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浮遊図書館の魔王様  作者: るーるー
魔王なります 編
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第九話 泣かれました

 歪んだ空間にが元に戻り周辺に魔力の暴風が吹き荒れある。それに合わせるように色取り取りの花びらが舞う。

 周りを見渡すと一面の花畑。今の時期には咲かないような花まで季節を無視して咲き誇っていた。

 周辺に結界でも貼ってあるのかな?


「なかなかに貴重な体験だった」

「なんで、普通にたってられるの」


 自分の発動した転移魔法で酔ったのか座り込んでいたアルはヨロヨロと立ち上がる。

 アルの言葉にわたしはただ笑うだけに留める

 まぁ、実際は魔法で暴走したりする感覚に似てたからだろうけど。

 アルはメイド服についた埃をパタパタと叩く。同時に尻尾も左右に揺れる。愛らしい。


「早くいかないと姉様に怒られる」


 そう言うとわたしの横を通り過ぎ後ろに走って行った。


「どこにい行……」


 アルを追って後ろを振り返ると、そこには馬鹿みたいに大きな城があった。


「なぁ⁉︎」


 あまりの大きさに驚愕したのもあるが、なによりその城の形に驚いたのだ。


「これ、ファンガルノ帝国の王城だよね。色が若干違うけど」


 ファンガルノ首都にある城は純白をイメージした白が基調になっているのに対し、今、目の前にある城は人に威圧感を与えてくる正反対の黒を基調としているようだ。


「レクレ、早く!」


 大きな扉の前でアルがピョンピョン飛び跳ねてる。

 ちらりと視線を向け、アルのほうに向かい歩き始めた。

 わたしがアルの横に立つとアルはバカみたいに大きな扉を押し開ける。

 ギィィィィと古めかしい音が鳴り響き、目の前には赤い絨毯が敷き詰められており、その先にはメイド服に身を包んだ美しい少女達四人がわたしたちをでむかえてくれた。


「お待ちしていました。レクレ様」


 蒼く煌めいた髪を揺らしながらメイドの一人が一歩前にでると優雅に一礼をした。頭にはピョコピョコと犬の耳のようなものがうごいていた。


「おお、メイドさんだ!」


 わたしは歓喜の声を上げた。自然に足に魔力を集め踏み込み加速する。

 瞬きをする間も無くメイドさんとの距離をゼロにする。

 メイドさんの金の瞳が驚きに見開かれるがわたしは気にせず、


「いただきます」


 ぴくぴくと動いてる耳にかぶりついた。そしてハムハムと咀嚼(本気噛みじゃないよ?甘噛みだよ?)


