鞭と薬と躾と初めてと。
部屋に鞭を振るう音が響く…
それに合わせ女性の艶のある呻き声があがる。
しかし、いくら翔からしたら艶のある呻き声だとしても元の世界での男が男のあえぎ声を聞くのと同じ、この世界の女性からしたら汚ならしい声に分類されるものである。
だが、翔からしたら裸の美女の呻き声をあげる様子などそれだけで記憶のお気に入りフォルダに入れる程の物だ。
たとえそれが…
鞭の素振りで良い音を出そうとして振る度に一人で(おそらく)興奮してあげている物だとしてもだ。
「(一度は鞭を振ってみたかったけど…鞭で人を…女性を叩きたいとは思わないんだけどなぁ…。)」
二人が出て行ってから大量に用意された躾用の道具という体の拷問器具を前に呆然としていたが、現実逃避か「(そういえば、鞭って振ってみたかったんだよねぇ~)」とひたすら鞭を振るい続けているのだ。
しかし、ひたすら鞭を振るうのにも飽きてしまった…。
先ほどの変わったガスマスクを使ってみるのも面白いかもしれないが…、用意されている物は全てある意味“取り扱い危険物”ばかりなので使うのを躊躇われるが…。
それ以外に使えるとしたらあの“缶詰め”のガスだが…
「…いや、これでも良いのか?」
首にかけられたタオルを手に取る、鞭を降り続けた時の汗を吸って若干湿っている。
先ほどまで芸術品の様な身体に鞭を打ってみたいという衝動が小さく疼いていたのが、鞭を打つのに比べてこの程度なら問題無いだろうという考えに変わる。
説明された通りに先ほど缶を入れた所に汗を吸ったタオルを入れて機械を動かす。
先ほどより短い時間で汗の臭いを抽出したボンベとタオルの残骸が出来上がった。
「それじゃあ、黛さん…暴れないでくださいね?」
「んん~!」
おそらくあの缶の臭いを嗅がされると思ったのか必死に首を振って拒否の意思を示してくる、だがソレを無視して何とかガスマスクを被せようと試みるが…。
「ちょっと黛さん、そんなに暴れるとつけられないでしょっと!」
黛さんの胸部にある普段よりも固くなっている突起を軽く弾き、黛さんの動きが止まった一瞬を狙ってガスマスクを着ける。
「ん~、んん!」
ガスマスクの中からぐぐもった声を上げるが、それよりもコレを嗅がせたらどんな反応をするのかが楽しみすぎて無視をした。
「ほらほら、黛さん…さっきのくさ~い缶のですよぉ?
こんなの感度が上がってる時に嗅がされたらどうなっちゃうんですかねぇ?」
明らかに先ほど機械を動かしていた音を聞いていたハズだが黛さんの顔色はみるみる青くなっていく、そんな様子をドッキリを仕掛けている側の気持ちで隠しきれない笑みをこぼしながらボンベを取り付けた。
「んん!
んっ、んんんん!!」
ガスがガスマスクの中を満たしす、強烈な悪臭に襲われるのだと覚悟した瞬間。
黛の鼻から脳へ、そして全身へと全く予想もしなかった衝撃が走り抜けた。
まるで即効性の強力な媚薬を嗅いでいるのではないかと思うほどの刺激、そしてこれ以上は吸っては危険だと頭では理解しているのに身体はその意思に反するかの様に深く深く呼吸を繰り返してしまう。
呼吸をする度に鼻を喉を肺を…まるで愛撫されているかの様な甘く溶けてしまいそうな快感を感じていた、そして呼吸を数回した時に微かに残って“しまっていた”理性がこの匂いを嗅いだことのある薫りだと黛に気がつかせてしまった。
そう、数時間前にほんの少しだけ楽しめた…目の前でイタズラが成功したような無邪気な笑顔を浮かべている主人の匂いだと気がついてしまった。
その結果…
フシャァァァ
部屋のなかにシャワーを流しているかの様な水音が鳴った。
「まじか…。」
水音を鳴らしている本人は完全に白目を剥いた状態で身体をビクビクと痙攣させている。
「って、黛さん大丈夫ですか!?」
未だに身体を痙攣させている黛さんからガスマスクを引き剥がす、ガスマスクに隠されていた口はあまりの快感に笑みを浮かべた状態でひくひくと痙攣をした状態でだらだらと唾液を垂れ流していた。
予想以上の反応に困惑しながらも自分の中に新たな感情がふつふつと沸きだしていた、目の前の女性を犯したい。
それを自覚した為か、今まで沈黙を保っていた息子が…
目覚めた。
ズボンの中で急速に固くなり始めた息子はまるで早く俺を解き放てと訴えているかの様にズボンに圧迫される痛みを伝えてくる、そして血が息子に行ってしまった影響なのか軽い貧血の様に頭が働かず意識がぼーっとする。
「そう…これは躾に必要な事だから…、どっちが上の立場なのか理解させる為に必要な事だから…。」
そう自分に言い聞かせるように呟きながら自身のズボンに手をかけ、ベルトを緩めようとしたその時。
コンコン
突然部屋のドアがノックされた、その瞬間にまるで心臓が電気ショックを受けたかの様に跳び跳ね心拍数が一気に上昇した。
コンコン
再びドアがノックされる、今の気分はいざ自身の部屋で自家発電をしようとした時にドアをノックされる、もしくは知り合いから電話がかかってきたかの様な状態だ。
先程までは臨戦態勢だった息子も突然の訪問者にまるで借りてきた猫の様に大人しくなってしまった。
気持ちを落ち着かせながらドアへと向かい、息を整えてからドアを開けると。
「失礼します、連絡いただきました制裁代行のネメシスです。」
「えっ?」
突然見知らぬ女性が二人部屋に入ってきた、と言うか…見知らぬと言うよりも。
顔を下半分がガスマスクで上半分が仮面のような物で隠している為に顔を見ることが出来ない…。
「そちらの女性が対象者でしょうか?」
しかし、ガスマスクで声がこもっているが。
「いやいや!
