ってすぐに寝たのか?
いや、違う。
僕は昨日から寮で一人暮らしだ。
妹の喜菜香がいるはずがない……
「お兄ちゃん、起きて!」
「起きてるよ喜菜香」
「起きてるじゃないよ……もう何回起こしに来たと思ってるの?」
喜菜香は僕から降りるとふくれっ面をして見せた。
うん、可愛い……
「すみません」
「別に平日じゃなくて休日だったから良いけど、明日から向こうの学校でしょ……」
あれ……僕のさっきまで見ていたのは夢だったのか?
僕はふと自分のスマートフォンのロック画面を表示する。
5月5日8時半ってことは明日から関東魔道士学校での生活が始まるのか……
ということはさっきまで見ていた光景は予知夢的な何かか?
「お兄ちゃん、また寝ようとしてる!」
「すみません……」
「けど明日から通う魔導士になる学校……お兄ちゃん大丈夫なの?」
「大丈夫じゃない」
めっちゃ行きたくねぇ……今見た夢でもすんごい地獄だと理解した。
だって女子が視界に数十人はいたぞ。
女性恐怖症からしたら天変地異そのものだ……
「大丈夫じゃないってどうしたの?」
「いや、夢の中でその学校に通い始めた時の夢を見たんだよ」
「うん」
「そこで推定二十五歳独身の女性教師の英語の授業を受けるんだが、なんか起きないと永眠することになるかもよって謎の予告をされて目が覚めたんだよ」
「へぇ……それでクラスメイトはどんな感じだったの?」
どんなクラスメイトか?
「クラスメイトは……」
どんな感じだったかな……思い出そうと思考を回転させる。
ん……
「なんかみんなパッとしない感じだった。それに男子はみんな馬鹿そうだったな……まぁ、女子がいる時点で地獄そのものの景色なのはわかってるけど」
「なんで女子がいると地獄なの?」
「なんでって……」
これは違う。
僕は咄嗟に直感した。
何をかって?それは僕の目の前にいる喜菜香は本物ではないということをだ。
おかしい……
僕の妹の喜菜香には僕が女性恐怖症だってことは話して理解してもらっている。
だから僕がいる時に女子と家で遊ぶことを避けてくれている。
なのに理由を聞くか?
……それはない。
女性恐怖症っていう理由があるのになんで理由を問うのか?
それはこの喜菜香はニセモノだからだ。
僕の妹の喜菜香であれば……
「お兄ちゃんは女の人恐怖症なんだよね。だから喜菜香もお兄ちゃんが浮気しないってわかってるから安心して寮生活をさせてあげられるよ〜」
って笑顔で言うはずだ。
いや、言っていた。
そうだ、僕は今日の早朝に喜菜香からのお見送りを受けたんだ。
猫の着ぐるみパジャマを着ていた喜菜香。
関東魔導士学校から支給された制服を身に纏った僕。
僕の家の前には黒いスーツに身を纏った学校関係者が二人。
夜空は少しずつ白みがかってきていた。
「喜菜香はずっとお兄ちゃんの妹だから……だから……」
「喜菜香の言いたいことはわかってる。僕も自分のために……喜菜香のために……頑張ろうと思ってるよ」
「お兄ちゃん……」
「約束する。僕は喜菜香を守れるだけの力を得て、喜菜香の元に帰ってくるよ。そしてまた二人で暮らそう」
「うん、絶対だよ。絶対!」
喜菜香は別れ側になって泣いてしまった。
最後まで僕も泣くのを堪えていたが、僕もそれにつられて泣いてしまった。
それで指切りしたんだ。
約束を破ったらひとつなんでも言うことを聞く約束。
クソが……
「お前誰だよ!」
僕はその場で大きな声を上げる。
必要であればここで能力を発動するのもやぶさかではない。
いや、使う。
一瞬でも信じてしまった自分と目の前のニセ喜菜香に苛立ちが抑えられない。
「誰?誰って私は坂本広輝の妹、坂本喜菜香だよ」
「それ……」
「え?」
「それも違う。僕の妹の喜菜香は一人称は私じゃない。喜菜香の一人称は喜菜香だ」
「あ、そうだったね」
喜菜香は笑顔で反応を返してくる。
パキパキ……周囲から何かに亀裂が入るような音がする。
「あ、そうだったね?それで僕を止められると思ってるの?」
「お、お兄ちゃん……なんでそんなに怒ってるの?い、イメチェンだよ」
ニセ喜菜香が数歩後ろに下がる。
僕はベットから飛び降りてニセ喜菜香の前に堂々と立ち塞がる。
「喜菜香はそんなことしない。だって喜菜香は可愛くて性格もとても良いが、頑固なところは父親譲りで性格や仕草を絶対に変えない!」
僕の部屋に霜がかかり始める。
自身でもとてつもなく室内の温度が下がったのを感じる。
しかし何故だろう?
