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先ほどとは違う番号から電話がかかってくる、予想は出来たがもしも違った場合はマズイので渋々電話に出る。
『酷いじゃないか、せっかく僕が名乗って挨拶までしたのに切るなんて!!』
「いやぁ、なんか電波が悪いみたいでね。」
『ははは、開発者の僕には通じない嘘だね!』
「イヤミだよ。」
『何故だい?僕は君に嫌われるような事は"まだ"してないじゃないか!!』
数分しか会話してないはずなのに既に嫌気が差していた。
同じイージスクラスの男がこんな奴ばかりかもしれないという可能性が頭を痛くする。
そして、俺もその枠に当てはめられるという事から目を背けたくなる。
「(というか、神の目って…)」
『僕とは関係ないからね!』
神とは関係はないらしい…、関係ないのにコレかぁ。
「なぁ、今日は疲れたから明日じゃダメなの…?」
『良いよ~。』
まさかの快諾。
『別に用事がある訳じゃないし、今日は挨拶のつもりだったし!!
しかし、明日も連絡して良いなんてやさし~、しししし!!』
失言だった。
「なんでも良いから、もう切っても良いかな。」
『あぁちょっとまって、君は本当に世間知らずみたいだから特別に、特別にだよ~?
僕が管理している神の目の特別権限あげちゃうよ、ひゅー僕って太っ腹ぁ~!』
「はいはいどうもどうも(棒」
『反応悪いなぁ…、とりあえずそのスマホで神の目にアクセスすれば自動的に権限の認証はしてくれるから!』
そういって片喰は電話を切った、言いたいことだけ言ったから満足したのだろうか。
なんだかドッと疲れた気がする、このまま寝てしまうのも良いが、まだお風呂に入ってない。
クローゼットから着替えのパンツとシャツを取り出して一階のお風呂場に向かう。
洗面所に置かれた洗濯物入れに着ている服を投げ込んでいく。
ふと、洗面所にあった鏡に写った姿が目に入る。
雪のように白い髪と肌、少女のように細い手足。
胸や腰も骨が浮いてないが撫でると骨の硬さがわかる程度の肉しか付いていない。
だからといって、虚弱そうには見えない。
やはり、神の器だからか美術品の美しさに近いものを感じる。
一人洗面所でパンツ1枚の状態で鏡の前で自分の身体を熱心に見つめているのはとても怪しかった。
腕を上げると脇腹に傷のような痕が見えたため鏡に背中を向ける、そして俺は驚かされる。
背中には肩甲骨とほぼ重なるようにまるで皮を無理矢理剥がされたような傷痕があった。
しかもその傷は両肩にあった、両方とも同じような傷だ。
こんな傷を見てしまったからには、やはり痛みがないかなど気になってしまう。
試しに肩を動かしてみるが痛みや違和感は感じられない、傷痕に触れてみても何ともない。
が、傷痕があると認識してしまったからなのか。
傷痕に触れようとすると何とも言えない嫌な感覚がするようになった。
気は進まないがお母さんに傷の事を聞いてみる事にする、洗面所から出てリビングに向かう。
パンツ1枚だと少し肌寒いが気にするほどでもない。
本当に気にするべき事は他にあったのだ…
家族とはいえ、貞操観念が逆転した世界で少年がほぼ全裸で女性の前に出るという事を。