2.神からのお願い。
今回会話ばっかりです。
『そうだねぇ~、貞操観念逆転世界だねぇ。』
俺の目の前に血まみれへらへらと気味が悪い笑みを浮かべた自分が立っている…
「うっ…(顔以外が…酷い…ぎりぎり人の形を保ってるが…とても笑っていられる様な状態には見えないぞ…)」
俺が顔をしかめながら吐き気に耐えていると、血まみれの俺?はこちらの様子を気にする事なく話始めた。
『あぁ、君だけどね、後ろから来たトラックに轢かれたんだよ。
もうグッシャ~ンって、いや…ドンッグチャグチャア!って感じかな?
まぁ、どっちでも良いか…良いよね!
それにしても可愛そうだよねぇ~、彼女も居ないし子供もつくる前に死んじゃったんだもん(ぶふぅwww)
そんな君を不憫に思った僕がこうしてわざわざ君に新しい命と君の望んでいた世界をプレゼントしてあげたって訳!
どうかな、嬉しい?嬉しいよね!嬉しくないわけないよね!』
目の前の肉塊が何か言っている、自分の顔とは思えない歪んだ笑顔をしながら無性に殴りたくなるような話をペラペラと話している。
「(意味が分からない、コイツはさっきから何を言っているんだ…
それよりも目の前にこんなグロテスクなモノが居るってのに、俺は最初は吐きそうになっただけで今は平然としていられるんだ…。)」
『あぁ、この体?
本当は顔もぐっちゃぐちゃのべっちょべちょで何が何だかわからない状態だったんだけどね、そのままじゃ流石に自分の身体だったとしても流石に君だってわからないでしょ?
だから、顔だけでも元の状態に整えてあげたんだよ~感謝したまえ♪』
目の前の肉塊がおそらく胸だった場所を張りながらどや顔をしているが、俺はそれよりももっと重要な事に気がいっていた。
「(俺の考えてる事を読まれているのか?)」
『その位わかるよ、当り前じゃんだって神様だもん。』
先ほどまでどや顔していた顔が今度は何か残念な物を見るような表情になていた。
「(コイツは何を言っているんだ、神様…どう見ても化物じゃねぇか。)」
『化物とは失礼な奴だなぁ~、化物じゃなく神様だよ!
それにこんなタイミングで出てくるのなんて女神か神様なのがお約束でしょ、まったく…このくらい察してもらわないと困るよ?
それでも君はオタクなの?
君が読んでた色々な小説でも神様に転生させてもらう話ってあるでしょ、だったらもっと柔軟に対応してもらわなきゃ…困るよ?』
確かに今までそういう小説などは好んで読んできたが…、そういうのに出てくる神様は人のぐちゃぐちゃになったグロテスクな死体で本人の目の前に現れたりする奴は居なかった。
それに、普通は美しい女神さまが出てくるのかお約束だと思う。
『まぁ、最近まで使ってた体は君にあげちゃったし。
神様の本当の姿なんて人間に簡単に見せるわけないじゃん。』
「(コイツ…)
はぁ…、それでそんな慈悲深い神様がなんでこんな平凡な日本人の俺を異世界に転生させてくれたんだ?」
『お、やっと喋ってくれたね読心も楽じゃないんだから最初から喋ってくれれば良いのに~。
それで、君を異世界に転生させてあげた理由だっけ?
そんなに難しい事じゃないよ、ちょ~っと僕の代わりに神への信仰を集めてほしんだよね~。』
「はっ、信仰集め?」
信仰とはいあいあ的な信仰だろうか。
『いやね、この世界ではちょっと最近になって神への信仰が少なくなってきてて困るんだよ。
だから僕が地上に降りて僕という存在に対する信仰を集めようと思ったんだよ、思い付いた時は名案だと思ったんだけどね~。
だけど実際は思ったより人間って面倒くさいね~、何を勘違いしたのか神たる僕と自分達が同等と勘違いして欲情丸出しで近寄ってくるし。
正直言って、そんな汚ならしい視線に晒された体なんて気色悪いから放棄しようと思ってたんだよ。』
コイツ…おそらく俺の魂?が入っている身体を汚ならしいとか言ったぞ、まるで汚された服を自分は汚ないと思うから捨てるつもりだけどまだ着れるから着てみなよ!位の考えなのだろうか。
「じゃあ、さっさと放棄すれば良かったじゃないか。」
『そのつもりだったんだけどね、そんな時に運悪く君が死んじゃったみたいだからね!(くすくす
前から何度も異世界転生をさせてくれ~させてくれ~って祈ってたじゃん。
だから、君も得して僕も得する方法を思いついたんだ。』
言い方はともかく、一見するととても魅力的な提案だが。
しかしコイツが全く信用できない。
「そんなの俺以外にも掃いて捨てるほど何処にでも居るだろ…、それで具体的に信仰集めって…なのをすれば良いのかわかんねぇぞ。
はっきり言って宗教とかもっとわからないぞ、興味もなかったしな。」
『うっそ…えっマジで?
