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浮遊図書館の魔王様  作者: るーるー
魔力回復編
98/135

第89話 犠牲者がでました

 


「お待たせさました! 魔王様!」


 謁見の間の大きな扉を開けながらメイド姉妹が大きな皿を持って現れる。

 いい匂いがするけど。


「お肉持ってきたよ!」

「……ありがとう。でもこれ何の肉?」


 大皿が王座に座るわたしの前のテーブルに置かれる。匂いはたしかにいい匂いがするんだけど、


「わたし紫色の肉なんて見たことないんだけど」


 そう、紫なのだ。目の前に置かれた肉は。

 焼いてはいるがどうしても毒々しいその色が目立ちすぎる。

 食べ物って色彩が大事だよね。今改めて思ったよ。


「これね! 蛇のお肉だよ!」

「蛇⁉︎」


 蛇の肉って紫なのか。いやそれ以前になんてものを食べさそうとしているんだよ!


「しかもね! 後で調べたらその蛇ね、バジリスクって言うんだって!」

「本でしかでてこないような毒蛇じゃないか!」


 そんな物の肉を食べさそうとしていたのか! 危ないなんてレベルじゃない。下手したら死ぬ。


「大丈夫ですよ。魔王様、アルねぇに食べてもらいましたが全く問題ありませんでした」


 わたしが怖がっているのを見たビリアラが平然と答える。

 実の姉を毒味に使うとはなんて恐ろしい妹だ。


「 じゃ、そのアルはどこに?」

「一緒に運んできたはずですが?」


 しかし、わたしは見た。ビリアラが平然とそう答えた後ろで床に突っ伏して倒れているアルの姿を。気のせいじゃなければビクンビクンと痙攣しているようにも見えなくはない。


「ちょっと⁉︎ アル倒れてる!」

「えっ⁉︎」

「鉄の胃袋を持つアルねぇが⁉︎」

「死んじゃだめだよ! アルねぇ! 傷は浅いよ!」


 それぞれが好き勝手なことを言ってる。それとマーテ、それさ多分致命傷だよ。毒だし。

 ため息をつきながらわたしは王座から立ち上がるとこけないように慎重に動く。

 顔が真っ青なアルの元に辿り着くとすぐさま治癒魔法ヒールを発動。すると多少は血色が戻るが少しするとまた真っ青になる。なんでだ? 治癒魔法ヒールで回復さしたはずなのに。


治癒魔法ヒールではなく解毒魔法ポイズンクリアをつかうんですよ。ご主人』

「なるほど。使ったことないけど本で読んだことがあるからできる気がする」

「ちょっと待って魔王様、今使ったことがないって言わな……」

解毒魔法ポイズンクリア


 ビリアラが止めようとする前に使ったことのない魔法を発動。緑色の光がわたしの手元から放たれアルの口元に入り込む。するとアルの真っ青だった顔に血色が戻り始めていた。

 おお、初めて使ったけど成功したみたいだ。


「とりあえずこの肉は破棄で」

「「「りょーかいです!」」」


 グッタリとしたアルを横目にメイド達は素直に大皿の肉を破棄し始めたのだった。

 次々に袋の中に肉を放りこんでいく途中、マーテが思い出したようにこちらに走り寄ってきた。


「レクレさま、これ!」


 ポケットをゴソゴソと漁りビリアラは一つのフラスコをわたしに見せてきた。


「……これ、なに?」


 マーテがわたしの目の前に掲げてきたフラスコの中には紫色の液体が入っていた。先程の肉と同じ色だったから渋い顔をしていただろう。


「森の錬金術師のおばあさんから貰った魔力回復ポーションだよ!」

「錬金術師?」


 胡散臭い。凄まじく胡散臭い。魔法使いではなく錬金術師と名乗るのが凄まじく胡散臭い。

 錬金術師とは魔法使いという呼び名が定着する前の呼称だ。古い方の呼び方をわざわざ使うという輩は今は全くと言っていいほど存在しないだろう。

 ただ、錬金術師を名乗るのならば古い知識を持っている可能性はある。マーテが持っているポーションも本物の魔力回復ポーションの可能性もある。


「怪しいけど、どうするかな」


 マーテから渡されたフラスコを目の前で揺らす。紫の液体がフラスコの中で波打つ。


解毒魔法ポイズンクリアを使えば死にはしないのでは?』

「まぁ、そうなんだけど」


 アトラの言う通り解毒魔法ポイズンクリアを使った状態で飲めば死にはしないだろう。

 ただ、魔法も万能じゃないし、死ぬ可能性もある。


「まあ、死んだらその時だよね」


 死ぬならなるべく苦しまずに死にたいものだよ。

 フラスコの中身を一気に飲み込み即座に解毒魔法ポイズンクリアを使用。これで死ぬことはないよね?


「お? おお?」


 ポーションを飲み込んで少しすると体内に何かが満ちてくる感じがしてきた。

 今迄は魔力が減る感覚はあったけどこれが増える感覚なのかな?

 やがて魔力が回復? したのか満ちるような感覚が止まり変わりに横に広がるような感覚が体の中に感じ始めた。


「貯蔵量が増えてる?」


 今までにない感覚にわたしが戸惑っていると、


 ファンファンファンファンファンファンファンファン!


「な、なに⁉︎」


 今までに聞いたことないような音が響く。

 その音が鳴ると同時に不思議な感覚が止まった。


「魔王様、なにをしたをです?」

「なにもしてないよ」


 ビリアラが疑わしげな目でわたしを見てくるが全く思い当たる事がない。


 ファンファンファンファンファンファンファンファン!


 どうやらこの大きな音が浮遊図書館全体に鳴り響いてるみたいだ。


「な、なんの音なの?」


 マーテは怯えたように、ビリアラとレキは警戒態勢に入り、アルはまだ寝込んでいた。


『浮遊図書館所持者の魔力貯蔵量の最大値が設定ラインに到達しました。繰り返します。浮遊図書館所持者の魔力貯蔵量の最大値が設定ラインに到達しました』


 聞いたことのない声が響く。

 魔力貯蔵量の最大値? 設定ライン? 何のことを言ってるんだか。


『それにともない浮遊図書館は第二形態に移行します』


「「「「第二形態?」」」」


 その場にいた全員が頭に疑問符を浮かべたのだった。

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