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やぁ、また家族回なんだ。
「桜ちゃんお帰りなさい。」
「ママただいま!!
お姉ちゃん達もただいま!」
「桜おかえり。」
「桜ちゃんお帰りなさ~い!」
「桜ちゃん、お部屋に鞄置いてリビングに来てちょうだい。」
「はぁ~い!!」
桜が自室に鞄を置き、リビングに翔以外の家族が揃った。
桜はいつもと雰囲気の違う母親の姉達の様子に不安を感じ、姉達の顔を交互に見つめていた。
娘達は母が話始めるのを黙って待っていたが、しびれを切らした茉莉が母に詰め寄る。
「それで、お母さん翔くんは大丈夫なのか?」
「えぇ、お母さんに病院から電話がかかって…」
「病院!?」
「えっ、お兄ちゃんどうしたの?」
「お母さん、翔くんは大丈夫だって…」
「みんな落ち着いて、どうやらクラクションに驚いて自転車ごと転んじゃったらしくてね。
幸い怪我は転んだ時にぶつけた所にたんこぶが出来ちゃった位だから…」
「精密検査とかは受けたの?
見た目が大したことなくても安心出来ないでしょ。」
「えぇ、精密検査の結果でも問題は無かったわ。」
大きな怪我もなく、精密検査も問題なかったのに母の表情は暗いのは何故だろう。
「じゃあ、なんでわざわざ私たちを集めてから話したのさ。」
「……翔ちゃんね……、記憶喪失になっちゃったの…」
「…えっ?」
「記憶喪失って、ここは何処~私は誰~って奴?」
「自分の名前以外はなにもわからないって言ってたわ。」
「じゃあ、お兄ちゃん私達の事忘れちゃったの!!」
「そう…なるわね…」
「そんな…」
中学生の桜にはあまりにもショックな出来事であったのか、今にも泣きそうな顔になってしまった。
「お医者さんが言うには、一時的な症状なのかわからないからしばらくは様子見ましょうって言ってたわ。」
「つまり、ずっと戻らない可能性もあるって事だろう…?」
「…その可能性もあると言っていたわ。」
母からのあまりにも衝撃的な報告を受けた姉妹は黙り込んでしまった。
「お母さんはね…、記憶が戻らなくても良いと思っているわ…」
「ママなにを言ってるの!?」
「そうよお母さん!」
「本気で言ってるの…」
母の発言にそれぞれの反応を示すが、どれも母を非難するように睨んでいた。
「確かに、翔は昔から僕達に無関心で何を考えてるかわからない子だったけど、それでも大切な家族じゃない!」
「そうよ、いくら何でも母親が言っていい事じゃないと思う。」
「ママ…、どうしてそんな事言うの…ぐすっ」
「あなた達は今の翔ちゃんに会ってないからそんな事を言えるのよ!
私だって悩まなかった訳じゃないわ!
でも、今の翔ちゃんは記憶を失う前の翔ちゃんとは違うの!」
突然の母の豹変ぶりに困惑する姉妹、そして普段からおとなしい母がここまで変わってしまう程の事なのだろうか…そう考え始めていた。
「わかったわ、今から翔ちゃんを呼んでくるから。
あなた達もさっきの話、考えてちょうだい…」
そう言い残しリビングから出ていく母
「お姉ちゃん達…どうするの…?」
「どうするって言われても、どうする來未姉さん。」
「どうするも何も、翔くんは大切な家族なんだから、私は記憶が戻る方法を探すべきだと思うわ。」
「そうだよね、その方がお兄ちゃんの為だもんね!」
次回、可愛い男の子なんかに負けない!!