寒い場所や冷たい物……ドライアイスとかかな。
そういうのって触った時に肌に痛みや手足の感覚が無くなるはずだが、どういうことか不思議と感じない。
まぁ、良い……今は目の前にいるニセ喜菜香を一秒でも早く消さないと自身への苛立ちが抑えられない。
「覚悟は出来てるな、ニセモノ?」
「だ、だから私は喜菜香だよ」
まだ言うか……なら
「死んで償うと良い……自身の愚かさと浅はかな考えを………」
「ちょ……ちょっと待って!」
僕はその声も聞かず……渾身の一撃を目の前に向けて発動する。
「固有技能神々の運命‼︎」
バン!
僕は勢いよく椅子から立ち上がる。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
今の夢はなんだ……
クラスメイトは背後から椅子が勢いよく倒れる音に驚いている……わけでもなくそろそろ起きることをわかっているような反応をしている。
今の夢はクラスメイトの仕業なのか?
「やっと目を覚ましたね」
困惑している僕に佐々木先生が笑顔で話しかけてくる。
今のは佐々木先生の仕業なのか?
「困惑しているね……坂本くん」
「今のは佐々木先生がしたんですか?」
「ええ、私の能力夢操作。夢操作は相手の見ている夢を操作することのできる能力」
そんな能力があるのか……
「たまに私の授業で寝ている人の夢を黒板に写して操って遊んだりするからね……」
人の夢操る教師とか恐怖なんだけど……
「今のは君がクラスに馴染めるようにクラスメイトのことをどう思っているのか聞いてみたけど……パッとしなくて男子が馬鹿そう……」
あ、夢の中で躊躇なくんなことも言ってたなぁ……
「みんな……とりあえず今回の坂本くんの感想は聞き流してあげてね……」
まぁ、クラスメイトたちの顔を見ればわかるが、皆それ相応の理解をしたようだ。
ほとんどの生徒は僕の方を睨んでいた。
悪口を言った相手を嫌悪するのは当たり前だろう。
僕としても正直、クラスメイトと仲良くするつもりはなかったから別に良いが……
「さて授業時間は残り5分になっちゃったから早めに終了にします!次は確か……何だっけ?」
「先生、次は理科ですよ」
「そう、理科!理科は今日は物理室に移動だから教室の鍵をしっかり施錠して移動してください!」
「「「はい」」」
「では、日直号令!」
「起立!」
僕は倒れていた椅子を起こして机の下に入れる。
「礼!」
「「「ありがとうございました」」」
やっと一時間目が終わった。
佐々木先生の夢捜査のせいで一時間目がすごい長く感じた。
というか僕も少し能力について勉強しないとなぁ……
いや、今の出来事もそうだけどせっかく能力者になったのだから一般知識レベルまで知っておきたい。
とりあえず今日の昼休みは図書室にでも行くか。
あと三時間も授業があるのか……そう考えるとすごい苦痛だ。
それに次の時間は物理室に移動だっけ?
とりあえず移動か……
僕は机の中から理科の教科書とワーク、ノートを取り出す。
工業高校に通ってたからよくわからないけど、教科書の大きさが普通よりやけに大きい気がする。
「おい、転校生」
僕が教室の後ろの扉から出ようとすると誰かに呼び止められた。
振り返るとそこにはまぁ、よくラノベとかである出来事。
「俺らが馬鹿そうっていうのはどういうことだ?」
面倒いなぁ……
こういうのってラノベだと「俺と決闘しろ!」っていうお約束の展開がやってくる。
夢の中で馬鹿そうって言ったのは実際、馬鹿そうだったから謝れと言われても謝るつもりはない。
「正直に言ったまでだが……それがどうした?」
僕は堂々と言ってやる。
僕も喜菜香と同じで少し父親譲りの頑固なところがあるっていう自覚がある。
治そうとは思わないか?
治せなかったから良いかな……って感じ。
「……………」
相手は何も言わなかった。
というか堂々と言われたことでなんかどう理由つけて絡もうか考えてる感じか……
「それより僕に何か用?用がないなら移動授業だから移動したいんだけど……」
僕はそういうと彼からの対応を待たずして物理室へと向かった。
だってそこからまた面倒なことになるのは目に見えてるじゃん。
次回は来週の月曜日に投稿します。