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浮遊図書館の魔王様  作者: るーるー
国獲り編
37/135

第三十七話 開戦しました

 ファンガルム側は冒険者を主体にした軍を編成した。

 それはいくつものパーティから構成された指揮官がいない軍だ。

 騎士団はあくまで防衛目的の力であり、ダンジョンの攻略には向いていないということを理解した上での判断だ。

 集合地点に集まった冒険者の顔は明るい。手に入れた賞金でどうするかという話をしているパーティが多いからだ。

 中には手にしている武器や防具を確認している奴らもいるが少ない。

 彼らは敗北した時のことなど全く考えずただ戦闘開始の合図を待った。




 第一階層


 マーテは自分の任された階層で黙々と準備を勧める。

 戦ったりするのはいやだがレクレに褒められるのは嬉しい。レクレはよく頭を撫でてくれる。今までマーテに接して来た人達で優しく接してくれたのは姉妹以外にはレクレが初めてだ。


「レクレさまのために頑張らなきゃ!」


 目が見えなくなっていたマーテの眼を見えるように癒してくれたのはレクレだ。だからマーテにとってレクレは主であり、魔王であり、神だ。

 その神様からがんばってと言われたマーテはかつてないほどのやる気を満ち溢れさはさていた。


「レクレさま、がんばるよ」


 そう、神に祈りを捧げるとマーテは再び作業に戻った。



 第二階層


 アルが任されたフロアはいいまや大量の鎧が設置されており見るものをちょっとした恐怖状態にしてもおかしくないフロアだ。

 アルは自分で飾った鎧を満足げに見ていた。


「マーテが突破されて逃げて来ても私がたすけてやる」


 マーテはなによりアルより弱い。

 なにより妹だ。妹は守るものだし。

 そんなに戦えるとは思ってないからアルとしては怪我だけがないようにしてほしい。

 アルはレキほどではないが戦うのが好きだ。だからといって弱いものいじめをしたいわけじゃない。対等なやつと戦うのが好きなのだ。

 そういう意味ではアルはレクレを尊敬している。魔法だけで自分に勝ったのだから。


「たのしみだなぁ」

 自分がつよいのか弱いのかを試す。それを考えると心が踊るのだ。

 唇をペロっと舐めアルは楽しそうに笑う。




 第三階層


 広いフロアの真ん中でビリアラは座りお菓子をバリバリと食べていた。全てマーテのお手製である。

 ビリアラは食べている時が一番幸せだ。最近はマーテがいろいろと作ってくれるからなおのこと幸せだ。


「おわったらマーテにお貸し作ってもらおう」


 自分で作るという発想は全くなくビリアラは想像する。

 フロアにはただ、咀嚼する音だけが響き続いた。



 第四階層


 レキは静かに目を閉じたまま座った。

 剣は腰から外し目の前に置いてある。

 集中しただただ時を待つ。

 レクレの信頼を裏切らないよう、自身の力を示すために。


「私はいい主に出会いました」


 静かに眼を開け一人口を開く。

 普通なら自分のような戦いが好きで好きでたまらないというような性格のメイドを雇わない(レキなら雇わない)

 だが、レクレは呆れたような顔はするがけして「出ていけ」とは言わなかった。それが嬉しかった。

 しかも今回は期待までされた。ならばレキの取る行動は一つである。


「魔王様に勝利を」


 ただそれだけのこと。

 そう考えると再び、瞳を閉じ集中する。



 謁見の間


「そろそろですよ。ご主人」

「あ、もうそんな時間?」


 アトラに言われわたしは本から視線を外し、時計を見た。

 ついつい本を読むのに集中しちゃった。


「魔王様は本当に本が好きですね」


 ニコニコと笑いながユールが話しかけてくる。


「まあね。わたしは本があれば大概の事は我慢できるよ。映すマジックミラー


 苦笑を浮かべながらも映すマジックミラーを起動さす。

 ちょっと前までは人と関わるのが面倒で仕方なかったのにこれは自分でも驚きの変化だ。


「ご主人、時間です」

「わかった」


 返事を返すと同時に城が揺れる。浮遊図書館が少しずつ高度を下げ始めたのだ。

 さすがに浮かんでるところに攻めてこいというのはフェアじゃないしね。

 鈍く低い音と振動が城全体に響き渡り、止まる。


「開門」


 唱えると浮遊図書館の城門が開く。


「じゃ、怪我がないようにだけして頑張ろうか」


 城門に向かい雄叫びを上げながら走って来ている軍勢を見ながらわたしはケラケラと笑いながらそう告げた。


 ファンガルム皇国、浮遊図書館の戦争が開戦した。

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