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浮遊図書館の魔王様  作者: るーるー
暴走編
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第65話 謁見頑張りました

 最近は自分の部屋に篭りっきりだから久々にやってきた謁見の間。

 いつもマーテ達が掃除をしてるのか綺麗である。

 とりあえずアトラを率いてやってきて王座に一応座る。

 別にこんなピカピカした椅子じゃなくてもいいんだと思うけどユール曰く格式美というやつらしい。

 わたし個人としてはフカフカのソファーを王座にしてもいいんだけどそれはやめてくれ!と何故か全員に止められた。

 なぜだろう。


「通してもよろしいでしょうか?」

「うん、いいよ」


 レキに尋ねられたため伝える。

 下座に設置された魔法陣が光を放ち転移魔法を発動させる。魔法陣の上には修道服の女性、修道女シスターが現れる。

 修道女シスターは王座に座るわたしを見ると慌てた様子で膝をつき頭を下げた。

 わたしはその様子に軽く笑う。

 大体謁見にきた人達は転移魔法に驚くからその時のリアクションを見るのはわたしの楽しみになりつつあるね。


「魔王様、今回は謁見の許可を頂き……」


 堅苦しい挨拶をしようとする修道女シスターを手で制した。


「ああ、堅苦しい挨拶はいらないよ? そんなのはバカみたいな貴族の相手でお腹一杯なんだよ」


 ケラケラと軽い口調で言ったんだけど修道女シスターは信じられないものを見るような目で見てきた。


「どうしたの?」

「いえ、魔王様もかなり立場的には格上なのでそんな言葉がでてくると思っただけでございます」

「硬いな〜フレンドリーにいこうよ」

「わかりました。魔王様」


 まだ硬いけどね。王座に座りながら肩をすくめた。


「で、なにか用件があったんじゃないの?」


 そうじゃなきゃわたしに会う物好きはいないからね。

 ……考えててなんか悲しくなった。


「はい、ボク、スペランツァ・タンペットが第七聖女を襲名したことの挨拶に伺いました」

「……最近の聖女は魔王に挨拶を回るの?」


 それが本当なら聖女ってだいぶキチガイなんじゃないかな。


「いえ、魔王様はというかこの街、ライブラリがかなり異端ですので」

「異端?」


 本の街ライブラリが異端?

 どういうこと?



「魔王が街を統治している、且つ恐怖政治でもなく民に受け入れられている。これは教会の歴史の中でも異常なんですよ」


 後ろに控えるアトラを見ると微かに頷いてた。


「確かに歴史上ではご主人以外にはやっていません。魔王とは刹那的な快楽に身を委ねた者達の呼び名ですからね」

「そうなの?」

「現在現界している魔王は貴女を除けば三名のみ、そのだれもが好き勝手に動いているのが現状です」


 わたしも結構好き勝手にやってる気がするんだけどね。それよりもひどいとなるとかなりのワガママなんだろうな。


「それでそんな事をいいにワザワザ来たわけでもないでしょ?」

「いいえ、ボクの本題はここからですよ」


 ため息をつき疲れたような表情を浮かべるスペランツァ。なにか辛いことでもあったんだろうか。


「……今から約三ヶ月ほど前、女神ポンパドゥールの加護を受けた勇者が堕ちました。なにか心当たりはありませんか」


 三ヶ月前、女神ポンパドゥール、勇者、堕ちた。

 女神の名前はしらないけど他の三つはすごく心当たりがあるね。


「偶然ですね。ファンガルム皇国を半壊さした時ではありませんか。魔王様」


 ニッコリと笑いながらレキが教えてくれた。いや、知ってたけど思い出したくなかったよ。というかこのタイミングで笑顔で言うとかレキ、君は天然なのか黒いのかわからないよ。


「やはり魔王様のせいでしたか」


 頭が痛いのか抑えてるね。


治癒魔法ヒールかけようか?」

「いえ、結構です」


 これって勇者ぶっ飛ばしたことはしってるみたいだけど身代金とったことは知らないみたいだから黙っておこう。

 身代金としてもらった金貨もうないしね。


「今回ボクがライブラリに来たのは女神ポンパドゥールの神託を受けたためです」

「神託?」

「はい」


 へー女神様は女神らしいことをしてるんだね。こちらは魔王らしいことを一切していないというのに。


「女神ポンパドゥールの神託によればここライブラリに新たな勇者がいるとのことです」

「え、勇者がいるの⁉︎」


 まさか自分の作った街で勇者がスクスクと育っているなんて……サインもらいに行かないと! いや、まだ勇者じゃないのか

 そうなると誰か勇者育成日記と銘打って本を出してくれないかな。是非読みたいし。帯に「勇者は私が育てた!」みたいなの書いてたら確実に買うね!


「……怖くないんですか?」

「なにが?」


 なにか怖がる要素があったかな?

 それに一回勇者アリオンがボコボコにされてるところを見てるしあんまり勇者に強いイメージがないのも大きいのか。


「ご主人、勇者や聖女というのは世間一般で見れば魔王の天敵ですよ」


 呆れるようなため息を付きながらいわないでくれるかなアトラくん。それは一般常識に疎いわたしでも知ってるさ。


「知ってるよ。でもねアトラ、この世の中天敵とまでいかなくても敵ってのはそこいら中にいるものだよ?」


 魔法学園という小さな社会でさえ明確な敵というのは存在するんだしね。派閥だったりテストだったり順位だったりと敵を作る要素は事欠かないんだし。知らないうちに敵を作ってることがある。

 今更、勇者が天敵ですよ! と言われたところでどうしようもないというものだ。むしろ教えてくれてありがとうという感じだね。


「……変わった魔王様ですね」

「そう?」


 わたしとしては普通なんだけどね。


「それでどうするのかな?」

「と言いますと?」

「魔王の天敵である聖女様がいらっしゃるんだから魔王たるわたしに闘いを挑むのかな?」


 そうなったらなったで楽しいんだけどね。

 レキ、腰の剣に手をかけるのをやめなさい。


「いえ、貴女は言い方は妙ですが『良い魔王』のようですので保留とさしてもらいます」

「ふーん、じゃどうするの?」

「女神ポンパドゥールの神託でこの街に勇者がいることは確実ですのでこの街に滞在する許可を頂きたいです」


 別に許可なんていらないんだけどね。

 そこまで細かく干渉する気はないし。


「好きにしたらいいよ」

「あともう一つ」


 まだあるのか。


「魔王様をしばらく観察さしていただきます」

「え」


 ニッコリと笑顔で面倒なことを言われたよ。

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