第1話
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「神様…。」
今さら、もう、遅いのに。
なんでこんな事…別にキリスト教信者ではないのに。…でもさ、
「いきなり異世界に放り込んで、そのまま放置はやめてほしいわ…。」
鬼だよ…。この世の者とは思えないんだけどー。あ、神様だし、この世の者じゃないか。それでも、ちょっとぐらい転生者に優しくしてもいいと思うんだけどなぁ…。
「あんの神様め…。」
私、神様になにかしたっけ!?したんだったら謝るから、謝るからさぁ。
「ホントに勘弁してー!」
どーしよー…。
私、綾野 律は十五歳の誕生日に交通事故にあって、死んでしまった…ハズ。そう、死んでしまったハズの人間なんだけど、自称『神様』とやらに出会い、今に至る。
「うわー…」
これからどうしろと言うのかな?神様は。
あ、自称『神様』にあった時、なーんか言われたような気がする。まぁ、忘れてるって事は、たいしたことないって思いたいんだけど…んー、なんか、モヤモヤする。…ま、いっか。
どうしよっかなぁー。でも、まぁ、特にどうすることもできないんだけど。
だいたいさぁ、こういうことになるのって、ゲームがすんごい好きな人とかじゃん?なぜ、私が。そりゃぁ、ゲーム好きだけど、そこまでやりこんでないのに。
あの神様も神様だよねぇ。ここに来てから一時間ぐらいたった気がするんだけど、何か起こるわけでもない。それに、ココ、森の中だしなぁ…。何かが起こっても困るけどさぁ。場所は選んでほしかったよ。こんな森の中じゃぁ、何も出来ないし…。せめて放り込むなら街がよかったな…。
「あ。
異世界なら、魔法とか使えたりして。」
やってみよっかなー。森の中だしなぁ、大丈夫かなぁ。うん、やってみよーっと。
「それっ……と。
あれ、失敗?」
ズドーン
氷の塊が目の前に。
「こわっ。」
私が出したのか。あー、ビックリした。
やっぱりココは魔法が使えるみたい。しかも、よくあるながったらしい詠唱とか言わなくても大丈夫みたいだし。
…?
私は氷属性なのかな。炎とか、水とか、出ないのかな…。よーし、やってみよう!
「えいっ!」
ボッ
あ、炎出た。
「次は、みっずっ…!」
ピチョン
水も出るみたいですなぁ。しょぼかったけど…。一番勢いがあったのは氷だね。
「お前。」
「え、ギャーー!!」
ちょ、こわ!何!?女子あるまじき声を出してしまった。いや、ほんと、何があったのさ。怖い…。
「驚かせて悪い。あやしい者ではない。」
「後ろから現れる時点で十分あやしいです!」
心臓が止まるかと思った。
「失礼した。
俺は、宮廷魔術師のレン・ラドクリフだ。」
「私は…リュート・ハルレルトです。」
もちろん、リュートは偽名。律に似てるから。
「ハルレルト…?聞いたことの無い名だが。まぁいい。王命で魔術師を城に呼ぶことになっていてな。ついてきてもらう。」
「何故私が魔術師だとわかったのですか?」
「見ていたからな。詠唱無しで使えるのだろう?」
はぁ?…なんという事だ。めんどくさいことに関わってしまったなぁ。
「ちなみに、拒否権は。」
「無いに決まっているだろう。拒否した場合、反逆罪で城につれていく。」
どっちにしても、城にはいかなきゃダメって事か。えーもー、やだあ〜…。
だって、ニ択だよ?評判をとるかプライドをとるかって事でしょ?なんて理不尽な。
「行きますが、どうやっていくのですか?」
「あぁ、このドラゴンで行く。」
ド、ド、ド、ドラゴン~!?
え、待って。この人何考えてるの!?ドラゴンとか…異世界、何でもありって事~!?