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線が切れてしまった。

宇野は病院のベッドで寝ている。全身を包帯ぐるぐる巻きにされて。

「ひき逃げです。犯人はまだ捕まっていません。車は近くの公道に乗り捨てられていました。盗難車のようですね。誰かが車を盗んで宇野さんを故意にひこうとしたのか、それとも偶然なのか、現在捜査中です」

 目撃者によると、宇野は猛スピードで迫って来る車に気づき、俊敏に避けたのだという。避けた先はガードレールを越した崖だったけれど、幸運なことにその下はちょっとした森になっていて、木々と柔らかい地面がクッションになり、命に関わるような衝撃にならずにすんだ。

 左足と左腕、肋骨の骨折。

 頭はCT検査の結果、異状はないらしい。

 でも、宇野は目を覚まさない。

「ご家族がいらっしゃらないようで、着信の一番上にあったあなたに連絡させて頂きました。何か、宇野さんがトラブルを抱えていたという話を聞いたことがありますか?」

 警察官の問いに、私は首を振る。

「何も……。宇野さんは母の友人で、昔からお世話になっている人です。先月母が亡くなったので、気にかけてくださって……今日も久しぶりに会って、夕飯を御馳走してくれると言うので、待ち合わせをしていたんです。でも、こんなことになるなんて……」

 私が足元をふらつかせると、警察官は「ショックでしょう。もうお帰りくださって結構ですよ」と気遣ってくれた。

 医師に挨拶をして、病院を後にする。

 警察は、町の不良が車を盗んでスピードを上げて楽しんでいたところ、運悪く宇野が巻き込まれたか、宇野の仕事関係でなんらかの恨みを抱いている人間の仕業だと考えているようだ。

 でもそうじゃない。

 宇野が私に過去を喋るのを、よしとしない人間がいる。そう考えるのが一番自然な気がする。 

 一体誰が? 怪しいのはさっきの女だが、時間的に不可能だ。宇野が事故にあった時、あの女は私と一緒にいたのだから。

 『博士』という人物だろうか。一緒に東京に来ているのか。でもさっきの女の態度では、誰かとともに行動している雰囲気ではなかった。ばらばらに行動しているのか? それとも誰かを雇っているとか?

 昊を辿る、細い糸が切れてしまった。宇野の回復を待つしかないのはわかっているが、いつになるのか……。

 もう真っ暗な空を見上げて、家に帰ろうか迷う。宇野に付き添ってやりたいが、警察がもしものために病室に警護についていてくれると言っていたので、私なんかがいても役に立たないだろう。何かあれば連絡をくれるとも言ってくれていたし。

 朝からあちこち出歩いた上、いろいろなことが立て続けにおこったせいで、体が鉛のように重い。でもこのまま帰る気にはなれなかった。まだ何か、調べられることがないだろうか。まだどこかに糸口が……。

 母の部屋、産まれた病院。宇野。母の部屋にもう一度行って、何か発見出来るものがあるかもしれない。

「…………」

 母で無理なら、――父?

 ふと、そんな思いつきが脳裏をよぎる。

 私は父を知らない。けれど、見当をつけているひとはいる。それは業界での噂で、聞いたことがある程度だけれど。

 もう藁をも掴む思いだ。

 いつもなら絶対にこんな非常識なことはしない。でも変な興奮状態が、私を操っていた。 

 駅に駆け出した。


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