第69話 仕事をしないといけない時がありました
「何が起こってるの?」
今日はスペラもわたしにくっついていないのでゆっくりと読書ができると思ったけどどうやらそうはならないようだ。
いつもは静かな浮遊図書館が今日はバタバタとうるさい。
慌ただしく動き続けるユール達の他にも見たことのない人達も走り回っているようだ。
その様子をぼんやりと眺めながらわたしは横に控えるアトラに尋ねた。
「詳しくは知りませんが魔物の暴走らしいですよ」
「暴走?」
確か本で読んだことがあるな。確かなんらかの要因で魔物が生息地を変える現象だっけ。
「ええ、おそらくはファンガルム皇国が機能しなくなり定期的に魔物を狩る存在がいなくなったからでしょう。」
暴走が起こる最大の要因は魔物の食料不足だ。大方、ファンガルム皇国が消え魔物の脅威となる存在がなくなったことにより魔物が増え今まで足りていた食料が足りなくなったんだろう。
滅んでもまだわたしに迷惑をかけてくるのかあの国は。
「ま、今後の対策でもユール達に聞きに行くかな」
「自分で考えるという選択肢はご主人にはないのですね」
わたしは呆れたような声を出すアトラを引き連れユールの仕事部屋に向かうのであった。
「これは……」
ユールの部屋にやって来たはいいが絶句した。
書類が山のように積み上げられていたからだ。いや、これはむしろ書類で部屋ができているんじゃないだろうか。
「これ、全部仕事の書類?」
本は好きだけどこんな書類の山は読みたいとは思わない。むしろここまであると燃やしたくなるね。
「よし、燃やすか。それでユールも仕事なくなるよ」
「やめてくださいよ魔王様」
いざ魔法を使おうとすると後ろからやってきたユールに止められた。
「この書類はもう終わってる書類です。あとは届けるのを待つだけですので」
「これ終わったやつなの⁉︎」
有能すぎるよユールさん。
「それよりも魔王様、魔王様に仕事がきましたよ」
「え、やだよ? 働きたくないし」
そのための君たちじゃないか。わたしは本を読む以外は本当にしたくないんだから。
そんなわたしの答えを予想していたのかユールはニッコリと微笑む。
「別にやらなくてもいいですが、ライブラリは壊滅するでしょうね」
「え?」
「ライブラリがというか外部からの本が届かなくなりますね」
ライブラリが壊滅する? 本が届かなくなくなる?
死活問題じゃないか!
「なんの仕事をすればいいの⁉︎」
「では謁見の間に行きましょうか」
「わかった!」
急ぎ足で謁見の間に向かう。ライブラリの、いや、本の危機だ。
働かざるえない時がたまにはある!
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