1頁目
1
天使が 俺に ささやいた
さあ 楽になれ
飛び込むなら いまだ
2
道徳説いた 先生が
ある朝 突然いなくなる
電車の中で 盗撮したらしい
3
今日はとっても 良い天気
いつか堕ろした 水子の墓に
野良猫が 小便する
4
金もなく 女もなく
缶詰を 食うばかり
カミソリめいた 切り口を ツ ツ
5
車に轢かれた 猫の死体
亡き母 お手製の
クッキーを 思い出す
6
毎朝バスで 盗撮したら
その児の親に
刺し殺された
7
人を見たら泥棒と思え
恨みの遺書を 俺に残した
祖母の名言
便所に捨てる
8
働き者で 優しくて
真面目な母が 壊れてしまった
たった一度の 不倫が原因で
9
昔の女が 子供を生んだ
出産祝いに かこつけて
偽札を 送りつけた
そんな夢
10
スリルのために 万引きをした
優しい母が 迎えに来て
その晩 自宅に 火をつけた
11
夢の終わりは 目の前にある
介護病棟で
寝たきりの母
12
ジキルとハイドを しっている
俺は そいつに 会ったんだ
風呂なしアパートの 隣室にて
13
不明女児を 捜索する
汗水垂らした 警察官を
ヨユウで眺める 人さらいの俺
14
太宰かぶれの 友人が
あんまり うるさいので
川に 突き落として やった
15
海図が嘘だと 気がついた
どうりで 紙魚が ないわけだ
火ダルマになった 妹を 眺めつつ
16
深夜の 書店の レジ打ち係
リストカットの ケロイドを
常に見せつつ 俺は
ナニモ オモワナイ
17
死んでやらあと 息巻いて
自殺写真を 見てみたが
カップラーメンを すする 俺
18
カタブツな 父が悪いと 思っていた けれど
母が 浮気をしていたのじゃないか
高校の授業にて ふと
19
兄弟三人 並べられて
父 母 選べ と
家族 最後の夜
20
親の文字を もらった 名前
離婚 したので
電車に 飛び込む
21
不動産屋の 市議会議員
祖母を 騙して 売買契約
実家を失い 俺は思う
コイツを 必ず 殺してやる
22
いまから 思えば
オカシイ はずだ
廃墟で 待ってる 深夜の
少女
23
夜逃げの 常習 親戚が
我が物顔で 居間にくつろぐ
20年後の 俺の姿
24
倒れた母の 糞尿の
救急車を出した あとで
片付けに ためらう
人間失格の 俺
25
子供と暮らす ささやかな
母の夢を 台無しにしてまで
俺が 引きこもった理由
死にたかった
26
ドッキン ドキドキする
のそり ねずみ人間
あれは一体 何だったんだ
27
信号待ちの ドライバー
血走った目の 隣室の男
アレ アイツ アル中で 体が震えて……
ゾッとする 俺
28
恨みの遺書を 名指しで 俺に
残した 祖母へは 線香をやらぬ
ラハハ あの世で 飢えるが いいさ
29
誰も彼もが 忘れても
バレないように 訪れる
交通事故死の 仲間の墓前
30
巣から落ちた ヒナを捕まえ
お前は できそこないだと
ニヤつく 俺
31
札束を 舌なめずりで 数えてる
祖母の夢を 見た
幸せそうだ
32
横切ったのは 霊柩車
乗っているのが
俺なら 良いのに
33
菓子も 米も 食いたくないから
ブルーハワイで 米を炊く
とても綺麗な 青色1号
34
姉がいる
痴呆の祖母が 打ち明ける
酒乱の 血を引く 男の
娘が
35
子供の 俺に
女を教えた 謎の女
まさか
種違いの 姉だったとは
36
独り身 無能 役立たず
三種の 負債を 携えて
日々 俺に 復讐する
俺
37
俺と 兄貴
母の愛人 見送った
車中
スバル レックス500
38
愛人 見送る
母の 横顔
一条ゆかりの 漫画みたい
39
クリームシチューに ソースをかける
母の前では 控えていたが
父親代わりの 愛人に
教えてもらった うまい食い方
40
実父よりも 優しかった
母の愛人 家事に炊事
別れた時の 寂しい背中を
同年代になって 思い返すこと しきり
41
これの どこが 旨いのか
愛人 吸ってた マイルドセブン
裏の竹林 小学1年
42
祖母を看取った 親戚が
毎朝 俺を 枕元で
見たという
どうやら 俺の 生霊が
祖母を 呪い殺した らしい
43
次に会ったら
優しく してやろう
軽蔑していた 兄貴に
子供が できた