毎晩あれだけ熱心に祈りを上げてたのに…、でも大丈夫さ~そんな面倒な事をする必要はないからね!
簡単に言えば君に対する好意がそのまま神への信仰扱いになるから。』
好意がそのまま信仰になるって、貞操逆転世界だったら俺に頼らなくても男ってだけで簡単に集められそうじゃないか。
「貞操逆転世界で男なのになんでそんな簡単な事が出来ないんだよ、お前って一応は神様なんだろ?」
『だ~か~ら~さっきも言ったでしょ、神に対する態度じゃない人間ばっかりだったんだと!
とにかく、こっちも信仰を集めてくれるなら色々サポートしてあげるからさ、ねっ良いだろう?
ちなみに、神からのお願いだから君には最初から拒否権はない♪』
グロ肉と化したかつての自分が目の前でぶりっ子の様な声をあげつつ、くねくねと媚を売るように動く姿はもはやグロテスクを通り越して出来の悪いホラーゲームのキャラクターの様に感じてきた。
「神だったとしても思い切り殴りてぇ…、そんで神様からのサポートって具体的に何をしてくれるのさ?」
『何って、そりゃ神様の祝福だよ?
そんなの、なんでも出来るに決まってるじゃないか。
あっ、なんでも出来ると言っても君の願いを叶えるって感じじゃなくて、君が何でも出来る様になるって事ね。』
「いまいち分かりにくなぁ、もうちょっと簡単に分かりやすく説明してくれよ…。」
『ん~とねぇ…こう…ゲームとかによくあるチート的な…、違うな…主人公の能力をシステム側から自由に調整出来る感じ…かな。』
「なんか説明が一気にオタク寄りに…、でもなんとなくはわかった。」
『じゃあ、これからよろしくね。
心のなかで祈りを捧げれば僕といつでもお話し出来るから、祝福が欲しい時はいつでも祈りを捧げてくれて良いからね!』
「わかった、せいぜい二度目の人生を楽しませてもらうよ。」
『あっそうそう、最後に言い忘れてたけど、さっきからずっとこの肉塊を見てるけどさ。
別に精神の摩耗が防がれてるって訳じゃなくて、僕の力で一時的にせき止めてるだけだから、この後一気に精神が削られると思うけど…ごめんね☆』
コテンと首を傾げて神的にはかわいこぶっているつもりだろうが、どう見ても首から頭が千切れ落ちそうになっている様にしか見えない…、と言うかかなり重要な事を最後にさらっと伝えられたのだが。
「はぁ?何でそんななんの解決にもならないような事してるん?
そこはホラ、神の祝福で何とかする場面でしょ、その為の祝福じゃないの!?」
『ははは、君にその器を渡しちゃったからさぁ!
今までそっちに信仰の力を集めてたからさ~、器から器へと力を流せないから、精神保護をする程度の力も残ってない訳!
大丈夫だってちょ~っとだけ気絶する程度だから、それじゃ頑張ってね!』
「ちょっまっ!」
そんな軽いノリで気絶させられてたまるか!と文句をいう暇もなく、目の前から肉塊が消え去ると同時に叫びたくなるような恐怖や悲しみなどの負の感情に襲われ…俺の意識は闇に包まれた。
神の状態は高速道路を走っている時にフロントガラスに張り付いた虫みたいな状態に顔だけは無傷の人間バージョンだと思ってください。
2017/12/7
タイトルとストーリーを大幅に変更しました。