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浮遊図書館の魔王様  作者: るーるー
魔王なります 編
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第二十七話 手紙もらいました

 浮遊図書館、第一の間。

 今日は本の納品の日である。

 ワクワクしながら待っているとマーテがベアトリスが来たという知らせを聞き、王座を飛び出した。

 急ぎ走り、第一の間に着くと、


「これが魔王様の所望の今月発売の本じゃ」

「おおお!」


 ベアトリスが持ってきた本の山を見て、わたしは感嘆の声をだした。


「同じ本はいれとらんがそれでも千冊以上じゃ。なかなかに集めるのに苦労をしたんじゃぞ?」

「うん、それには感謝してるよ」


 恨みがましい視線を感じたからとりあえず感謝の意を表しとこうかな。

 それと四姉妹に本を運ぶように指示を出さなきゃな。


「あと、魔王って呼ぶのやめてくれない」


 一応、レクレという名前があるんだから。いつの間にか魔王が定着されても困るし。


「一人で国を滅ぼせるほどの力を持っておるんじゃからの。まぁ、有名税と思えばよかろう。後、噂にもなってきとるからのぅ」


 そう言いながらベアトリスはカラカラと笑う。

 噂ってどんな噂か気になるところだ。今度調べよう。


「で、本渡すだけなら君が来なくてもよかったんじゃないの?」

「まぁ、そうなんじゃが、まず悪事の書物を返してくれる約束じゃろ?」


 そういえばそんな約束してたな。

 マーテに持って来させよう。


「マーテ、王座の横に置いてある封筒もってきて。あとここの本を姉妹で本棚に収めて行って」


 はぁ〜いと声が聞こえマーテが小走りに走り去って行く。

 尻尾がかわゆいのう。


「あとは経過報告じゃな。お主から渡された不要な本、レシピやら帳簿は持ち主を特定し返却しといたぞ」


 おお、なかなかに優秀。もっと時間がかかるかとおもってたよ。


「あと、最後の図書館への干渉がないようにじゃが、これがなかなかに難しい」

「なんで?」

「浮遊図書館が危険と訴える貴族がおるからのぅ」


 ベアトリスの話曰く、牢屋送りにされてない貴族(悪事を働いてなかった貴族)達で戦闘に参加した者のなかには浮遊図書館、というかわたしを危険視する人もいるということらしい。

 いつ攻撃されるかわからない恐怖というやつなんだろね。


「あと、こんな物も預かっておる」


 懐から三通の封筒を取り出しわたしに渡してくる。

 三通ともなかなかに高そうな紙だね。本をよく読んでるわたしにはわかるよ。


「これは?」

「貴族連盟からの手紙、国王からの手紙、そして殿下からの手紙じゃ。本の移送はわっちが担当になっとるから押し付けられたんじゃ。めんどすぎる」


 本音が漏れてるね。

 とりあえず封をあけてみるかな。


「なになに『国土侵略をしている貴国には武装解除後、城を明け渡し投稿せよ』だって」

「大方、金に物を言わして釈放してきたバァースの阿呆あたりじゃろ。気にしなくてもよいじゃろ」


 ベアトリスはバァースのことが嫌いみたいだね。


「でも仮にわたしが今から戦争ふっかけて皇国は何人立ち向かって来るんだろうね」

「……痛いところつくのぅ。おそらく大した数にはならんじゃろうが」


 わたしは軽くため息をつく。

 そんな現状でよくこんな手紙だせたな。


「ま、間違っても戦争を仕掛けないようにな? 今我が国は国力ガタガタじゃからな?」

「向こうがなにもして来なかったらね」


 こちらも別に戦争がしたいわけじゃないしね。レキなら喜んでやりそうだけど。わたしは平和主義者だし。

 ベアトリスが小声で『早急に何人か始末せねば』と言ったような気がしたけど気がしただけだと思いたい。


「それで国王はと。これは一週間後のパーティに参加して欲しいみたいな感じだね」

「ああ、月に一度、王族主催のパーティが開かれるからそれの招待状じゃな」


 ふむふむ、貴族にはならなかったけど国王としては繋がり《パイプ》が欲しいということか。


「これ、同伴者は何人までなの?」

「特に何人までと決まりはないが多くても四、五人といったとこかのう。なんじゃ、参加するのか?」


 意外そうにわたしを見てきますね。

 わたしだって多少考えているんだけど。


「マーテ達の社会科見学に使おうかと」

「……社交界デビューに使われる場を社会科見学に使うお主の感性はおかしいと思うぞ?」


 そうかな? 別におかしいとは思わないけど。

 どうせ税金で開いてるやつなんだからそれで勉強しても文句は言わないでしょ。


「それで最後は殿下とやらだけど、パーティの日に話がしたいってさ」

「殿下は変わり者じゃからのぅ」


 珍しくベアトリスが歯切れの悪い返事を返してきた。


「殿下は本当になにを考えてるかわからんからのう。敵にまわしたくない」

「そうなの?」

「そうなんじゃ、お主も目をつけられた以上ロクなことにならんぞ。覚悟しとくんじゃな」


 なぜかどんよりとした感じになったベアトリスを見た後わたしは再び手紙に目を落とす。

 手紙には丁寧な文字が並べられておりその文字を見ると非常にぞわぞわとするのだ。

 手紙の右下に書いてある名前。


「ユニエール・ラ・ファンガルム」


 まだ見たことのな人の名をわたしはマーテが持ってきた書類をばらまくの微笑みながら自然に口ずさんだのであった。

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