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お母さんの車で自宅まで帰ってきた。
車に乗ってる最中に周りを観察していたが、男性は一度しか見かけなかった。
やたら人だかりが出来ている場所があったのでよく観察したら、男性が何人かのスーツ姿の女性を引き連れて歩いていた。
他にも、前の世界では女性が映っている様な広告は男性が写っていたり、車から流れてくるラジオも男性アイドルユニットの曲が多かった。
「(非常に居心地が悪い…)」
自宅は高級住宅街の一角にある三階建ての一軒家で、今は一階のリビングにお母さんと二人きりである。
「翔ちゃん、本当に何も覚えてないの?
お母さんのこともわからない?」
「ごめんなさい、自分の名前は分かるけどそれ以外は全く。」
「そう…」
お母さんの泣きそうな顔は実の母親ではなくともとても心が辛くなるものだった、転生させてくれた神には感謝していたがこんな美人なお母さんを泣かせた罪は重いぞ…
『なにか理不尽な理由で恨まれてる気がするんだけど、そもそも君が記憶喪失だなんて嘘をつk…』
奴は神でも邪神に違いない!
「覚えてないと思うけど…、私の名前は紗季って言うのよ。
あなたのお母さんです。」
あなたのお母さんですと言った紗季さんの笑顔はとても愛らしくかった。
「翔ちゃんにはお姉さんが二人と妹が一人いるのよ。
長女の來未と次女の茉莉に妹の桜ね。
お姉ちゃん達は突然出て行った翔ちゃんを探しに行ったんだけど、お母さん病院から電話があったから急いで向かってあんな事があったからすっかり見つかったって連絡するの忘れちゃってたの。
お姉ちゃん達にはさっき連絡を入れたからしばらくしたら帰ってくると思うわ。」
「あの、突然出て行ったって…」
「えぇ、いきなり自転車のカギを持ったと思ったらそのまま何も言わずに行っちゃって…。
急いで追いかけようとしたけど家を出た時にはもう何処にも見当たらなくて…、お姉ちゃん達に手分けして探すようにお願いして私も車で行きそうな場所をさがしたの。」
「(おいいいいい、神お前何やってるんだよ!)」
表情には出さないように努力したが、思わず心の中で絶叫してしまった。
『いやだって、この世界の僕とあの世界の君を同調させるのに必要な事だったんだからしょうがないじゃないか。』
そう言われたら何も言い返せないが、何も言わずに出ていく必要はないだろう。
「大丈夫? やっぱりまだ調子が悪いんじゃ…」
「いえ、少し疲れただけです…心配しないでください。」
「心配するわよ、あんな事があったばっかりなんだから!」
「ご、ごめんなさい。」
怒られてしまった。
「あっ、ごめんね怒ってないからね?
お姉ちゃん達が帰ってくるまで部屋で少し横になって休みましょうか。」
「そうします…」
「翔ちゃんのお部屋は三階だから一緒に行きましょうか。」
「はい。」
リビングから出て階段上がり三階まで来たが。
三階には、扉に翔ちゃん専用と書かれた風呂とトイレがあった。
そして、何も書いてない扉が俺の部屋なのだが…
「(机とベッドしか無いじゃないか…)」
広い部屋にも関わらず、部屋の中には机とベッドしか置いてなかった。
一応、クローゼットの中に衣装ケースがあったが服はそんなに入っていなかった。
「それじゃあ、お姉ちゃん達が帰ってきたら起こしに来るからゆっくり休んでてね。
何かあったらそこの内線電話で呼んでね。」
お母さんはそう言って降りて行った。
ベッドの横に電話の子機が置いてあるのを確認した後取り敢えず言われた通り寝ることにした、時間を潰そうにも本は机の上に置いてある新品同然の学校の教科書位しかなく、スマホも渡されてなかったようだ。
スマホが無いとは思ってなかったから、オタクでスマホ依存症の俺にはかなりの死活問題であった。
まだまだ家族回の予定です!