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浮遊図書館の魔王様  作者: るーるー
切り裂き魔編
102/135

第93話 街で噂の犯人を探しに行きました

「というわけで街にやってきました」


 ライブラリの街にやってきたのは噂の切り裂き魔を見たいからなんだけどね。


「レクレ様、なんでいつもと服が違うの?」


 そう尋ねてきたマーテはいつも通りのメイド服だ。

 いつも通り可愛いね。他のみんなも誘ったけど興味がわかないらしいから来なかったんだよ。着いてきたのはマーテだけだったし。


「ユールの趣味だよ」


 ゲンナリしながらわたしは答えた。

 わたしはというとユールの趣味でやたらヒラヒラとした飾りが付いた服を着せられている。ヒラヒラして動きにくいしちょっと動くだけで下着とか見えそうで怖い。


「さて、例の切り裂き魔さんはどこかなー」

「そんなにあっさりと見つかるの?」


 まぁ、そんなにあっさりと見つかるとは思ってはないけどね。とりあえず来てみただけだし。というか興味はあるけどそんな変態に遭遇したいとは思わないのが本当のところだ。個人的には誰かが襲われてるのを見るだけでもOKだし。


「しかし、こりゃ確かに奇抜だね」


 わたしとマーテの目の前にはサーニャが言っていたように奇抜な髪型をした人々が大勢いた。

 やたらと髪を捻じり掘削きのような男の髪型や無駄にロールした髪を横にぶら下げた女性の姿も確認できた。

 更には服装は裸に近いような格好をしている男女、おそらく東の文字で書かれたであろう服を着た人々が溢れかえっていた。奇抜な服装もはやってるのか。


「これは、町の外観と全くと言っていいほど会わない服装だ」

「うぃ、変なのが多い」

「大きな声で言っちゃダメだよ」


 なんかガラが悪そうな人が多いしね。

 別に服装なんてなんでも良いんだけどね。


「ならレクレ様もユールの着せ替え人形にされちゃうね」


 ……その可能性は否定できない。彼女は人を着せ替え人形にして遊ぶ癖があるからね。この前もレキがヒラヒラの服を着せさせられて凄く屈辱的な表情を浮かべてたし。

 次は是非マーテやビリアラを着飾って欲しいね。

 しかし、先程からこの通りで香る匂いはなんだろう? 凄く食欲を誘う香りだ。


「というわけでマーテ。あの店に入ろう! 怪しい気配がプンプンする!」


 先程から香る匂いの発生源であるお店を指差した。


「さすがです! レクレさま! もう変質者の居場所を突き止めるなんて!」


 キラキラした瞳、若干尊敬みたいな色が混ざってる気がする目でわたしを見上げてくるマーテ。


「……変質者がいるかもしれないから調査だよ」


 咄嗟に嘘をついた。

 ……心が痛い。

 純粋な子を騙すのはこんなにも心が痛む物なのか。これからは子供には嘘をつくまい。これからは……今日はいいよね?


 罪悪感から逃げるべく早歩きでお店に入る。


「変質者はどこ!」

「へ、変質者ですか⁉︎」


 マーテが店に入るなり大声で叫んだ。

 お店で準備していた店員さんはかなり慌てた様子で振り返った。その勢いでトレイに乗っていた物が床に放り出された。

 床に落ちた物がわたしの足元に一つ転がってきたので拾い上げる。

 これが匂いの元だったのか。

 店の中を改めて見回すと幾つもの変わった形をしたパンが置かれているようだし、ここはパン屋だったみたいだ。


「変質者はどこだー」


 マーテがバタバタと暴れ始めたので首元をつかんで持ち上げる。魔力切れだった時に切っていた補助強化魔法を再びかけたためこれ位楽勝だ。


「マーテ、店で暴れないの」

「でもレクレさま! 変質者は?」


 マーテの言葉を無視しわたしはパンを落としたおじさんに詰め寄る。


「おじさん、このパンは?」

「あ、ああ、うちの新作のサンライズってパンだよ」

「サンライズ!」


 確か古の言葉で太陽を表していたはず! この編み目模様も確かに太陽に見えなくもない!


「このパンは二種類の生地を使ってて普通のパンとカリカリ部分はビスケット生地というのを使ってるんだ。っておい! 落ちたのを食うんじゃない!」


 ほうほう、だからこんなサクサクしてるのか。

 サクサクしたこの食感はたまらない。


「レクレさま! 落ちたやつ食べたらめっ!」


 わたしの手からサンライズを奪い取るとクンクンと匂いを嗅ぎ


「はむ!」

「あぁぁぁぁ⁉︎」


 食べた! わたしから取ったサンライズ食べた!


「うまぁ〜」


 食べて幸せそうに頬張るマーテ。

 その幸せはわたしから奪い取ったんだよ?


「いやいや! 嬢ちゃんも落ちたやつを食べるんじゃない」


 おじさんが幸せそうにしていたマーテから食べかけのサンライズを取り上げる。

 途端、幸せな表情に陰がさす。耳と尻尾がふにゃっと力が抜けたようになりしょんぼりと項垂れた。


「おじさん、サンライズ二つ頂戴」


 流石にかわいそうになって購入する。

 その言葉を聞いた瞬間項垂れていた耳がピン! と立ち、尻尾を千切れんばかりにブンブンと振っていた。

 現金だなぁ。

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