第五十八話 建国しました
さてさてユールは宣言通りこの二人を使い倒した。それはもうボロ雑巾のごとく。
具体的に言うと、
ベアトリスの商才、人脈、情報を駆使し土地の開拓、商人の呼び込みを行う。
それはもう昼夜を問わずに。
カハネルは主に人脈、騎士団、貴族、冒険者達を《ライブラリ》に呼び込んだ。
やはり昼夜を問わずに。
一週間不眠不休とかはさすがにわたしが止めた。
さすがに死にそうな顔をしてお風呂に入ってる時に死体のように浮いていた時は怖かったしね。
ユールの言葉では「この二人の人脈をうまく使い倒せば小国くらいすぐに作れる」らしい。
「いや、さすがに死ぬわ! わし一応貴族じゃぞ⁉︎」
「うう、私の魔法騎士になる夢が……エリートから完全に外れましたわ」
絶叫やら、泣き言を漏らすベアトリスやカハネルの姿が度々見られたがユールはそれを笑顔で無視。見ているこちらがえげつないと感じるほどの勢いで使い倒していた。
カハネルに至っては初めの強気な態度はどうしたのかというくらい内向的になってたしね。
「街は王都と同じ物が使われているのですからこれを利用しましょう」
ユールの発案でファンガルム皇国よりも安い税で仕事ができるようにし、ギルド、騎士団の給与をファンガルムより上げたりなど行い。それをファンガルム皇国王都に堂々とチラシにばら撒いたのだ。
「広告はどを配布することは条件に入れておきましたから文句を言われる筋合いはありません」
にっこりと笑いながら告げるユールを見てなんてなくしようとしていることを理解した。
この子はファンガルムの必要な人材を丸々引き抜こうとしてる!
そりゃ、同じ仕事でもお金が多くもらえるほうがうれしいもんね。
結果としてわずか三ヶ月ほどで《ライブラリ》は首都一つしかないにもかかわらず小国と読んでも差し支えないくらいの規模になっていたのだ。
街には人々が溢れ、冒険者、商人、神官など様々な職種の人たちが住み活気付いていた。
そしてなによりこの国で目立つのは本屋だ。本屋だよ!(大事だから二回いった)
ユールの定めた制度は作家に特に優しく作られておりいろいろな街の作家がこぞって《ライブラリ》に集まってきたのだ。
これにより《ライブラリ》は本の街としてちょっと有名である。
ただ、ベアトリスとカハネルはこの三ヶ月で凄まじいダイエットに成功したように痩せこけていたのは余談だ。
終いには役職決めたとマーテが嬉々として持ってきた紙に書いてあったのは、
魔王 レクレ・フィンブルノ
宰相 ユニエール・ラ・ファンガルム
世界征服大臣 レキ
魔法騎士大臣 カハネル・リミテス
料理大臣 マーテ
戦争大臣アルシェット
暗躍大臣 ビリアラ
外交大臣 ベアトリス・ラ・フュール
執事 アトラ
味見大臣 ファス
なんて無茶苦茶な役職まで決めてるし。戦争大臣とか世界征服大臣とかなにする気なんだよ。あとビリアラ! なにを暗躍する気だ!
先生まで味見大臣とか人をバカにしてるとしか思えないからな!
しかしマーテが瞳を輝かして持ってきたからノーとは言えず仮採用。
かわいいものに罪はないし。
一応カハネルが魔法騎士大臣なのはユール辺りの善意だと感じたい。
こうして本の国 《ライブラリ》は建国したのであった。




