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浮遊図書館の魔王様  作者: るーるー
魔王なります 編
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第十六話 落ちました

「まさかこんなことが起きるとはね」


 五日ぶりに浮いてない普通の大地に寝転びながらわたし呟いた。

 右の方に視線を向けると浮遊図書館の姿が見える。

 現在、浮遊図書館はフィンガルドからかなり離れたところに不時着しているのだ。


「まさか、原因が魔力切れとはね」


 苦笑しながら考える。

 どうやら三日前に行った魔法、本収集ブックメディリィが原因らしい。

 あの魔法、発動する時はわたしの魔力を使っていたらしいのだが、本を集めている間は浮遊図書館の魔力を食い潰していたらしいとレキは言っていた。

 思ってた以上に燃費の悪い魔法のようだ。

 この浮遊図書館が再び空を舞うには一週間ほど魔力を溜め込まなければいけないらしいのでこうしてフィンガルドから離れたところに(レキはフィンガルドに浮遊図書館を降ろそうとしたのを無理矢理やめさした)降ろしたのだ。


「まぁ、たまには明るいとこで読書もいいしね」


 そういうとわたしは手に入れた戦利品の本を開き、甘美なる読書の世界に没頭しようと心に決める。

 本の整理は姉妹に任せとけばいいし楽だね。

 鳥の囀りやちょうどいい感じに木陰もあるからある意味、最高の環境だし。


「これから先はどうするつもりですか?ご主人」


 本にヌッと大きな影が差し込む。わたしは顔をしかめながら影を落とした者のほうに視線を向ける。

 視線を向けた先には整った美貌を持った金髪の青年が立っていた。


「アトラか、どう?生身の体は?」


 わたしは体を起こし、金髪の青年は困ったような表情を浮かべ、


「そうですね。初めての実体、というか人の形をとってみましたがなかなかに新鮮です。やはり、知識だけではなく実際に体験しなければ分らないという昔の偉人の言葉がよく理解できます」


 そんなものなのかな。わたしは初めから肉体があるからね。不便と思ったことはあるけど新鮮と感じたことはないからさ。


「でも、うまくいくもんだね。魔法で肉体を作るなんて」

「うまくいったからよかったものの、失敗したら大惨事でしたよ。ご主人」


 ケラケラ笑いながら言うわたしをアトラが睨む。

 本収集ブックメディリィは予想外の本を集めてきた。

 まぁ、エロ本も十分予想外で衝撃を受けたんだけど。

 集まった本の中には魔法書、魔導書の類も幾つか紛れ込んでいたからね。その内の一冊を使い、本であったアトラに肉体を与えたんだけど


「まさか、魔力配分を間違えると悪魔がでてくるとは」


 魔力配分がわからないから魔力で力ずくでやろうとしたら悪魔が召喚されかけたから慌てて押し戻したけど。


「あれ一体で首都は壊滅でしょうね」

「確かに、あれだけでやれそうだし」


 悪魔は魔界と呼ばれるとこからくるらしいんだけど全く研究がすすんでないんだよね。


「まあ、受肉できてよかったじゃない」

「そこには感謝してます。ご主人」


 軽く礼をするのも美男子がすると様になるね。


「それにしてもこの国、裏側は真っ黒だったね」


 本収集ブックメディリィで集まった本はなにも本だけではなく、俗に言う裏帳簿と呼ばれるものまで集まって来た。

 我が国もまぁ、真っ白ではないと思ってたけど知りたくもない悪事の数々で読んでいて若干げんなりしたのも事実だ。


「清すぎる水には魚は住まず、とは東の国の言葉ですが言い得て妙だと思いますよ」

「いや、あそこまでいくと清いとかじゃなくて濁ってるよ。確実に」


 アトラも従容と頷く。


「まぁ、僕の見解を言わしてもらいますと国とは繁栄と腐敗の積み重ねですよ」

「さすがに見てきた人の言葉は重いね」


 アトラが吐き捨てるように言った言葉にわたしは笑う。

 魔導書として生きてきた彼にはそう見えたんだろうし。


「それでご主人、先ほどの質問に戻りますが、これから先はどうする予定ですか?」

「どうすると言ってもね。とりあえず図書館が飛べるようになるまではダラダラする予定だよ?」


 なによりなにもできないしね。ここ数日は常識じゃ考えられないことばかりが起こってるしさ。


「まぁ、それはそれで構いませんが、僕の言ってるのは真っ黒帳簿の事ですよ」

「それこそ、取りに来たら返して上げるよ。あんなものいらないし。あれで国を強請って国政に関わりたいとも思わないから」


 だってめんどそうだしね。そうは口には出さずに心の中で思うにとどめる。でも、誰かに統治してもらうなら楽かも。


「ご主人はそうでもレキさんのほうはそうでもなさそいですがね」


 そうなんですよ。ウチのレキさんは脅して戦争やる気満々なんですよ。たまにその日を想像してるのかゾッとする笑顔してるんだよね。


「まぁ、なるようになるよ」


 わたしは再び横に転がるとアトラの非難がましい視線わ無視しつつ読書を再開した。

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