15
「さて、翔ちゃんの特別保護の手続きも終わったし私達はそろそろ帰るわね。
明日、学校に一緒に行く保護官が来るからよろしくね。」
「舞姉さんありがとうね~、また今度遊びに来てね。」
「それでは白羽様、お邪魔いたしました。」
「お騒がせしましたぁ。」
「そんじゃあ、失礼しますねぇ。」
舞さんと共に保護官の三人も帰っていった。
しかし、植野さんはずっとオロオロしてるだけだったなぁ…。
「もうこんな時間かぁ、晩ごはんどうしよっか。」
「翔は晩ごはん何が食べたい?
好きなの選んで良いからね!」
「食材って何があるんですか?」
「あ~、うちは料理出来る人が居ないから基本的に出前や外食だったりチルドとかレンジで簡単に出来るのがほとんどだから。」
「…えっ?」
冷蔵庫の中を見ると確かにチルド食品やパウチ食品が入っていた、ぎゅうぎゅう詰めだと予想したが綺麗に整理してあるしそれほど中身は入ってなかった。
「へぇ…、思ったより買い置きしないんですね。」
「えっ?」
「えっ?」
どうやらこの世界の物流はかなり発達しているようで、スマホさえあればネットで注文した物が即届けられるらしい。
「じゃあ、今日は翔ちゃんの無事とイージスクラス認定のお祝いでお寿司でも頼みましょうか!」
「お兄ちゃん、良かったね!」
「うん。」
お母さんが馴れた手つきでスマホを操作する。
注文して、10分後インターホンが鳴ったが画面には何も映っていない。
お母さんがスマホを確認してから玄関に向かったので付いていくと、玄関には寿司桶ぶら下げたカメラつきドローンが浮かんでいた。
スピーカーが内蔵されていたのか女性の声で話しかけてきた、お母さんがお代を払っている間も陰からチラチラとドローンを観察したが。
まるでその場に固定されているかの様に動かず稼働音もしなかった。
一瞬カメラから視線を感じたがすぐに感じなくなったから気のせいかと思ったが、スピーカーから聞こえる女性の声が上擦っていたから気のせいではないだろう。
お代を払い寿司を受け取るとドローンは滑る様に離れていった…。
「スゴいですね、アレ。」
「アレ? あぁ、配送君の事?
そっか、それも忘れちゃってるのね。」
「見覚えはあるんですけど、実際に目にするとやっぱり違いますね。」
「配送君は国営のサービスでね、物流の円滑化とかの為に開発されたんじゃなかったかしら…コンピューターで制御されてるから事故とかも年に数回しか起きないし。
それよりも、お寿司が乾いちゃう前に食べましょう!」
「そうですね!」
お母さんと一緒に寿司桶を抱えながらリビングに戻る、リビングでは來未姉さんがお皿などの準備をしてくれていた。
寿司桶は二つあり、一つは普通の寿司が入っていた、もう一つには様々な創作寿司が入っていた。
俺がテーブルの何処に座るかちょっとした騒ぎになりかけたが、先ほどと同じように俺の左右に桜ちゃんとお母さんが座り正面に來未姉さんと茉莉姉が座った。
來未姉さんと茉莉姉は不満そうだった。
「翔ちゃん、食べる前に少しだけ良いかしら。」
「どうしました?」
「翔ちゃんが記憶喪失になるまえも私達に対して敬語でお話してたから違和感はないんだけどね…、やっぱり家族なんだから敬語じゃなくてもっと楽にお話してほしいの。
その方が相談事とかお願い事としやすいとお母さん思うの、もし翔ちゃんが嫌じゃなければだけど…。
もっと甘えてくれて良いんだから…ね?」
「えっと…その…」
考えてみれば当たり前の事だが、やはり面と向かって話されるとやはり恥ずかしいというか何というか…。
そんな気持ちと共にお母さんからの優しさで涙が止まらなくなってしまった。