そんな格好で、なにやってるんですか廿楽さん。
それに、そっちは弘原海さんですよね。」
背丈や特徴的な髪の色も一致している状態で、なぜ顔を隠しただけでバレないと思ったのだろうか…。
「何をおっしゃっているのですか?」
しかし、廿楽さんはまだ認めようとはしないらしい。
「とぼけたって無駄ですよ、部屋の外で待ってるって言ったのはその格好に着替える為だったんですね!
それに、外を確認すればそんな嘘は…」
「んっ?
翔さまどうかされましたか?」
居た。
廿楽さんも弘原海さんもドアの前に居るじゃないか。
「…、あ~いや…えぇ…?」
部屋の中には確かに廿楽さんと弘原海さんに似た二人が居る、しかし部屋の外には本人がちゃんと待機している。
「翔さま、いつの間にネメシスなんて呼んだんですか?」
「名前だけは知ってたが、アイツ等ってイージス専属の企業だろよくイージスに認定されてから1日しか経ってないのに呼べたな?」
「えっ、呼んだ覚え・・・」
「ん、どうしました?」
「『いや、何でもないよ。
ネメシスは同じイージスの片喰君にお願いして呼んでもらったんだよ、相談しなくてゴメンね。』」
「そうだったんですか、流石は翔さま既にイージスクラスのご友人がいらっしゃるなんて!」
「・・・ん?
えっあぁ、うんそうなんだよ。」
今…何を言ったんだ?
まぁ良いか、“きっとそれ程重要な事じゃないハズだ。”
若干の違和感を感じながら部屋に戻るとネメシスの二人が黛さんの拘束を解き床に寝かせている、依頼人が居なくとも制裁とやらの準備を進めていたようだ。
「えっ、あのまだ制裁とか何やるかの説明聞いてない…」
状況についていけず呆然としている俺をしり目に、廿楽さんに似た女性がバッグから何故か電動ドライバーとワカサギを釣るとき氷に穴を空けるドリルに似たおそらくシリコンで出来たドリルを取り出した、すでに何に使うつもりなのか何となく予想出来てしまう。
そして、弘原海さんに似た女性に何故か生クリームと漏斗を手渡すと、仰向けになった黛さんの両足を頭側から持ち上げてお尻が天井を向く様な…簡単に言うとまんぐり返しの格好にした。
「まさか…」
もはや呻き声をあげるだけで抵抗らしい抵抗を見せない黛さんの様子を確認すると、おもむろに弘原海さんに似た女性は受け取った漏斗を黛さんに…
※※※
『さぁ突然だけど、ここで生クリームを泡立てる時に注意するポイントの話をしよう!』
「突然なにを言い出すんですか、ついに性格だけでなく精神がイカれましたかこの柱。」
『だまらっしゃい、まずは!
泡立てる前に生クリームをしっかり冷やすだけではなく、泡立てるのに使うボウルや泡立て機などの調理道具もしっかり冷やしておこうね!
間違っても人肌程に温めたり、体を使って泡立てようなんてしちゃダメだぞぅ!』
「ご自身の体験談ですね、『閃いた、口のなかで生クリームを泡だたせれば楽にホイップクリームを楽しめるぞ!』とかアホな事やってましたもんね。」
『さらに、泡立てた生クリームを移すボウルもよく冷やしておくのもおすすめだぞ!
油分や水滴など、余分なものが混ざると泡立ちにくくなるから、道具の汚れや水気はしっかり拭き取るように!
よく泡立てるコツは、泡立てる際にボウルを少し傾け、空気を含ませるように混ぜること!
泡立て機を少し大き目に回して、十分に空気を入れよう。
生クリームを泡立てる際は、温度管理が非常に大切。温度が少しでも上がってしまったり、はじめから温度設定が高すぎたりする場合などは生クリームを上手に泡立てることができず、分離しちゃうんだ。
つまり、何が言いたいかと言うと…冷たいどころかどんどん熱が上がっていく所で、かき混ぜる度に水分が溢れだしてくるということは…』
※※※
目の前にはボウルとして使われた黛さんから分離してしまっている生クリームが太ももをつたってだらだらと流れ落ちている…。
『分離した生クリームってバターとして使えるらしいよ?』
このタイミングでなんという悪意のある豆知識だろうか…、前の世界では金を払ってでも欲しがりそうな方が居るだろうが…残念というか幸いというか、そういった特殊な性癖には目覚めていないし目覚める予定も一切無い。
…無いかなら?
はい、ご無沙汰してます。
いやぁ、これならR15で大丈夫な内容ですよね?
面白かったと感じた方がいらっしゃればポイント、感想よろしくお願いします!