「ふぃぃぃ⁉︎」


 とっても可愛い悲鳴が聞こえました。興奮するね。

 しばらく甘噛みを堪能したわたしは満足し、メイドさんを解放する。

 解放するとメイドさんとはがっくりと膝をつき嗚咽を漏らしていた。


「うぅぅぅ、もう、お嫁さんにいけない」


 ポロポロと涙を流すメイドさんをみてわたしはゾクゾうや罪悪感を感じた。本当です。


「「「ねぇさま!」」」


 他のメイド達が泣いてるメイドさんにかけよる。姉妹なんだ。髪の色は違うけどみんな同じようにイヌミミがぴこぴこ動いてるし。

 そんなことを考えてるとアトラが頭に何度もぶつかってきた。地味に痛い。


「ご主人やりすぎですよ! というか完全にセクハラです! 犯罪ですよ!」


 た、確かにこんなに泣かれるとは思ってなかった。


「だ、大丈夫よ。お姉ちゃん頑張るから」


 妹達?に気遣われながらヨロヨロといった様子で立ち上がるメイドさん。大丈夫だろうか。

 立ち上がったメイドさんはコホンと咳を一回すると、


「改めてまして、ようこそ、レクレ様。私はこの浮遊城の管理人レキと申します。以後お見知り置きを。後ろは私の妹達でございます」


 スカートの裾を掴み優雅な礼をする。後ろの六人もワンテンポ遅れて同様の礼を行う。


「あーうん、なんかごめんね? 」


 罪悪感から謝った。


「いえ、お気になさらずに。魔王たるもの唯我独尊でないといけませんので」


 な、涙目で言われても説得力がないんですけど。

 なにか取り返しがつかないことをした気がしていた所にレキの妹の一人に目を包帯で覆っている子がいることに気づいた。

 包帯の子は視線に気づいたのか居心地が悪そうだ。


「レキさん、その目を包帯で覆っている子は?」

「彼女は末っ子のマーテです。そのいろいろとあって目が見えないのです」


 なんとも言いにくそうにいうレキの言葉からわたしはなんとなく察した。


「聖堂教会か」


 聖堂教会は人間以外の種族を弾圧することで有名だからな〜。もしくは差別主義の人間にやられたか。どっちにしろ気分のいいものではないね。


「まぁ、いいや。ちょっとマーテちゃんこっち来て」


 おいでおいでと手招きする。あ、目が見えないのか。

 マーテのほうもビクビクと言った様子でこちらに歩いてくる。そこまで怯えられるとショックだ。


「気を悪くしないでください。マーテは人間がその、苦手ので」

「そこは気にしない。事情はわかったし」


 自分の身長の半分くらいしかないマーテが近くにくるとわたしは屈み、マーテの顔の前に自分の顔がした。


「ちょっと包帯とるよ?」


 そうマーテに聞こえるように言うと包帯を取り外す。途中、マーテが何度もビクっとした。かなり怖い目にあったみたいだ。


「下衆だな」


 マーテの包帯を外すと片目には瞳がなく、もう片方は潰れている状態で収まっていた。こんな目に合えば人間が怖くなるのは当たり前だ。

 わたしはマーテを抱き寄せ、くすんだ紅い髪の頭を撫でる。

 頭を撫でるだけでビクビクしてる。どんな目にあったんだか。想像ができるだけに気分が悪いね。


「よしよし、お姉さんが治してあげよう」


 なるべく優しそうに聞こえるように言い、わたしはマーテを離すと右手をマーテの目の前にかざす。


「多分、今の魔力量なら楽々できるはず」


 全身に流れてる魔力を右手に集めるイメージ。するとかざした右手が徐々に緑色の光に包まれ始めた。

 これならいける。

 更に右手に魔力を流し込み右手の輝きはすでに直視できない光となっていた。


「いくよ、治癒魔法(ホーリーヒール)


 緑の光が放たれ、マーテの見えなくなった眼を覆う。

 すると時間を巻き戻すかのようにマーテの無くなっていた瞳が再生されて行く。灰色の瞳が再生され、徐々に薄茶色に染まっていく。

 同時にわたしの中の魔力がかなり減っていくのがよくわかる。やっぱり再生魔法はバカみたいに魔力を食うみたいだ。


「え?」


 マーテが驚いたような声を上げる。わたしはすぐに包帯をまた目に巻き直した。


「目はもう治ってるけどすぐに光をみちゃうとなかなかに刺激が強いからもうちょっとしたら外そうね」


 優しい声音でマーテにそう言うと首が折れるんじゃないかというくらいの勢いで頷いてる。

 かわゆいのぅ。


「あの、レクレ様、マーテの眼は治ったのですか?」


 震えるような声でレキが聞いてきた。


「うん、再生魔法で治したよ」

「う、ううううぁぁぁぁぁぁん!」


 ちょっとなんでいきなり泣くのレキさん⁉︎ びっくりするからやめてください。


「ありばぁとうござぃまあずぅぅ」


 治ったマーテよりもレキさんのほうが大泣きしてる。

 さっきのように妹達に慰められているし。こんなお姉さんが管理人で大丈夫なんだろうか?

 想像するとゲンナリするわたしだった。

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