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浮遊図書館の魔王様  作者: るーるー
魔力回復編
94/135

第85話 知らないとこで話が進んでいました。 進め!黒衣の森!④

 


「ヒッヒッヒッヒッヒ、立ち話もなんだから中に入りな」


 そう言い老婆が指差したのはレキ姉さんやアルねぇが無残に食い散らかし穴だらけになったお菓子の家の姿がありました。微妙に揺れています。いつ壊れてもおかしくありません。


「あの倒壊寸前の家に入れと?」

「倒壊寸前?」


 老婆はお菓子の家を一瞥するとパチンと指を鳴らした。

 すると無残に食べられていたお菓子の家が時間を巻き戻すかのように元に戻っていっていた。

 同時なにゴクリとヨダレを飲み込む音が響いた。誰かはわからないけど食い意地が張ってるな〜。


「ヒッヒッヒッヒッヒ、これならいいだろ? さぁ、とっとと中に入ろうじゃないか」


 そう告げると老婆は楽しげにチョコレートの扉を開け中に入っていった。


「……どうする? レキ姉さん」

「まぁ、殺気もないみたいだし大丈夫じゃないかしら」


 殺気! そんなの一般人は感じないんだけどなぁ。それを普通と思ってるレキ姉さんは大分おかしいよ。


「それに広いと剣が躱されちゃうけどあの狭さなら躱す場所ないと思わない」


 どこにいてもレキ姉さんは戦闘狂でしたね。普通はそんなこと考えもしない物ですよ。


「まあ、レキ姉さんがいれば最悪私達が逃げる時間は稼げそうですしね」

「……ビリアラ、性格悪くなったね」


 頬を引きつらせて笑うレキ姉さん。だって貴女、魔法切るくらいだから殺しても死なないと思うし。

 そんなことを考え、決意を固めた後に私達はお菓子の家のドアを開けたのだった。



 意を決してドアを開けると老婆はロッキングチェアに座りユラユラと揺れていた。あの椅子は座り心地が良さそうだ。


「ヒッヒッヒッヒ、それでこの黒衣の森の奥に何の用だい?」


 不気味な声を上げながらこちらに尋ねてきた。

 家の中は外から見たメルヘンなお菓子の家とは違い、家の中には色々な物が置いてあった。

 錬金術師として使うであろうフラスコがそこいら中に転がってたり怪しげな生き物を瓶詰めした物が陳列されていたりしてるし、あんまりお近づきになりたい部屋ではない。


「えっとね、ドラゴン狩りにきたの!」


 老婆の質問にマーテが元気良く答える。よかった、お菓子食べて目的忘れてるかとお姉ちゃんは思ってたよ。


「……ドラゴンなら普通は森にはいないよ。火山にでもいかないとお目にかかれないよ」

「え、いないの⁉︎」


 マーテの驚いたような声をあげ、それに対して呆れたような声で老婆はマーテの質問に答えてくれた。


「いや、常識じゃろ? ドラゴンは森には、というかこんな泥まみれになるような場所には住み着かんよ」


 やつらは潔癖症じゃからなと老婆は告げる。

 マーテ以外の誰もが予想していたがそうだろう。


「だったら魔力が回復する薬とかないのおばあさん!」

「わたしゃまだピチピチの280歳じゃよ!」

「いや、ばぁさんじゃん」


 マーテの言葉に老婆は噛み付いたがアルがさらに噛み付いた。アル、もう少しお年寄りを労わろう。あとおばあさん、250歳ではピチピチとは言わないと思います。口には出さないけど。


「ふん、失礼な娘っ子だね。あとそこの! いい加減剣の柄に手を添えるのをやめな!」


 老婆が睨んだ先には剣をいつでも抜けるような状態になっているレキ姉さんが立っていた。


「先程切れなかったのでつい」

「物騒な子だね」


 老婆が深くため息をつく。


「魔力を回復する薬なら調合できるよ」

「本当⁉︎ さすが魔女!」

「錬金術師だよ!」


 妙なこだわりがあるみたいだ。

 あんまりつっこんでヘソを曲げられても困る。


「ください! 早く!」

「痛い! 骨! 骨が折れる!」


 マーテが一瞬で老婆の元に走り腕を握る。ビキビキと凄まじいまでに骨が軋む音が部屋に響き渡る。


「マーテ! 折れたら薬作れないよ!」

「あ、ほんとだ」


 今気付いたかのようにマーテが老婆の手を離す。

 感情的になるとマーテはリミッターが外れるみたいだし危ない。


「イダダダ、そっちの剣持った奴よりこっちのほうが悪意がない分手に負えんな」


 手を振りながら老婆はマーテを睨む。マーテはキョトンとした顔を浮かべ老婆を見つめていた。


「魔力回復のポーションなんか誰に飲ますんじゃ?」

「レクレ様に飲ますの!」

「レクレ様?」


 頭に疑問符を浮かべながら老婆がわたしのほうを見てきた。


「私達の国、ライブラリの魔王です」

「ほお〜人界に新しい国が出来たのか」

「出来たのは最近ですが」


 老婆は楽しげな色と打算の色を浮かべた瞳をこちらに向けてくる。


「ふむ、ならば魔力回復ポーションを渡せば魔王様とやらに恩を売ることになるのかのう?」

「そうなりますね」


 老婆は少し考えた後に軽く腕を振るう。

 それだけでなにも持っていなかった手の中に紫の色をした液体が入ったフラスコが現れる。

 そのフラスコをマーテに渡し頭を撫でる。


「魔王というがそれを飲ませれば魔力を全快とは言わずとも八割は回復するじゃろ」

「ありがとう!」


 満面の笑みを浮かべたマーテが老婆の手を握りブンブンと音を立てるように振る。同時にバキっとなにかが折れる音が響く。


「イダダダダダダダダダダダ!」

「マーテ折れてる! 折れてるから!」


 私とレキ姉さんが止めるまでマーテは笑顔で老婆の腕を振り続け老婆は悲鳴を上げ続けた。そんな悲鳴の中でほとんど喋らなかったアルねぇだけはひたすらに壁を壊してお菓子を食べていたという。

 ホラーだよね。

 其の後に老婆は回復ポーションを泣きながら飲んで腕を直してたのはかなり怖かった。


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