第2話 七色の光
船の天井にある小さな窓からは、眩しくて目を開けられない程の強い光が、オヨコの瞳に飛び込んできた。
「うっ!」
オヨコは顔を背けた。
そしてそっと、光の差す方向へと目を向けた。
7色の虹色の光が、渦を巻いている。
小さな窓から入り込むその光は、一瞬で辺りを光の渦で包み込んだ。
殺風景な色合いの船の中は、まるで豪華な装飾品で飾り付けたような、鮮やかな色調を創り出した。
オヨコの瞳にくっきりとした、虹色のまん丸い物体が映しだされた。
「う、う、う、うそ……⁈」
「それだろ?お前さんが会いたかったもんは?」
オヨコの瞳には、大粒の涙が浮かんでいる。
「ダ……ダ、ダイアモンド・ムーンなの?」
オヨコの瞳の涙を見た女は、
「今のうちだ。願い事を言いな!」
女は頷きながら言った。
「え?」
オヨコは女を見た。
「早くしねーと、涙と一緒に月も消えちまうよ?」
「あ……あ!あ〜うん……!」
オヨコは焦った。
この月に会うために、遥か彼方より探し求めて辿り着いたのだ。
願い事をお願いしなければ、意味がない。
オヨコは焦っていた。
だがすぐに冷静さを取り戻すと、ゆっくりと瞳を閉じた。
そして大きな深呼吸をした。
長い息を吐いたと同時に、心の中で願い事を念じた。
「どうかライムベリー増刊号第701号の表紙モデル『ルル』のような素敵なレディになりたいの。
どうか私の願いを叶えて!
ダイアモンド・ムーンのお月さま……」
オヨコは心に深く念じた。
女は息を呑んでオヨコを見ていた。
「…………」
オヨコは瞳を閉じたままだ。
「…………」
女はもう一度息を呑んだ。
「…………」
オヨコは静かに瞳を閉じている。
「…………」
女は目をパチクリさせた。
「…………」
オヨコは瞳を閉じていた。
女は落ち着きないようすで、辺りをキョロキョロと見渡し始めた。
「…………」
オヨコは瞳を開けた。
そして自分の突き出た腹を見た。
腹は何事も無かったように、前に大きく突き出ていた。
オヨコは船窓の方を見て、自分の姿を窓に映して見る。
そこに映っていたのは、明らかさまに三段腹を抱えた太ったままの自分の姿である。
「ふぅ……」
オヨコは大きくため息をこぼした。
頬を触った。
ブヨブヨである。
「ふぅ……」
ため息をこぼした。
首を触ってみた。
片手では掴めない。
「はぁ……」
思わず言葉が出た。
それを見た女は何故か諦めたように、両手を横に広げると首を傾げながら甲板へと歩いて行った。
「どうしたことやら…?」
女のつぶやきが聞こえた。
「どうして…?私が聞きたいよ…」
オヨコはさらに落ち込んだ。
首もとに『チクリ』と痒みがさした。
オヨコは首を触った。
何か柔らかい毛のようなものが、手に触れた。
「ん?」
髪である。
「んん?」
オヨコは引っ張った。
だが取れない。
反対側の首もとを見た。
するとブロンド色した毛が、肩にかかっていた。
オヨコは後ろ髪を触った。
いつもなら首もとで切れてるはずの髪の毛が、首下まで続いていた。
不思議に思い、今度は下側から手を背中側へと差し出してみる。
何とある筈もない髪の毛が、肩下まで伸びているではないか。
驚いたオヨコは、船窓に駆け寄った。
「う……う……そ……?」
そこに映し出されていたのは、長いブロンドの髪をして、グリーンのドレスを着た若い女である。
ウエストは驚く程にくびれながらも、胸の辺りはボリュームよく突き出ている。
「あんな女性いたかしら?」
オヨコが動いた瞬間、彼女も同じ動きをした。
「え?」
オヨコは瞳を大きく開けた。
「も、もしかして⁈」




