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「それでは、テストの説明をさせていただきます。
こちらのスパイキューブをご覧ください。」
名前だか名字だかわからないが、弥恵さんがスーツケースと球体をテーブルの上に置いた。
スーツケースには丁度球体がハマりそうな窪みがあった。
「それがスパイキューブですか?」
「はい、こちらをこの様に…」
ジャキンッと機械的な音と共に球体から無数の棒が飛び出した、パッと見、金属製のウニやイガ栗のようだ。
なるほど、スパイじゃなくスパイクキューブでスパイキューブなのか。
「こちらの飛び出したトゲを押せば球体に収まっていきますが、他のトゲも連動して収まったり飛び出してきたりします。
その法則を理解して、先程の状態に戻していただければ合格です。」
「なるほど…、ちなみに他の方は何分位でクリアしてます?」
「私はだいたい10分程ですね。」
「あたしは20分はかかっちゃいます…」
「ウチは調子良くて5分くらいですけど…、ウチ等じゃなく他の男性の事を聞きたかったんですよね。」
「他の男性の方は早い方で3分、一番遅い方だと1時間以上かかる方もいらっしゃいます。平均は30分程ですね。」
「じゃあ、皆さんかなり早いほうなんですね。」
「まぁ、ウチ等は保護官になる為に色々訓練しましたから。
それじゃあ、早速白羽様のテストを始めさせていただいてよろしいですか?」
「お願いします。」
弥恵さんからスパイキューブを手渡される、思ったより重い。
「白羽様、準備はよろしいですか。
それでは始めてください。」
テストが始まった、俺はスパイキューブを回しみる。
何故か一本だけ気になったのでとりあえず押してみる。
「(ぽちっとな…)」
ジャコンッ!!
棒が全て引っ込み球体に戻る。
保護官三人は呆然としていた、姉さん達も驚いた様子で桜ちゃんは何故かキラキラ目で見てきた。
「あの…俺はどうすれば…」
「白羽様すみません、もう一回やってもらっても良いですか?」
頷きスパイキューブを梅井さんに手渡す、梅井さんはスパイキューブを再び棘が出てる状態にして動作を確認する。
異常は見当たらない様だ、梅井さんからスパイキューブを受け取る。
「お願いします。」
梅井さんが開始の合図をする、それと同時に受け取った時に気になったトゲを押してみるとやはり全てのトゲが引っ込んだ。
「ありえません!
一ヶ所押しただけで全て引っ込むなんて聞いたことありません!!」
「そんな事言われても…」
「ちょっと、弥恵さん落ち着きなさい。」
「…白羽様、スパイキューブをこちらに。」
弥恵さんにスパイキューブに渡す、弥恵さんはスパイキューブを手慣れた手つきでトゲを出す。
カチャチャチャチャ…
弥恵さんが凄まじい速度でトゲを押していく、真剣にスパイキューブを解く姿はカッコ良かった。
しかし、上手く解けないようで段々と涙目になっていく。
ちなみに、先ほどから二番目に入ってきたお姉さんはオロオロしているだけである。
梅井さんは何やら時間を気にし始めた、そんな時再びインターホンが鳴り弥恵さんがスパイキューブを手から落とした。
そして、インターホンに映し出された女性を見て三人の顔が真っ青になった…