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夜の小径に現れる

作者: SlowFood

月が昇ってからいくらか時がすぎたころ


「はぁ………、はぁ………。」


人通りのない小径を少女は急ぎ歩く。


子どもが裏通りを歩くのは危険だ。日が落ちて、夜の帳がとっくに下りてしまってからは尚更だ。


毎日のように、どこかで子どもが拐われ、売られ、人生を喪っている。


もっとも、この少女がそれを全く知らないはずはない。


遊びに夢中だったのだ。気が付けば日が暮れていて、友達はみんな家に帰ってしまった。


遊び場と家が遠かった彼女だけが、ひとり我が家を目指している。


小枝を踏み折る音、コウモリが飛ぶ音のひとつひとつに怯えながら、左右を振り返り警戒して歩く少女は、しかしながら、とっくに獲物として捕捉されている。


裏通りに住むものは共食いを繰り返す飢えた狼たちだ。互いの餌を狙い、あるいは互いを獲物として狙う狼たちが、迷い込んできた哀れな羊の匂いを嗅ぎ逃すことはない。


「こんばんは、お嬢ちゃん。迷子かい?」


いきなり真横から声をかけられた。振り向けば汚らしい風貌の男が立っていた。


「おっと、恐がらなくていいんだよ?おじさんたちは優しい人だからね」


「………!!」


即座に回れ右、来た道に向かって駆け出そうとしたが、後ろには既に男が立って下衆な笑みを浮かべていた。


囲まれてしまった。その男たちにはいつも接している大人たちから感じられる安心感はなく、身も凍るような嫌な雰囲気に少女の顔が歪んだ。


「へへへ、結構可愛いじゃねーかよ」


「おとなしくついて来れば痛い目には……っ待ちやがれ!!」


男が手を伸ばしたとき、少女は隙をついて男の脇をくぐり抜けて走った。


そのまま近くの路地に入り込み、曲がり角を右折、左折。


少女が意図してやったことではなかったが、逃走するときにジグザグに走るというのは追っ手の視線から外れるという意味では非常に有効だ。


「ここ………、はぁっ、どこ………!?」


ただ、自分の現在位置もつかみにくくなる。見通しが悪い暗闇の、土地勘のない裏通りを無作為に走りまわった少女は迷ってしまった。


袋小路を避けつつなんとか小径を抜け出すとそこは少女の知らない、白けた荒れ地と家々だった。


スラム、ではない。一見して周辺に危険は感じられないが、ボロボロの家屋ーーそれとも廃屋と呼ぶべきだろうかーーからは明かりが一切漏れず、うっそうとした森の中にいるような気がした。


月は雲に隠れ辺りはますます暗くなっていった。見憶えのない小径を歩く少女の精神には限界が近づいてきていた。


よし、と小さく声に出すと、一番清潔そうな扉を叩いた。


「だれかいませんか?道に迷ってしまったんです」


扉の向こうからは何も返ってこない。ドアを軽く押してみたが、鍵がかかっているようだ。


廃屋のように見えたが、扉に鍵をかけているくらいだからきっと誰かが住んでいるだろう。時間帯からしてその誰かは眠っているのだ。外出しているかもしれないという可能性を少女はなるべく考えないようにした。


ダン、ダンと今度は強く扉をノックした。


「ごめんください!!迷子なんです!!」


「ガキだ!あそこにいたぞ!」


少女と同じく小径を抜け出したのだろう、男が大声で叫びながら向かって来た。遠くからそれに応じる声も聞こえた。


少女は無我夢中で扉を揺らした。


「た、助けてください!!悪い人たちに追いかけられているんです!!………きゃあ!」


少女が悲鳴をあげたのは追ってきた男たちに捕まったからではない。


いきなり開いた扉から黒い影が飛び出し少女の身体に絡みつくと、少女を中に引きずり込んだのだ。


「な、何が起こったんだ!?…………だれだテメェは!!」


少女が姿を消した扉の奥の暗闇から人影がひとつ現れた。


ずるっずるっ、っと。


何かを引き摺るような音を立てながら、人影は徐々に姿を明らかにしていった。


男性の平均よりやや低い身長。その身体は細身の外套を纏っていてもだぶつくほどに華奢で、暗がりのなかでは男なのか女なのか今ひとつ判然としない。


男たちは醜悪に笑った。あれが女ならメチャメチャに犯してから連れ去って監禁してまた楽しむ。男なら嬲り殺しだ。死体を持って帰ろうがお人形を連れて帰ろうが自分たちは罪に問われない。


「おい、そこのお前。酷い目に遭いたくなけりゃそのボロ小屋に入れたガキをこっちに渡せ。」


「ついでにあんたの体もこっちに渡してもらえる?何ならここで遊んで………ひぃっ!?」


引き摺られていた“何か”を見て、男たちは悲鳴を上げた。


動物とも植物とも、無機物とも言えないような質感の触手がコートの袖や裾から流れるように吐き出されている。一歩進むごとにこぼれ落ちるそれは、扉の奥から続いて来ている。


「遊んで………?ああ、いいとも。遊んであげるよぉ」


気だるそうな雰囲気をまとった、へらへらとした笑み。身の程知らずな男たちを嘲笑しているかのようだった。


怪物が地面を引っ掻きながら異様な長さの腕を振り上げるのを男たちは呆然と眺めていた。












かろうじて部屋の全体を見渡せるくらいの薄暗闇のなかで少女は目を覚ました。












ここまで書いて力尽きました

小説を書くというのは難しいですね


この後少女がどのような目にあわされるかは想像におまかせします。

僕の妄想ではリョナ展開などはありません。


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