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司書を探しました②

 

 司書の募集を始めて一週間。

 本を読んでいる私のところにレキとベアトリスがやって来た。


「失礼します。以前話していました司書候補のファイルをお持ちしました」

「ありがとう。でもそんなに候補いないんじゃないの?」


 本から視線を上げずにわたしは返事をする。

 図書館の司書なんてだれもやりたがらないだろうしどうせ二、三人くらいでしょ。そう思い顔を上げると、


「え、なにこれ?」


 レキが持ってきたのは厚さ五十センチほではあるファイルだ。それをこちらに渡してきたので恐る恐る受け取る。


「重⁉︎ これなに! 重すぎなんだけど⁉︎」


 あまりの重さに片手で、いや両手ですら持つことができなかったため手を離す。落としたファイルはズゥゥンという重そうな(実際重かった)音を立て床に落ちた。


「いえ、これが司書希望者のリストですが……」

「え⁉︎ これ全部⁉︎」

「はい」


 落としたファイルを持つのは物理的に無理な重さだったのでとりあえず近づきページを捲る。

 名前、顔写真、経歴、家系となかなかに細かく書き込まれているみたいだ。


「これ何人くらい募集きたの?」

「ざっと八百といったところでしょうか」


 八百人。この前攻めてきちファンガルムより少しだけ少ないくらいか。いや、それにしても


「司書ってそんなに人気のある職業だっけ?」


 なんかファンガルムにいた頃の司書をしていた人たちは出会いがないとか愚痴を言ってた気がするから人気がないのかと思ってたよ。


「司書というよりこの浮遊図書館に興味がある方が多そうですが」

「そうなの?」

「はい、魔法使いから見ればこの図書館は宝の山でしょうし」


 ああ、確かに。

 浮遊魔法を解析するだけでかなり儲かりそうだしね。あと魔導書の類も大量にあるし。

 魔法使いなら確かに宝の山だ。


「あとは貴族制度がないことも関係しとるじゃろな」

「どういうこと」

「お主が面倒くさがってこちらに内政を丸投げしたのでな。ユーリ様と話し合ってこの国では貴族制度を廃止しておるのじゃ」


 カハネルは反対しておったがな、とベアトリスは紅茶を飲みながら零す。

 しかし、貴族制度がないことが何故司書の仕事に募集が殺到する羽目に?


「貴族制度がないといっても魔王様が唯一の貴族、というか絶対王政みたいなもんじゃからの。近づいと甘い汁を吸いたい輩はいくらでもおるじゃろ」

「そんなものなの?」

「そんなものじゃよ。半壊したファンガルム皇国、つまりは沈む船にいつまでも乗ってるようなことはせんじゃろ?」


 なるほど。つまりは《ライブラリ》は新しい船として見られているってことか。


「じゃあ、選ぶのは大変なんじゃ……」

「そこはベアトリス様にも手伝っていただきますが五人ほどまでに削ろうかと思っています」


 八百人を五人まで削るのか。ベアトリスも大変だね。


「有能そうなら内政にも組み込みたいのじゃ、流石にそろそろユーリ様と二人で回していくのは辛いというのを話しておったところじゃしのぅ」


 ベアトリスをよく見ると目の下に化粧で隠してあるが濃いクマが見える。ちゃんと寝ないとだめだよ?


「五人まで削ったら最終的にはお主にも面談に参加してもらって決めるからな?」

「えー、そっちで勝手に決めちゃってよ。面倒だし」


 楽をする。そのためにファンガルム皇国を半壊さしたんだよ? わたしが働いたら本末転倒じゃない。


「別に構わんが筋肉の塊みたいなのを入れても文句を言うんじゃないぞ?」

「五人はかわいい子を所望します! そしたらやる気をだします!」


 だめだ、ベアトリスに任せたら筋肉がわたしの図書館にやって来そうだ。

 わたしの図書館に筋肉質はいらない!


「うむ、快諾してくれてわしらも助かる。では候補を絞ったらまた来るぞ」


 ベアトリスが出口に向かいフラフラと歩きだし、レキがあり得ない重さをしたファイルを片手で軽々と持ち上げた後に一礼し続く。

 わたしとしては筋肉が来ないことを祈るしかなかった。


感想などあればおねがいします

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