第十四話 ひろいました
「おおお!」
わたしは目の前の光景に感動の声を漏らした。
見渡す限り、本! 本! 本!
ここはパラダイスなの⁉︎ 楽園なの⁉︎
「いえ、魔王城です」
振り返るとレキが幾つもの本を抱え立っていた。
心読まれた気がする。
いや、だって、本好きにはたまらない環境ですよ?
しかも、自分の作ったオリジナル魔法の結果なんですからテンション上がりまくりますよ。
開けっ放しになった扉から次々と本が飛んでくる。その飛んできた本を拾いレキ、アル、ビリアラ、マーテがセッセと空の本棚に並べていく。
「範囲は副都だけに設定したのにこんなに本が集まるんだね」
「ええ、私も驚いてます」
魔法を発動さして30分。今や床が見えない位に本が集まっていた。わたしの部屋より広い分、見た目のインパクトが半端ない。
「まぁ、同じ本もきてるみたいですからね」
アトラの言うとおり同じタイトルの本もちらほら見えた。ここは次使う時の改良点だね。
「レクレ様〜」
マーテが何冊かの本を持ってこちらに小走りにやって来た。
「どうしたの?」
「なんかへんな本があったの」
「変な本?」
サッと頭に浮かんだのは魔導書。
魔導書ならば資格者以外には変な本にしか見えないだろうし。
「なんかね、」
マーテが差し出して来た本のページを捲ると
「はだかのおんなのひとのえがかいてあるの」
男と女がうっふん、あっはんする本でした。
「ぎやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
わたしは悲鳴を上げると慌ててページを閉め、床に叩きつけた。
十八禁! 十八禁だからこれ!
「ど、どうしました! レクレ様」
わたしがゼイゼイと肩で息をしていると恐る恐るといった様子でレキが後ろから声をかけてきた。
「いや、ちょっとね」
わたしはがくりと膝をついた。
一瞬でキャパシティを超える衝撃映像だったよ。まさか、マーテがあんな本を持って来るなんて。
いや。マーテが悪いわけではなく、そう、冷静に考えれば本収集という魔法を使えばこういう本も集まるということも考慮すべきだったのか。
だっていかがわしくても本なんだから
「れ、レクレ様大丈夫?」
なにか大変なことをしてしまったのかと思っているのかオドオドとした様子でマーテが話しかけてくる。
「大丈夫、マーテは悪くないよ」
マーテの頭を撫でながらなんとか精神の均衡を保つ。
「マーテ、こういう感じの本はあっちの端の方の視界に入りにくい本棚に並べてね」
「わかった」
こくりと頷くとマーテは落ちてた本を拾い端の本棚に向かい小走りで向かっていく。
「純粋な子ですねー」
アトラ、なんかジジくさいよ。
まぁ、わからなくもないけど。このままあんな穢れた本を読まずにすくすくと愛らしく育って欲しいものだねぇ。
あれ、これって親の思考じゃ。
「レクレ様〜」
今度はアルが幾つもの本を抱えてやって来た。
また、イカガワシイ本だったらやだな。
「どうしたのアル?」
「この本、変なの」
「……変ってどう変なの?」
嫌な予感がするけど仕方ない。
しかし、わたしはアルが持っているものを見て首を傾げる。アルが持ってるのは本というか、
「書類?」
「タイトルも書いてなくてどこに持って行けばいいかわからないの」
受け取ったのは普通の紙ではなくなかなかに高そうな羊皮紙を綴った物だ。なかなかの厚みがあるな。
中をパラパラとめくると暦が書かれてたり、数字がいくつも並んだりとしていた。
「これ、なにかの帳簿かな」
さすがにこれはないと困るんじゃないかな。
商人とかなら死活問題だし。
「少し見せてもらってもいいですか?」
お、レキが興味持つなんて珍しいね。
持っていた書類をレキに渡すとパラパラと身始め、次第に笑みを浮かべ始めた。
なんか、悪いこと考えてる顔だな〜
最後のページまで見終わると、
「さすがは魔王様、この書類を奪うためにあのような魔法を使うとはレキは感服いたしました」
そういい、胸に手を当て静かに頭を下げた。
え、どういうこと?
「ご主人、僕にも見せて」
アトラがそう言ったのでわたしはアトラの上に書類を乗せる。(アトラ曰く乗せると内容がわかるらしい)
「ご主人、これ、横領とか汚職の事が書かれた書類だよ。しかも国家レベルの」
「え⁉︎」
飛んできた本は国家レベルの火種でした。