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お待たせしました!
待ってなくともお待たせしました!
「何処に行ってたの、心配したのよ翔ちゃん!」
到着と同時にお母さんに抱き締められる、というか走ってきた勢いのまま抱き締められた…若干首が痛い。
「白羽様…こちら側の不手際で翔様を危険な目に合わせてしまい、本当に申し訳ございませんでした。」
校長先生が深々と頭を下げてきた、俺が勝手に離れて騒動を起こしたはずなのに何故か学校側が悪い事になっている。
「翔様に対して心身的恐怖を与えた生徒達は全員退学処分とさせていただきます、他に何かお詫び出来る事がありましたら仰ってください。」
異常だとしか思えない対応、あの優しいお母さんも当たり前だと言わんばかりに頷いている。
「ちょっ、ちょっと待ってください。
全員退学処分は重すぎる罰だと思うんですけど!
たかが俺を追いかけただけでそこまでの罰はおかしいですよ!!
(まぁ、木の上まで追い詰められたけど…)」
「とんでもない、男性…しかもイージスクラスの翔様に恐怖心を与えたのはとんでもない罪なのですよ。」
校長先生の口からイージスクラスの言葉が出ると、俺が擁護さした事で少しだけ明るくなった女子達の顔から一気に明るさが消え瞳からは生気が消えていった。
「お母さんごめんなさい…、先立つ私を許してください…」
「こんなハズじゃなかったのに、私の素敵な人生設計ががが。」
「いやぁ!!
処女のままで一生寂しく生きるのはいやぁ!」
「~~~~~~!!(声にならない叫び)」
胃がキリキリと痛む、被害者は俺かもしれないが追われる原因を作ったのも俺だ。
つまり、俺の自作自演で彼女達の人生をぶち壊そうとしているのだ。
「お母さん、彼女達を許してあげて。」
そんな不条理を許すことなど出来ない、その場に居る全員が信じられない物を見る様な目で見詰めてくる。
「翔ちゃん何を言ってるの?」
「お母さん、こんなの間違ってるよ。
俺がお母さんから離れたのが原因なのに、彼女達だけ罰を受けるなんて間違ってる!!」
「翔ちゃん…」
「お願いします校長先生!
俺…俺が出来る事なら何でもしますから!!」
「「「「「んっ?」」」」」
周りの空気が凍りつく、情に訴える方法で何とかしようと思ったのだが…またやってしまった雰囲気だ。
「いっいま何でもって…」
「翔ちゃん!!
男の子がそんな事簡単に言っちゃダメ!」
自分の発言を思い出す、完全に薄い本の導入のような発言をしていた。
「ゴホンッ、白羽様がそこまでおっしゃるのでしたら特例として今回の件は無かったものとし、彼女達の処分もなしということで…」
「ちょっと、待ってください。」
「何ですか黛さん?」
「白羽さんの優しさには大変感激したのですが、保護官として今回の騒動はアテナへの報告する義務がありますので、学校側が生徒達に罰則をあたえないとしても政府から学校に指導が入るのは避けられません。」
まさか、味方だと思っていた保護官から待ったがかかるとは思っていなかった。
「それは…、どうしても報告しないとダメなんですか…。」
「そうですね、もし今回の報告をしなかった事が発覚した場合…確実に私たち三人は確実に保護官としての職を失い、保護官としての信用も失いますね。」
「そんな…」
「ですが…、もしも白羽さんが私たち三人を個人的に雇っていただけるなら…、アテナへの報告義務もなくなりますねぇ…」
黛さんが妖艶な笑みを浮かべながら見つめてくる、これは脅されているのだろうか。
今回に事を黙っていてほしければ私たちを雇えと…、初めから雇うつもりだったから問題ないのと思える。
「別に良いですよ?」
「翔ちゃん、個人的に雇うって意味わかってる?」
お母さんが引き攣った笑顔で聞いてくる、個人的に雇うのは問題があるのだろうか。
「何か問題があるの?」
「いい翔ちゃん、個人的に雇うっていうのは長年雇って信用を得た保護管と結婚するって事よ。」
想像以上に問題があった。
「そうなんだ…、さすがに今日会ったばっかりで結婚ていうのはなぁ…」
「いえ、さすがにそこまでの要求はしません。
本当に個人的に雇っていただければいいです、結婚は…まぁ白羽さんが認めてくださったらお願いします。」
「まぁ、それならいいでしょお母さん。」
「はぁ…翔ちゃんがこんなに頑固だったとは思わなかったわ…、翔ちゃんがそれでいいと思うなら止めないわ。
「じゃあ、そういう事でこれからよろしくお願いしますね、黛さん弘原海さん廿楽さん。」
黛さん以外の二人が何か言いたそうな微妙な表情をしていたが、これ以上に問題ごとは勘弁してほしい為気が付かないふりをしておくことにした。
その後、女子達は一人一人俺にお礼と自己アピールをしていった、何人かは前の俺を知っている子が居た。
学校案内は結局、保護官の三人も加わり左右前後囲まれた状態で進んでいた。